24 / 73
リバース!1
闇闇1
しおりを挟む
目の前で、高らかに――と言うより、狂ったように笑う男に俺は眉を寄せた。
男、と言ったが年は二十歳前後くらいなんで、青年って言う方が正しいだろう。そしてさっきは気づかなかったが、俺はこいつを知っていた。
「宮藤……?」
そう、椿が口にした名前。
二年くらい前、俺達が警察に渡した通り魔だ――チッ、未成年だったから釈放されやがったか。
心の中で舌打ちした俺の前には、宮藤がいる。
黒髪に、黒い服と黒いデニム。白い肌と黒ずくめの中、その額の真紅――炎の文様が、鮮やかに映える。
(焼死体はコイツかよ)
晴香さんの話だと、貰ったカプセルを飲んだら魔法を使えるようになったって聞いた。ったく、どこの馬鹿がこの阿呆に……。
「って、待てコラ!」
内心、ボヤいた俺の前で宮藤が踵を返す。声をかけるが当然、止まる馬鹿はいない。
もっとも、黒城さんから離れてくれたのはこっちにとっても好都合だ。そう思いながら、俺は宮籐の後を追いかけた。
闇に溶けてしまいそうな、宮藤の背中を追いかける。
あいつが逃げ込んだのは、少し走った先にあった廃工場だった。そんな宮藤を捕まえる為に、俺も中へと駆け込んだその時だ。
「捕まえた……炎の牙!」
足を止めて振り向きながら、宮藤が呪文を唱えて拳を振るう。刹那、呪文に応えるように炎が俺へと放たれて――避けた俺の背後、壁へと打ちつけられたそれは、消えずに廃工場を燃やし出した。
「……俺も、焼き殺す気かよ?」
「それもあるけど、こうすればあの坊やが入って来られないだろう?」
宮藤の答えに、今度は俺は隠さずに舌打ちした。
俺や目の前の奴は火の属性があるから、魔法の炎には簡単に焼かれないが――椿は違う。
「だからって、ここまですんなよ……イカレ野郎が」
「相変わらず、口の悪いガキだな」
燃え広がる炎の中、余裕たっぷりの相手に俺は眉をしかめた。
宮藤の態度の理由は、俺の魔法を封じたと思ったからだろう。
悔しいがそれは正しい。風だと逆効果だし、水も広い場所ならともかくこの廃工場じゃ駄目だ。すぐに沸騰し、水蒸気爆発を起こしてしまう。
(闇の渦だと、魔力は吸い取れても火までは難しいし……どうすっかな)
「同じことが出来れば、俺はお前なんかに負けないんだ!」
次の手だてを考えていた俺に、宮藤が高らかに言い放った。
男、と言ったが年は二十歳前後くらいなんで、青年って言う方が正しいだろう。そしてさっきは気づかなかったが、俺はこいつを知っていた。
「宮藤……?」
そう、椿が口にした名前。
二年くらい前、俺達が警察に渡した通り魔だ――チッ、未成年だったから釈放されやがったか。
心の中で舌打ちした俺の前には、宮藤がいる。
黒髪に、黒い服と黒いデニム。白い肌と黒ずくめの中、その額の真紅――炎の文様が、鮮やかに映える。
(焼死体はコイツかよ)
晴香さんの話だと、貰ったカプセルを飲んだら魔法を使えるようになったって聞いた。ったく、どこの馬鹿がこの阿呆に……。
「って、待てコラ!」
内心、ボヤいた俺の前で宮藤が踵を返す。声をかけるが当然、止まる馬鹿はいない。
もっとも、黒城さんから離れてくれたのはこっちにとっても好都合だ。そう思いながら、俺は宮籐の後を追いかけた。
闇に溶けてしまいそうな、宮藤の背中を追いかける。
あいつが逃げ込んだのは、少し走った先にあった廃工場だった。そんな宮藤を捕まえる為に、俺も中へと駆け込んだその時だ。
「捕まえた……炎の牙!」
足を止めて振り向きながら、宮藤が呪文を唱えて拳を振るう。刹那、呪文に応えるように炎が俺へと放たれて――避けた俺の背後、壁へと打ちつけられたそれは、消えずに廃工場を燃やし出した。
「……俺も、焼き殺す気かよ?」
「それもあるけど、こうすればあの坊やが入って来られないだろう?」
宮藤の答えに、今度は俺は隠さずに舌打ちした。
俺や目の前の奴は火の属性があるから、魔法の炎には簡単に焼かれないが――椿は違う。
「だからって、ここまですんなよ……イカレ野郎が」
「相変わらず、口の悪いガキだな」
燃え広がる炎の中、余裕たっぷりの相手に俺は眉をしかめた。
宮藤の態度の理由は、俺の魔法を封じたと思ったからだろう。
悔しいがそれは正しい。風だと逆効果だし、水も広い場所ならともかくこの廃工場じゃ駄目だ。すぐに沸騰し、水蒸気爆発を起こしてしまう。
(闇の渦だと、魔力は吸い取れても火までは難しいし……どうすっかな)
「同じことが出来れば、俺はお前なんかに負けないんだ!」
次の手だてを考えていた俺に、宮藤が高らかに言い放った。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【本編完結】若き公爵の子を授かった夫人は、愛する夫のために逃げ出した。 一方公爵様は、妻死亡説が流れようとも諦めません!
はづも
恋愛
本編完結済み。番外編がたまに投稿されたりされなかったりします。
伯爵家に生まれたカレン・アーネストは、20歳のとき、幼馴染でもある若き公爵、ジョンズワート・デュライトの妻となった。
しかし、ジョンズワートはカレンを愛しているわけではない。
当時12歳だったカレンの額に傷を負わせた彼は、その責任を取るためにカレンと結婚したのである。
……本当に好きな人を、諦めてまで。
幼い頃からずっと好きだった彼のために、早く身を引かなければ。
そう思っていたのに、初夜の一度でカレンは懐妊。
このままでは、ジョンズワートが一生自分に縛られてしまう。
夫を想うが故に、カレンは妊娠したことを隠して姿を消した。
愛する人を縛りたくないヒロインと、死亡説が流れても好きな人を諦めることができないヒーローの、両片想い・幼馴染・すれ違い・ハッピーエンドなお話です。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる