先祖返りの君と普通の僕

先祖返りの君と普通の僕

入学式、そして…

一月前に卒業式があったと思ったらもう入学式。
今年も高原先生は担任するクラスが無い。
同じく幸田先生も担任を持たないこととなった。
その代わり、特別授業を今年もやる事になった。
前年度と違い、今度は学校から直々に要請されての事だ。

「ついに高原先生の熱意が学校に伝わりましたね！」
「はい、どの子にもこの高校に来て良かったと思って貰いたいです…
　宜しくお願いします、幸田先生」
「もちろんですとも！」

ついでに地域と連携して行う社会科の課外授業…平たくいうと「盆踊り」と「シェルターめぐり」の担当でもある。
商店街は大喜びだ。
生徒たちも喜んでくれれば良いが…
喜べるかどうかは2人の手腕にかかっていると言える。

「去年は野球部のみんなが中心で色々とやってくれたんですけど、今年は希望者を募るのも良いのかなって」
「そうですね！
　授業の一環となると生徒会の範疇を超えますし！
　いっそ委員会を作っても良さそうですね！」

この2人の話し合いは、新入生歓迎会の部活紹介での野球部の発言により無駄になってしまうのだが、その事を知る由も今はない。

「さてと！2年生と3年生で特別授業に出る生徒は昨年から引き続きで良いでしょうか！」
「ええ、授業についていけるようになったら来なくて良いよ、とは言ったんですけど…
　そのまま参加したいということで」
「分かりました！」
「それと…今年から参加を希望する子も何人か」
「そうですか！困りましたね！」
「他に担任を持ってない先生にも声をかけてみましょうか…」

特別授業にも予算がついた。
多少の残業代なら払えるし、教材代も使える。
いざとなれば外部講師という手もあるだろう…
スポーツ一辺倒でなく、文武両道の学校を目指して、少しづつ改革していこうということだ。

学校も変わり始めた。
運動部の寮にはなぜか猫が増えた。

春、新しくこの学校へ来る生徒はどんな子たちだろうか…

授業は明日からだ。

高原先生は、新一年生に会うのを楽しみにしていた。