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エピローグ
春は巡る
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「高原先生、今年も担任は無しですか!」
「ええ、幸田先生も?」
「そうなんです!その分特別授業に集中して欲しいと言われまして!」
「あ、僕もです」
あれから2年が経ち、樫原君も無事に卒業して今はプロのサッカー選手だ。
去年の卒業式と同時に、2人は正式にお付き合いを始めた。
さらに今年からは、樫原君のチームの本拠地近くに借りたマンションで同棲を始める予定だ。
去年1年間は別々の生活だった。
先祖返りとはいえ1年目、すぐに活躍できるかは分からないし、先生にお金の負担を掛けたくないから…
なんて言っていたけど、入団からすぐにレギュラー入りして新人王を取った。
本当は昨年大陸からの誘いもあったそうだが、それを断ったのは自分がこの国にいるからで…。
申し訳ない気持ちにもなったが、ケイジが「あいつなりの誠意だろう」というから頑張って気にしないことにした。
「今年も先祖返りの子が多いですね」
「ええ、2年続けて好成績ですからね!
勧誘もうまくいくんでしょう!」
あれからも金曜日の集会は続いている。
あまり公には出来ないが、疲れ切った子に血をあげる事も続いている。
これ以上多くなったら貧血になりやしないかと思ったが、最近はちゃんと食べているおかげか月一回の採血でも「優」をもらっているから安心だ。
「今日は早めに帰りましょう!
明日からまた教材作りもありますし!」
「ええ、そうしましょう。
本屋にも寄りたいですし…ついでに野球部の顧問として商店街チームに挨拶してきます」
「ああ、あのスポーツ用品店の!
私もプロテインを買い足しに行きますから、一緒に行きましょう!
菱本先生はどうしますか?」
高原先生の後輩だという彼は、昨年度ずっと高原先生の後ろをくっついてまわっていた。
席も隣で、特別授業の担当でもある。
今年度も後ろをついてくるのだろうか…。
「高原先生、もう帰るんですか?」
「うん、菱本先生も今日は早めに帰ったら?」
「でもお2人は商店街に行かれるんですよね?
良かったら僕もご一緒させてください」
…どうやら今年も付いてくるらしい。
「では行きますか!
ご挨拶の前に、酒屋さんで手土産のビールを買っていきましょう」
「ええ、皆さんお好きですしね」
季節は巡る。
変わらない関係と代わっていく関係。
この国も少しずつ変わっていくのだろう。
窓からは校庭の桜が見える。
「…春ですね」
「ええ」
眼鏡の奥にいる魔導師にも、この桜が見えているだろうか。
「今年の災害も、少なくて済みますように」
高原先生は心の中で祈って…
カバンを手に取り、職員室を後にした。
おしまい
-----------
更新が止まったりもしたけれど、何とか完結できました。
ここまで読んでいただいた皆様に感謝を!
他の作品も書いていますので、そちらも宜しくお願いします!!
おまけもある…かもしれない
「ええ、幸田先生も?」
「そうなんです!その分特別授業に集中して欲しいと言われまして!」
「あ、僕もです」
あれから2年が経ち、樫原君も無事に卒業して今はプロのサッカー選手だ。
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さらに今年からは、樫原君のチームの本拠地近くに借りたマンションで同棲を始める予定だ。
去年1年間は別々の生活だった。
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なんて言っていたけど、入団からすぐにレギュラー入りして新人王を取った。
本当は昨年大陸からの誘いもあったそうだが、それを断ったのは自分がこの国にいるからで…。
申し訳ない気持ちにもなったが、ケイジが「あいつなりの誠意だろう」というから頑張って気にしないことにした。
「今年も先祖返りの子が多いですね」
「ええ、2年続けて好成績ですからね!
勧誘もうまくいくんでしょう!」
あれからも金曜日の集会は続いている。
あまり公には出来ないが、疲れ切った子に血をあげる事も続いている。
これ以上多くなったら貧血になりやしないかと思ったが、最近はちゃんと食べているおかげか月一回の採血でも「優」をもらっているから安心だ。
「今日は早めに帰りましょう!
明日からまた教材作りもありますし!」
「ええ、そうしましょう。
本屋にも寄りたいですし…ついでに野球部の顧問として商店街チームに挨拶してきます」
「ああ、あのスポーツ用品店の!
私もプロテインを買い足しに行きますから、一緒に行きましょう!
菱本先生はどうしますか?」
高原先生の後輩だという彼は、昨年度ずっと高原先生の後ろをくっついてまわっていた。
席も隣で、特別授業の担当でもある。
今年度も後ろをついてくるのだろうか…。
「高原先生、もう帰るんですか?」
「うん、菱本先生も今日は早めに帰ったら?」
「でもお2人は商店街に行かれるんですよね?
良かったら僕もご一緒させてください」
…どうやら今年も付いてくるらしい。
「では行きますか!
ご挨拶の前に、酒屋さんで手土産のビールを買っていきましょう」
「ええ、皆さんお好きですしね」
季節は巡る。
変わらない関係と代わっていく関係。
この国も少しずつ変わっていくのだろう。
窓からは校庭の桜が見える。
「…春ですね」
「ええ」
眼鏡の奥にいる魔導師にも、この桜が見えているだろうか。
「今年の災害も、少なくて済みますように」
高原先生は心の中で祈って…
カバンを手に取り、職員室を後にした。
おしまい
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更新が止まったりもしたけれど、何とか完結できました。
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