先祖返りの君と普通の僕

紫蘇

文字の大きさ
上 下
87 / 88
エピローグ

春は巡る

しおりを挟む
「高原先生、今年も担任は無しですか!」
「ええ、幸田先生も?」
「そうなんです!その分特別授業に集中して欲しいと言われまして!」
「あ、僕もです」

あれから2年が経ち、樫原君も無事に卒業して今はプロのサッカー選手だ。
去年の卒業式と同時に、2人は正式にお付き合いを始めた。
さらに今年からは、樫原君のチームの本拠地近くに借りたマンションで同棲を始める予定だ。

去年1年間は別々の生活だった。
先祖返りとはいえ1年目、すぐに活躍できるかは分からないし、先生にお金の負担を掛けたくないから…
なんて言っていたけど、入団からすぐにレギュラー入りして新人王を取った。

本当は昨年大陸からの誘いもあったそうだが、それを断ったのは自分がこの国にいるからで…。
申し訳ない気持ちにもなったが、ケイジが「あいつなりの誠意だろう」というから頑張って気にしないことにした。

「今年も先祖返りの子が多いですね」
「ええ、2年続けて好成績ですからね!
 勧誘もうまくいくんでしょう!」

あれからも金曜日の集会は続いている。
あまりおおやけには出来ないが、疲れ切った子に血をあげる事も続いている。
これ以上多くなったら貧血になりやしないかと思ったが、最近はちゃんと食べているおかげか月一回の採血でも「優」をもらっているから安心だ。

「今日は早めに帰りましょう!
 明日からまた教材作りもありますし!」
「ええ、そうしましょう。
 本屋にも寄りたいですし…ついでに野球部の顧問として商店街チームに挨拶してきます」
「ああ、あのスポーツ用品店の!
 私もプロテインを買い足しに行きますから、一緒に行きましょう!
 菱本先生はどうしますか?」

高原先生の後輩だという彼は、昨年度ずっと高原先生の後ろをくっついてまわっていた。
席も隣で、特別授業の担当でもある。
今年度も後ろをついてくるのだろうか…。

「高原先生、もう帰るんですか?」
「うん、菱本先生も今日は早めに帰ったら?」
「でもお2人は商店街に行かれるんですよね?
 良かったら僕もご一緒させてください」

…どうやら今年も付いてくるらしい。

「では行きますか!
 ご挨拶の前に、酒屋さんで手土産のビールを買っていきましょう」
「ええ、皆さんお好きですしね」

季節は巡る。
変わらない関係と代わっていく関係。
この国も少しずつ変わっていくのだろう。

窓からは校庭の桜が見える。

「…春ですね」
「ええ」

眼鏡の奥にいる魔導師にも、この桜が見えているだろうか。

「今年の災害も、少なくて済みますように」

高原先生は心の中で祈って…
カバンを手に取り、職員室を後にした。


おしまい

-----------

更新が止まったりもしたけれど、何とか完結できました。
ここまで読んでいただいた皆様に感謝を!
他の作品も書いていますので、そちらも宜しくお願いします!!

おまけもある…かもしれない
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

永遠の快楽

桜小路勇人/舘石奈々
BL
万引きをしたのが見つかってしまい脅された「僕」がされた事は・・・・・ ※タイトル変更しました※ 全11話毎日22時に続話更新予定です

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

欲情列車

ソラ
BL
無理やり、脅迫などの描写があります。 1話1話が短い為、1日に5話ずつの公開です。

くんか、くんか Sweet ~甘くて堪らない、君のフェロモン~

天埜鳩愛
BL
爽やかスポーツマンα × 妄想巣作りのキュートΩ☆ お互いのフェロモンをくんかくんかして「甘い❤」ってとろんっとする、可愛い二人のもだきゅんラブコメ王道オメガバースです。 オメガ性を持つ大学生の青葉はアルバイト先のアイスクリームショップの向かいにあるコーヒーショップの店員、小野寺のことが気になっていた。 彼に週末のデートを誘われ浮かれていたが、発情期の予兆で休憩室で眠ってしまう。 目を覚ますと自分にかけられていた小野寺のパーカーから香る彼のフェロモンに我慢できなくなり、発情を促進させてしまった! 他の男に捕まりそうになった時小野寺が駆けつけ、彼の家の保護される。青葉はランドリーバスケットから誘われるように彼の衣服を拾い集めるが……。 ハッピーな気持ちになれる短編Ωバースです

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

処理中です...