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先祖返りの君と普通の僕
二学期最初の河川敷
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河川敷に声が響く。
「ストライク!バッターアウト!」
「あ~!やられた~!」
今日も野球部は商店街チームと試合をする。
盆踊り以来、金曜日に飲食店のご主人たちが来られなくなってしまったので、合同練習と練習試合は水曜日に変更になった。
自然と商店街でご飯を食べるのも水曜日になったので、金曜日に先祖返りの子たちと約束がある先生としてはありがたい。
「金曜日に、結構飲みに来てくれる人が増えたんだよ」
「高校生の子たちの親御さんが結構きてくれるようになって、商店街もお客さんが増えてきたんだ。
君たちと高原先生のおかげだな!」
「へへ、そうだろ!みんな頑張ったんだぜ!」
「だから今度、ジュースおごってよ」
「もう!何言ってるの!
そんな、お気遣いなんていりませんから!
こちらこそいい機会を頂いて…。
生徒たちも楽しそうでしたし、生徒の親御さんたちも喜んでました。
『青春っぽいことをさせてあげたかったんです』って」
青春っぽいことと言えば、夏休みの終わりに学校で花火をしたのも楽しかった。
盆踊りの屋台で儲けたお金を使って、商店街のおもちゃ屋さんで「予算3万円で買えるだけ」花火を買って、駄菓子屋さんで「予算2万円で買えるだけ」お菓子を買って、酒屋さんでジュースを「予算1万円で買えるだけ」買って、みんなで楽しく打ち上げができた。
残ったお金は来年の資金に取っておくことにした。
「将来、イベントの企画の仕事をしたいとか地域の活性化に興味が出たっていう子もいて、生徒たちの課外授業としてもいいんじゃないかってことで…来年もお願いしたいんです」
「おお、本当か!そいつはありがたい」
「来年も高原先生、来てくれるんだろ?」
「そうそう、踊りの先生が来年はがっつり盆踊り教えるんだって張りきってたぞ」
「う~ん、来年は…来年にならないと分からないですかね…。
でも、できたらまた、一緒にしたいなと思ってます。今年の反省もあるし…」
「ベビーカステラが無かったもんな」
「お前はまた食い物のことばっかだな」
ハハハ…
河川敷にみんなの笑いが流れる。
高原先生は思った。
楽しいだけの部活があってもいい。
野球を通じて、いろんな人と仲良くなったことは、地区予選1回戦突破よりもずっと価値がある。
地元の人たちとの繋がりが希薄だと、災害が起きた時に孤立しやすくなってしまう。
もうすぐ、「災害」の季節が来る。
ここが「災害」に会わないという保証はない。
「今年も災害が来なければいいですね」
「急にどうした、先生」
「昨日、学校のシェルターを点検があったんで…それで、ふと」
「ああ、そうか…そんな季節か。
商店街のシェルターも点検しないとなー」
「災害」を未然に防ぐことはできない。
そこから立ち上がるためには、国の補償だけじゃ足りない。
結局のところ、大事なのは助け合いなのだ。
「そういや野球部諸君は、商店街のシェルターがどこにあるとか知ってるか?」
「えっ、知らない…」
「それならさ、このあたりのシェルターの場所、一度みんなで見て回ろうか。
出来たら盆踊り来てくれた子たちも一緒にさ。
学校の外で災害に出くわした時、どこにシェルターがあるか分からないと困るじゃない」
「えー、遠足みたいで何か恥ずかしいな」
「遠足?」
「まさか先生、遠足の記憶もないのか」
…遠足…
みんなで遠くに足を運ぶってことかな。
う~ん、遠足?
考える先生を見て、野球部と草野球チームはまた困った顔になる。
「どうやらこれは、したことないな」
「しょーがねえなあ、じゃあ”地元シェルターめぐりツアー”ってことで…参加者募集しようぜ」
「おやつは300円までだぞ」
「バナナはおやつに入りますか?」
「出た、様式美」
どんなツアーにしようか。
商店街は外せないよな。
そういや、商店街で入りにくい店があるだろ、お茶屋さんとかお寿司屋さんとか…こういうときに寄ってみるってのはどうよ?おじさん達、ついてきてくれるんだよな?
