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先祖返りの君と普通の僕
高原先生はどうやら普通じゃない
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「ハァ、はぁ、はぁ…」
今日も朝からジョギングだ。
あれから2週間、少しは体力がついただろうか。
高原先生は、タオルで汗を拭いながら、水飲み場でひと休みすることにした。
そこへ、朝練が終わったばかりのサッカー部員たちが通りかかった。
「あっ、高原センセ…」
狼型の「先祖がえり」の男の子が、声を掛けた。
いや、声を掛けたというよりは、口から出た。
「ああ、おはようございます」
「あ、あの、俺、小田です…その、」
「あっ…あの、樫原君の、言ってた」
すると、山羊型の「先祖がえり」の男の子も寄ってきて、こう言った。
「あー、ほんとだ、先生、いい匂いする」
「な!だろ!?」
「焼肉屋さんの匂いの上みたいな…」
「な!」
焼肉屋さんの匂いの上?
美味しそうってことかな…
高原先生は笑いながら言った。
「食べても、美味しくありませんよ?」
「うん、でも、この匂いでご飯食べれそー」
「だろ、何かいい匂いだろ?」
そこへ樫原君もやってきて、
「あっ…小田先輩、何やってんすか」
「んー、高原センセの匂いについて、矢吹と話して、美味しそうな匂いってことで一致したとこ」
「あっ、高原先生!?」
「囓りたい人が増えてしまったよ、どうしよう」
ははは、と笑って先生は言うが、小田先輩が隙あらば囓ろうとしているのが見てとれた。
なあ、なあ、と先生にやたら触っている。
んもー…と、先輩を止めに入ろうとした矢先、
高原先生はとんでもないことを言った。
「食い千切らないなら、ちょっとぐらい、いいよ」
「えー!いいんすかぁ、んじゃお手を拝借」
なんじゃそりゃ、と思う間に、小田先輩が高原先生の左手にカプリ、と噛みついた。犬歯が皮膚にプシ、と穴をあけ、血が出た、「痛っ!」
途端…
ブワァ!と小田君の毛が逆立った。
「小田!?」
「先輩!?」
「小田君!?」
…練習で草臥れていた小田君の毛が、フサフサになった。尻尾も何だかふくらんで、モフモフ度が上がっている。
「!!!?」
1番びっくりしているのは小田君だ。
自分の手を見て、脚を見て、屈伸…ジャンプ!
「うわぁ!!」
めっちゃ飛んだ。
1メートル以上飛んだ。
「な、何か、疲れが一気に…とんだ」
「はぁ!?」
「せんせの血、血、舐めてみ」
「ちょ、ちょっと!」
矢吹君も先生の手を取って、ペロリと血を舐めた。
「ふわぁ!」
……矢吹君もモフモフ度が上がった。
ジャンプしてみたら2メートルくらい飛んだ。
さすが山羊…ジャンプ力がえげつない。
3人は半分パニックだ。
「な、なんなん、なんなんこれ」
「え、え、どゆこと!?」
「か、かっしー、お前も舐めてみって、これ」
小田君は先生の手を勝手に樫原君の前にやる。
「いたたた」
確かに美味しそうな匂い……
樫原君も…ペロリ、と舐めてみる。
「う…はぁ!?」
樫原君のモフモフ度ももちろん…急上昇だ。
ジャンプ…しようとしたら、うっかりバク宙。
さすが猫科…
「やっべえ、何これ何これ」
「わ、わかんね、でもめっちゃやべぇ」
獣人3人組は、高原先生を見つめた。
「そ、そんな見られても、僕にもわからないよ…」
そこへサッカー部の顧問が駆けてきた。
「何やっとるか!!」
「せんせ、これ、せんせの、やべえ」
「高原先生も!ウチの邪魔せんでください!」
「ちげえって、すげえんだって」
「喧しい!さっさと部室へ行かんか!」
獣人3人組がスゴスゴと部室へ行く。
サッカー部の顧問は高原先生を睨みつけ、
「練習場所を取られた嫌がらせですか?
弱小は弱小らしく、大人しく潰れときゃ良かったんですよ、それをこれみよがしに…。
ったく、これだからオカマは」
「お、おかま?」
「みんな言ってますよ、あんたは男と付き合ってるオカマ野郎だってね!毎週毎週お迎えだなんて、子どもの教育に悪いんですよ!とっととこの学校から出てってもらえますか?ウチの部員に手を出す前にね!」
「お、おむかえ?」
「何しらばっくれてんですか?
最近見ないんで、別れたのか知りませんけど、学校で男漁るようなマネせんでください!」
「……え、えと、あの、僕は、」
別に男漁りしてるわけでもないし、誰ともお付き合いしたことないし、童貞…だ…し、あ…あれ…?
「あ、そうか…」
「何ですか!?」
「レイプ…されてたんだった、僕」
「……は?」
「毎週、脅されて、レイプされてたんです」
「……は、はい?」
サッカー部の顧問は目が点になった。
急に何を言い出すやら…
しかし、高原先生の様子は、明らかにおかしい。
目が……虚ろだ。
「よく、覚えてないんですけど、刑事さんがそう言ってて。無理に思い出すなって、言われて、だから、思い出さなかったんです」
「は、はあ」
「おもい、ださなかったん、です、けど」
高原先生は、泣き声も上げずに涙を溢した。
「ぼくが、わるいんでしょうか」
「そ、そんな、いや、言い過ぎました」
「ぼく、先生に、なりたかった、だけで、それが、わるいことなんで、しょうか」
虚ろな目が顧問を見る。
顧問は薄暗い恐怖を感じた。
「せ、先生、悪かった、私が悪かった」
「ぼ、く、、わ、た、し、は」
「……!せ、先生!?高原先生!?」
高原先生は、その場で気を失った。
今日も朝からジョギングだ。
あれから2週間、少しは体力がついただろうか。
高原先生は、タオルで汗を拭いながら、水飲み場でひと休みすることにした。
そこへ、朝練が終わったばかりのサッカー部員たちが通りかかった。
「あっ、高原センセ…」
狼型の「先祖がえり」の男の子が、声を掛けた。
いや、声を掛けたというよりは、口から出た。
「ああ、おはようございます」
「あ、あの、俺、小田です…その、」
「あっ…あの、樫原君の、言ってた」
すると、山羊型の「先祖がえり」の男の子も寄ってきて、こう言った。
「あー、ほんとだ、先生、いい匂いする」
「な!だろ!?」
「焼肉屋さんの匂いの上みたいな…」
「な!」
焼肉屋さんの匂いの上?
