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12. イチゴ大福
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メイドさんが扉をノックして、ピカピカに光って見えるワゴンを押しながら部屋に入ってくると、中央にあるテーブルにサンドイッチと紅茶、そしてわたしの大好きなイチゴ大福を並べてくれた。
「このイチゴ大福、おっきいですね!」
「ふふっ、うちのシェフ特製デザートよ」
テーブルの前の席について微笑む姫奏せんぱ――姫奏。
たったそれだけなのに、わたしの心臓の鼓動が速くなって、頬が朱に染まってゆくのが分かる。学校では、厳しくて、怒ると怖い、厳格な人なのに。わたしにだけこの笑顔を見せてくれているのだと思うと、幸せすぎて死んでしまいそうになる。いやいや、死んじゃったら姫奏に二度と会えなくなっちゃうから駄目だ。
「さ、食べましょうか」
「はいっ!」
さっそくイチゴ大福をフォークでさし、口へ運ぶわたし。
「ん~♪♪ おいひいれすっ!!」
「よかった♪」
なにこれ、すごく美味しい!
大きくて甘いイチゴと、控えめの餡。そしてそれを囲う薄くのばされた餅の素晴らしいハーモニー。
こんなの、いままでに食べたことないっ!!
わたしはただただ美味しさに引き込まれて、お皿に盛られたイチゴ大福を次々に食べて行く。
「それだけ美味しそうに食べてるところをみてしまうと……私も食べたくなっちゃうじゃない」
「どうぞどうぞ!」
と言って、わたしはお皿を先輩の方へとすっと差し出す。が、先輩はそのお皿を見つめるだけで、何もしない。……あれ? たべたいんじゃなかったの?
「その……。たべさせて、もらえないかしら?」
「ふえっ、んむぐっ!? んー! んー! ごっくん。……けほっ、けほっ」
あまりの姫奏の言葉の衝撃に、思わずイチゴ大福を喉に詰まらせてしまった。
慌てて差し出された、冷めかけの紅茶を一気に飲み干す。
「あ~、すみません先輩。ありがとうございます。……紅茶も美味しいですね♪」
「……たべさせて、くれないの?」
「も、もちろんですっ! ……は、はい。あ~ん♪」
姫奏にあるまじき上目遣いでのお願い。
わたしの驚きなんか一瞬で吹っ飛んでいき、わたしの頭の中は上目遣いの姫奏姫奏姫奏で埋め尽くされていった。
「あ~ん。……ん~♪ やっぱりおいしいわね!」
わたしみたいに一口で食べるのははずかしいのか、少しずつ食べる姫奏。と、たべさせてあげている拍子に餡が頬っぺたについてしまったみたい。
「姫奏、うごかないでください。頬っぺたに餡がついてるので、とってあげますね♪」
「それくらい自分でできるのに……。ありがとう♪」
きゅっと目をつむって、あごを前に軽くつき出すようにしてじっとしている姫奏。
……これ、絶対そうだよね。そうしなきゃだよね。
わたしは立ち上がって姫奏の方へと回ると、腰を屈めて姫奏の顔にわたしの顔を近づけて、ペロッと餡を舌で舐めとった。
「ひあんっ♪」
「とれましたよ♪」
「も、もうっ! なにするのよぉ……。不意打ちはだめよ?」
「は~い」
いいじゃないですか。絶対やってほしかったでしょ?
それに、姫奏はわたしのものなんだから、許してくれるでしょう。
ほら、現に恥ずかしそうに頬を染めながらも、口許はにやけきってるし。
……それに、不意打ちでなければいいって、今、言ったよね?
ふふっ、ふふふふっ、ふふふふフフフフ…………ハッ!
あぶないあぶない。私ったら!
「ん~♪ やっぱりおいひい……。また食べに来ても良いですか?」
「もちろん♪ いつでもいいわよ?」
「やった! 姫奏だいすき!」
「わたしもよ♪」
ちゅっ♪
「このイチゴ大福、おっきいですね!」
「ふふっ、うちのシェフ特製デザートよ」
テーブルの前の席について微笑む姫奏せんぱ――姫奏。
たったそれだけなのに、わたしの心臓の鼓動が速くなって、頬が朱に染まってゆくのが分かる。学校では、厳しくて、怒ると怖い、厳格な人なのに。わたしにだけこの笑顔を見せてくれているのだと思うと、幸せすぎて死んでしまいそうになる。いやいや、死んじゃったら姫奏に二度と会えなくなっちゃうから駄目だ。
「さ、食べましょうか」
「はいっ!」
さっそくイチゴ大福をフォークでさし、口へ運ぶわたし。
「ん~♪♪ おいひいれすっ!!」
「よかった♪」
なにこれ、すごく美味しい!
大きくて甘いイチゴと、控えめの餡。そしてそれを囲う薄くのばされた餅の素晴らしいハーモニー。
こんなの、いままでに食べたことないっ!!
わたしはただただ美味しさに引き込まれて、お皿に盛られたイチゴ大福を次々に食べて行く。
「それだけ美味しそうに食べてるところをみてしまうと……私も食べたくなっちゃうじゃない」
「どうぞどうぞ!」
と言って、わたしはお皿を先輩の方へとすっと差し出す。が、先輩はそのお皿を見つめるだけで、何もしない。……あれ? たべたいんじゃなかったの?
「その……。たべさせて、もらえないかしら?」
「ふえっ、んむぐっ!? んー! んー! ごっくん。……けほっ、けほっ」
あまりの姫奏の言葉の衝撃に、思わずイチゴ大福を喉に詰まらせてしまった。
慌てて差し出された、冷めかけの紅茶を一気に飲み干す。
「あ~、すみません先輩。ありがとうございます。……紅茶も美味しいですね♪」
「……たべさせて、くれないの?」
「も、もちろんですっ! ……は、はい。あ~ん♪」
姫奏にあるまじき上目遣いでのお願い。
わたしの驚きなんか一瞬で吹っ飛んでいき、わたしの頭の中は上目遣いの姫奏姫奏姫奏で埋め尽くされていった。
「あ~ん。……ん~♪ やっぱりおいしいわね!」
わたしみたいに一口で食べるのははずかしいのか、少しずつ食べる姫奏。と、たべさせてあげている拍子に餡が頬っぺたについてしまったみたい。
「姫奏、うごかないでください。頬っぺたに餡がついてるので、とってあげますね♪」
「それくらい自分でできるのに……。ありがとう♪」
きゅっと目をつむって、あごを前に軽くつき出すようにしてじっとしている姫奏。
……これ、絶対そうだよね。そうしなきゃだよね。
わたしは立ち上がって姫奏の方へと回ると、腰を屈めて姫奏の顔にわたしの顔を近づけて、ペロッと餡を舌で舐めとった。
「ひあんっ♪」
「とれましたよ♪」
「も、もうっ! なにするのよぉ……。不意打ちはだめよ?」
「は~い」
いいじゃないですか。絶対やってほしかったでしょ?
それに、姫奏はわたしのものなんだから、許してくれるでしょう。
ほら、現に恥ずかしそうに頬を染めながらも、口許はにやけきってるし。
……それに、不意打ちでなければいいって、今、言ったよね?
ふふっ、ふふふふっ、ふふふふフフフフ…………ハッ!
あぶないあぶない。私ったら!
「ん~♪ やっぱりおいひい……。また食べに来ても良いですか?」
「もちろん♪ いつでもいいわよ?」
「やった! 姫奏だいすき!」
「わたしもよ♪」
ちゅっ♪
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