47 / 88
先祖返りの君と普通の僕
災害は立て続けに 1
しおりを挟む
「この前の試合は大変でしたね!」
「はい、でもこの前、幸田先生が色々教えてくれたので、スムーズに避難できました。
見回りもして、逃げ遅れた人に手を貸すこともできましたし…訓練は大事だなって思いました」
あの災害から2日たった月曜日、高原先生は幸田先生に災害に合った時の報告をしていた。
バスケ部の顧問に怒られたことは抜きにして。
「そうですね!やはり練習あっての本番ですから!何事も!」
「テレビで災害に襲われた場所を見ましたけど…建物、あんなに壊れちゃうなんて」
「いやいや!かなり被害は少なかったそうですよ!死者も出ませんでしたし!」
いち早く魔導師が来てくれたんだろう…と、幸田先生が言うので、高原先生はそうなんだろうと思った。
「バスケ部の全国大会、続きは2ヶ月後ですか!」
「そうなんです、あの辺りに住んでる子もいるでしょうし、すぐには…。体育館は無事でしたけど」
「災害の季節は始まったばかりですしね!時期が過ぎるまで待つ方がいいでしょうね!」
「そうですね、ただ順当にいくと、サッカー部の決勝と被りそうなんですよね…どうしよう」
「大丈夫ですよ!決勝戦は各校の応援団の都合もありますから!日程は被らないように調整されると思いますよ!」
「へえー、そうなんですね」
それならありがたい。
どちらからも誘われている身としては、カドが立たなくてほっとする。
「それにしても、よく応援に行かれますよね!
スポーツお好きなんですね!」
「あ、はあ、見るのは…ですけど」
「ジョギングはまだ続けてらっしゃるんでしょ!
良かったら長距離走るコツ、教えますよ!」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
じゃあ明日の朝に…と話をしていたその時。
大音量のサイレンが鳴った。
「皆さん、北20kmの地点で災害が発生しました。
到達予想まで後20分。急いで避難して下さい。
皆さん、災害が発生しました……」
「幸田先生…!」
「まだ登校時間です、我々は校門へ!」
「はい!」
「私が正門へ行きます、高原先生は南門へ!
鍵はそこの壁に!」
「えっ、でも、北は!!」
正門は学校の北側にあたる。
少しでも到達が遅いほうを高原先生に譲り、幸田先生はサムズアップして言った。
「1秒差で、助かる命もありますから!」
1秒…1秒か。
どこかで…。
いや、今そんなことは考えるな。
高原先生も南門の鍵を握りしめ、走り出した。
今は生徒を守ることが大事…。
必死で走り、南門を開ける。
外でもサイレンが鳴っている。
生徒に混じって通勤中の人たちも入ってくる。
「入口は…!」
入口にはすでに各部の顧問が待機し、走ってくる人たちを誘導していた。
訓練の賜物だ。
外へ出て誘導するべきか…悩んでいたその時、サッカー部の部長がこちらへ走ってきた。
「高原先生!僕が外を見てきます!
シェルターへ行ってください!」
「はい、でも、部長さんは!?」
「僕なら大丈夫、走るのは得意ですから!」
どうやら2日前のやらかしが、各部へ回ったようだ。
先生は素直にその言葉に従ってシェルターへ…
「そうだ…!」
学校の北側。
そこは商店街のある場所。
ここよりも早く魔獣が到達するはず…。
「みんな、無事かな…」
魔獣を討伐するのは魔導師の仕事だ。
魔導師しか討伐はできない。
普通の人間には、祈ることしか…
「北、20㎞…警報から今…3分」
魔獣の速度は時速60㎞。
車と同じ速さで走っている。
「時速60㎞、なら、中型から大型」
何匹いる?避難指示の範囲はどのくらい?