美味しそうってことかな…
高原先生は笑いながら言った。
「食べても、美味しくありませんよ?」
「うん、でも、この匂いでご飯食べれそー」
「だろ、何かいい匂いだろ?」
そこへ樫原君もやってきて、
「あっ…小田先輩、何やってんすか」
「んー、高原センセの匂いについて、矢吹と話して、美味しそうな匂いってことで一致したとこ」
「あっ、高原先生!?」
「囓りたい人が増えてしまったよ、どうしよう」
ははは、と笑って先生は言うが、小田先輩が隙あらば囓ろうとしているのが見てとれた。
なあ、なあ、と先生にやたら触っている。
んもー…と、先輩を止めに入ろうとした矢先、
高原先生はとんでもないことを言った。
「食い千切らないなら、ちょっとぐらい、いいよ」
「えー!いいんすかぁ、んじゃお手を拝借」
なんじゃそりゃ、と思う間に、小田先輩が高原先生の左手にカプリ、と噛みついた。犬歯が皮膚にプシ、と穴をあけ、血が出た、「痛っ!」
途端…
ブワァ!と小田君の毛が逆立った。
「小田!?」
「先輩!?」
「小田君!?」
…練習で草臥れていた小田君の毛が、フサフサになった。尻尾も何だかふくらんで、モフモフ度が上がっている。
「!!!?」
1番びっくりしているのは小田君だ。
自分の手を見て、脚を見て、屈伸…ジャンプ!
「うわぁ!!」
めっちゃ飛んだ。
1メートル以上飛んだ。
「な、何か、疲れが一気に…とんだ」
「はぁ!?」
「せんせの血、血、舐めてみ」
「ちょ、ちょっと!」
矢吹君も先生の手を取って、ペロリと血を舐めた。
「ふわぁ!」
……矢吹君もモフモフ度が上がった。
ジャンプしてみたら2メートルくらい飛んだ。
さすが山羊…ジャンプ力がえげつない。
3人は半分パニックだ。
「な、なんなん、なんなんこれ」
「え、え、どゆこと!?」
「か、かっしー、お前も舐めてみって、これ」
小田君は先生の手を勝手に樫原君の前にやる。
「いたたた」
確かに美味しそうな匂い……
樫原君も…ペロリ、と舐めてみる。
「う…はぁ!?」
樫原君のモフモフ度ももちろん…急上昇だ。
ジャンプ…しようとしたら、うっかりバク宙。
さすが猫科…
「やっべえ、何これ何これ」
「わ、わかんね、でもめっちゃやべぇ」
獣人3人組は、高原先生を見つめた。
「そ、そんな見られても、僕にもわからないよ…」
そこへサッカー部の顧問が駆けてきた。
「何やっとるか!!」
「せんせ、これ、せんせの、やべえ」
「高原先生も!ウチの邪魔せんでください!」
「ちげえって、すげえんだって」
「喧しい!さっさと部室へ行かんか!」
獣人3人組がスゴスゴと部室へ行く。
サッカー部の顧問は高原先生を睨みつけ、
「練習場所を取られた嫌がらせですか?
弱小は弱小らしく、大人しく潰れときゃ良かったんですよ、それをこれみよがしに…。
ったく、これだからオカマは」
「お、おかま?」
「みんな言ってますよ、あんたは男と付き合ってるオカマ野郎だってね!毎週毎週お迎えだなんて、子どもの教育に悪いんですよ!とっととこの学校から出てってもらえますか?ウチの部員に手を出す前にね!」
「お、おむかえ?」
「何しらばっくれてんですか?
最近見ないんで、別れたのか知りませんけど、学校で男漁るようなマネせんでください!」
「……え、えと、あの、僕は、」
別に男漁りしてるわけでもないし、誰ともお付き合いしたことないし、童貞…だ…し、あ…あれ…?
「あ、そうか…」
「何ですか!?」
「レイプ…されてたんだった、僕」
「……は?」
「毎週、脅されて、レイプされてたんです」
「……は、はい?」
サッカー部の顧問は目が点になった。
急に何を言い出すやら…
しかし、高原先生の様子は、明らかにおかしい。
目が……虚ろだ。
「よく、覚えてないんですけど、刑事さんがそう言ってて。無理に思い出すなって、言われて、だから、思い出さなかったんです」
「は、はあ」
「おもい、ださなかったん、です、けど」
高原先生は、泣き声も上げずに涙を溢した。
「ぼくが、わるいんでしょうか」
「そ、そんな、いや、言い過ぎました」
「ぼく、先生に、なりたかった、だけで、それが、わるいことなんで、しょうか」
虚ろな目が顧問を見る。
顧問は薄暗い恐怖を感じた。
「せ、先生、悪かった、私が悪かった」
「ぼ、く、、わ、た、し、は」
「……!せ、先生!?高原先生!?」
高原先生は、その場で気を失った。
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