わいわいと話が進んでいく。
野球部はすっかり、野球だけをする部活ではなくなっていた。
思いついたイベントを企画して運営する部…ちょっと生徒会っぽい。
「こういう企画考えるのって、ちょっと楽しいよな」
「うんうん」
ただ、彼らが生徒会と大きく違うのは…
「先生も参加者側になってもらうから、引率はおっちゃんにお願いしてもいい?」
「おう、まかしとけ」
「ええっ、いいんですか?」
「だって、先生も遠足してみたいでしょ」
「う…うん」
全ての動機が「高原先生」に結びついていることだった。
災害の季節まであと少し。
何事もなく終われるといいな…と、高原先生は願った。
「ストライク!バッターアウト!」
「あ~!やられた~!」
今日も野球部は商店街チームと試合をする。
盆踊り以来、金曜日に飲食店のご主人たちが来られなくなってしまったので、合同練習と練習試合は水曜日に変更になった。
自然と商店街でご飯を食べるのも水曜日になったので、金曜日に先祖返りの子たちと約束がある先生としてはありがたい。
「金曜日に、結構飲みに来てくれる人が増えたんだよ」
「高校生の子たちの親御さんが結構きてくれるようになって、商店街もお客さんが増えてきたんだ。
君たちと高原先生のおかげだな!」
「へへ、そうだろ!みんな頑張ったんだぜ!」
「だから今度、ジュースおごってよ」
「もう!何言ってるの!
そんな、お気遣いなんていりませんから!
こちらこそいい機会を頂いて…。
生徒たちも楽しそうでしたし、生徒の親御さんたちも喜んでました。
『青春っぽいことをさせてあげたかったんです』って」
青春っぽいことと言えば、夏休みの終わりに学校で花火をしたのも楽しかった。
盆踊りの屋台で儲けたお金を使って、商店街のおもちゃ屋さんで「予算3万円で買えるだけ」花火を買って、駄菓子屋さんで「予算2万円で買えるだけ」お菓子を買って、酒屋さんでジュースを「予算1万円で買えるだけ」買って、みんなで楽しく打ち上げができた。
残ったお金は来年の資金に取っておくことにした。
「将来、イベントの企画の仕事をしたいとか地域の活性化に興味が出たっていう子もいて、生徒たちの課外授業としてもいいんじゃないかってことで…来年もお願いしたいんです」
「おお、本当か!そいつはありがたい」
「来年も高原先生、来てくれるんだろ?」
「そうそう、踊りの先生が来年はがっつり盆踊り教えるんだって張りきってたぞ」
「う~ん、来年は…来年にならないと分からないですかね…。
でも、できたらまた、一緒にしたいなと思ってます。今年の反省もあるし…」
「ベビーカステラが無かったもんな」
「お前はまた食い物のことばっかだな」
ハハハ…
河川敷にみんなの笑いが流れる。
高原先生は思った。
楽しいだけの部活があってもいい。
野球を通じて、いろんな人と仲良くなったことは、地区予選1回戦突破よりもずっと価値がある。
地元の人たちとの繋がりが希薄だと、災害が起きた時に孤立しやすくなってしまう。
もうすぐ、「災害」の季節が来る。
ここが「災害」に会わないという保証はない。
「今年も災害が来なければいいですね」
「急にどうした、先生」
「昨日、学校のシェルターを点検があったんで…それで、ふと」
「ああ、そうか…そんな季節か。
商店街のシェルターも点検しないとなー」
「災害」を未然に防ぐことはできない。
そこから立ち上がるためには、国の補償だけじゃ足りない。
結局のところ、大事なのは助け合いなのだ。
「そういや野球部諸君は、商店街のシェルターがどこにあるとか知ってるか?」
「えっ、知らない…」
「それならさ、このあたりのシェルターの場所、一度みんなで見て回ろうか。
出来たら盆踊り来てくれた子たちも一緒にさ。
学校の外で災害に出くわした時、どこにシェルターがあるか分からないと困るじゃない」
「えー、遠足みたいで何か恥ずかしいな」
「遠足?」
「まさか先生、遠足の記憶もないのか」
…遠足…
みんなで遠くに足を運ぶってことかな。
う~ん、遠足?
考える先生を見て、野球部と草野球チームはまた困った顔になる。
「どうやらこれは、したことないな」
「しょーがねえなあ、じゃあ”地元シェルターめぐりツアー”ってことで…参加者募集しようぜ」
「おやつは300円までだぞ」
「バナナはおやつに入りますか?」
「出た、様式美」
どんなツアーにしようか。
商店街は外せないよな。
そういや、商店街で入りにくい店があるだろ、お茶屋さんとかお寿司屋さんとか…こういうときに寄ってみるってのはどうよ?おじさん達、ついてきてくれるんだよな?
わいわいと話が進んでいく。
野球部はすっかり、野球だけをする部活ではなくなっていた。
思いついたイベントを企画して運営する部…ちょっと生徒会っぽい。
「こういう企画考えるのって、ちょっと楽しいよな」
「うんうん」
ただ、彼らが生徒会と大きく違うのは…
「先生も参加者側になってもらうから、引率はおっちゃんにお願いしてもいい?」
「おう、まかしとけ」
「ええっ、いいんですか?」
「だって、先生も遠足してみたいでしょ」
「う…うん」
全ての動機が「高原先生」に結びついていることだった。
災害の季節まであと少し。
何事もなく終われるといいな…と、高原先生は願った。
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