先生はゆらり、と向きを変え、理事長室へと向かう。
そこになら情報があると確信している。
シェルターへと急ぐ人たちに、先生の姿はすでに見えない。
そこにいるのは…
影。
人ならぬ影のようなもの。
「はい、でもこの前、幸田先生が色々教えてくれたので、スムーズに避難できました。
見回りもして、逃げ遅れた人に手を貸すこともできましたし…訓練は大事だなって思いました」
あの災害から2日たった月曜日、高原先生は幸田先生に災害に合った時の報告をしていた。
バスケ部の顧問に怒られたことは抜きにして。
「そうですね!やはり練習あっての本番ですから!何事も!」
「テレビで災害に襲われた場所を見ましたけど…建物、あんなに壊れちゃうなんて」
「いやいや!かなり被害は少なかったそうですよ!死者も出ませんでしたし!」
いち早く魔導師が来てくれたんだろう…と、幸田先生が言うので、高原先生はそうなんだろうと思った。
「バスケ部の全国大会、続きは2ヶ月後ですか!」
「そうなんです、あの辺りに住んでる子もいるでしょうし、すぐには…。体育館は無事でしたけど」
「災害の季節は始まったばかりですしね!時期が過ぎるまで待つ方がいいでしょうね!」
「そうですね、ただ順当にいくと、サッカー部の決勝と被りそうなんですよね…どうしよう」
「大丈夫ですよ!決勝戦は各校の応援団の都合もありますから!日程は被らないように調整されると思いますよ!」
「へえー、そうなんですね」
それならありがたい。
どちらからも誘われている身としては、カドが立たなくてほっとする。
「それにしても、よく応援に行かれますよね!
スポーツお好きなんですね!」
「あ、はあ、見るのは…ですけど」
「ジョギングはまだ続けてらっしゃるんでしょ!
良かったら長距離走るコツ、教えますよ!」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
じゃあ明日の朝に…と話をしていたその時。
大音量のサイレンが鳴った。
「皆さん、北20kmの地点で災害が発生しました。
到達予想まで後20分。急いで避難して下さい。
皆さん、災害が発生しました……」
「幸田先生…!」
「まだ登校時間です、我々は校門へ!」
「はい!」
「私が正門へ行きます、高原先生は南門へ!
鍵はそこの壁に!」
「えっ、でも、北は!!」
正門は学校の北側にあたる。
少しでも到達が遅いほうを高原先生に譲り、幸田先生はサムズアップして言った。
「1秒差で、助かる命もありますから!」
1秒…1秒か。
どこかで…。
いや、今そんなことは考えるな。
高原先生も南門の鍵を握りしめ、走り出した。
今は生徒を守ることが大事…。
必死で走り、南門を開ける。
外でもサイレンが鳴っている。
生徒に混じって通勤中の人たちも入ってくる。
「入口は…!」
入口にはすでに各部の顧問が待機し、走ってくる人たちを誘導していた。
訓練の賜物だ。
外へ出て誘導するべきか…悩んでいたその時、サッカー部の部長がこちらへ走ってきた。
「高原先生!僕が外を見てきます!
シェルターへ行ってください!」
「はい、でも、部長さんは!?」
「僕なら大丈夫、走るのは得意ですから!」
どうやら2日前のやらかしが、各部へ回ったようだ。
先生は素直にその言葉に従ってシェルターへ…
「そうだ…!」
学校の北側。
そこは商店街のある場所。
ここよりも早く魔獣が到達するはず…。
「みんな、無事かな…」
魔獣を討伐するのは魔導師の仕事だ。
魔導師しか討伐はできない。
普通の人間には、祈ることしか…
「北、20㎞…警報から今…3分」
魔獣の速度は時速60㎞。
車と同じ速さで走っている。
「時速60㎞、なら、中型から大型」
何匹いる?避難指示の範囲はどのくらい?
先生はゆらり、と向きを変え、理事長室へと向かう。
そこになら情報があると確信している。
シェルターへと急ぐ人たちに、先生の姿はすでに見えない。
そこにいるのは…
影。
人ならぬ影のようなもの。
0
お気に入りに追加
99
あなたにおすすめの小説
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる