ターンオーバー

渡里あずま

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逆に言えば。お金さえあれば、自分の好きなことが出来るんだ。

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 実緒はふと思いつき、布団に潜ったまま自分のスマートフォンで検索を始めた。昔、そう、親世代が若かった頃ならともかく、この現代に実緒のように、親から反対されて大学に入学出来ないなんて話はないだろうと思ったからだ。

「え、嘘……」

 しかし、検索して実緒は驚いた。たくさんでこそないが昔だけではなく、ここ数年でも実緒のように親の許可が得られず、更に未成年だからと受験すら出来なかった者もいたのだ。

(って、前までは受験するだけでも、親の許可がいたんだ……あ、そうか)

 そこまで考えて実緒は、少し前に成人の年齢が変わったことを思い出し、今度はその場合でも親の同意は必要なのかと検索した。確か飲酒喫煙は出来ないが選挙の投票や、家などの契約は親の同意がなくても出来るようになった筈だ。
 そう思って調べてみたら、昔は受験の段階で親の同意が必須だったが、今は受験までは十八歳なら親の同意がなくても出来るということだった。ただ合格し、入学金や学費が絡むと話は別である。事前に奨学金の手続きをしていれば別だが、基本は親の同意を得た上での入学手続きとなるのだ。

(そうだよね。入学後は、お金の問題があるから……私が、学費とか払えれば……そうじゃなければ、奨学金制度の手配をしていれば、通えたかも……いや、でもバイトも駄目なんだから奨学金も反対されたかな。あの感じだと、そもそも大学進学させたくないみたいだから)

 無意識に、両親に甘えていた自分に気づいてまた涙が溢れてくる。それをタオルハンカチで拭いながら、実緒はふとあることに気づいた。

(……逆に言えば。お金さえあれば、自分の好きなことが出来るんだ)

 親から欲しいものは買うと言われていて、実緒は高校生の間、バイトをすることを許して貰えなかった。その為、服や文具は親が買ってくれていたけれど、逆に自分でお金を稼いで自由に使うという発想自体がなかったことに今更ながらに気づく。

(親のいう通りに働いたら、そりゃあ、お給料は貰えるんだろうけど)

 だが今のままでは実緒が働いても、その給料の一部は親に渡すことになる。そこでまた、実緒はある疑問を抱いた。

(お母さん、簡単に十万入れろと言ってたけど……そもそも、お給料っていくらなんだろう?)

 高卒、しかも父が話を持ってくるなら役所関係の施設の受付や事務だろう。そう思い、検索結果を見て実緒は驚き思わず声を上げていた。

「えっ……手取り十三万……?」

 多少、前後はするだろうがこれだと実緒の手元に残るのは三万円くらいだ。
 実家にいたら、家賃や光熱費はいらないだろうという考え方で、その本来ならかかる必要経費が親のいう『十万』なのだろう。
 そして高校を卒業したら、スマートフォン代などは自分で払うことになると思う。いや、それが悪いとは言わないし貯金するのなら格安プランなどに変えてもいいが、それにしても貯金出来る額は微々たるものだ。

(それこそ、家に入れろって言われた十万が貯金出来れば……んっ?)

 そこで、実緒は『バイト代貯金』という検索結果から、リゾート地での住み込みバイトというのを見つけた。
 住み込み。そう、住み込みである。しかも家賃・光熱費込みで月一万などなのと、そもそもの手取りが先程の検索結果より数万高かったのである。

(えっ? これ、真っ当なバイト? 闇バイトとかじゃない?)

 ついつい失礼なことを思ってしまったが、気になって実緒は今度はリゾート地でのバイト体験談を検索することにした。
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