リバース!

渡里あずま

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リバース!3

幕間 ~由香~

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 成績優秀、スポーツ万能。おまけに、容姿端麗。
 そんな設定盛り盛りな同級生が、わたしのクラスには二人もいる。
 漫画のキャラクターみたいだと思うのは、別に自分がオタクだからではないと思う。幼なじみで同じオタクの保(たもつ)も同意見だが、くり返す。オタクじゃなくても、あれだけ出来すぎだと誰だってそう思う。

(まあ、あの二人のおかげで中学の時みたいに、保との仲をあれこれ言われないのはありがたいけど)

 隣同士で、幼稚園から一緒の幼なじみ――でも、わたしと保は男女のせいで幼稚園から中学校まで変に勘ぐられたり、からかわれたりした。
 自分が嫌いならともかく、周りに言われて距離を置くのも馬鹿らしい。だから、二人で地元の公立校ではなく私立校を選んだのだ。

(そしたら、あの二人が幼なじみだったもんだから、注目はすっかりそっちにいって……本当、ありがたいと思ったわ。ええ、すっごい思ったけどね!?)

 そんな訳でとても恩を感じてはいたが、クラスメートとは言え二人とモブなわたし達とは接点がないので、一方的に感謝しているだけだった。
 ……それなのに、である。

「修学旅行は、この二人と同じ班になる」
「「……えっ?」」
「グループは、最低四人から。それなら、俺達とこの二人で四人になるから文句なかろう」

 フィリピンへの修学旅行に向けて、わたし達のクラスではグループ分けが行なわれた。
 行なわれた、のだが――早々に件の一人・宝生椿がわたし達のところにやってきて、他のクラスメートに聞かせるように宣言したのである。
 目つきは悪いが、イケメンなので女性人気は高い。周りの、主に女生徒のどよめきに焦り、かと言って椿の迫力に反論する事も出来ずにいると、

「椿、勝手に決めるなよ……えっと、何かゴメンな? 他の子達と組む約束とか、してなかったか?」
「「…………」」

 わたし達がもう一人である陸谷杏里が助け船を出してくれた。もっとも、芸能人顔負けの美少女の登場に、言葉に詰まりつつも脳内大騒ぎだけど。

(うっわぁ……間近で見ると、顔ちっさ! 髪、サラサラ! オレっ娘だけど本当、美少女!)

 女のわたしでもこうなんだから、オタクでも男の保は更に大変だろう……と思って視線をやると、意外と真っ赤にはなっていなかった。いや、むしろ何だか青ざめていた。
 それが、言いたいだけ言って黙った椿からのプレッシャーのせいだと気づく。

(……男子って、大変。わたし、女で良かったぁ)

 しみじみとそう思い、さて、と考える。
 どうせ、二人だけでは駄目なのでどこかのグループに入れて貰わないといけない。だか、これだけ騒ぎになった後ではもう、この申し出を受けた方が良さそうだ。
 ……それに、この二人ってそれこそ『二人の世界』を作ってるから、こっちから近づかなければ意外と快適かもしれない。あと、美男美女で目が幸せだしね。

「……あの、よろしくお願いします」
「由香(ゆか)っ!?」

 わたしがそう言った瞬間、保はギョッとしていたが――わたしが出した結論に思い至り、他のクラスメートに声をかける苦労と天秤をかけたのだろう。
 眼鏡の奥の目を涙目にしつつも、しばらくして保も頷いた。
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