飼い猫はご主人を食べる

紫蘇

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箱庭でのせいかつ

山に行ってみる

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鶏舎を僕とフクとスミで眺める。

「結構な数だね」
「とりあえず30羽いるんだ、そのうち雄は1羽」
「あ、あの鶏冠トサカが立派なやつ…。
 何だかハーレムみたいだね」
「雄は卵を産まないから、1羽いればいいからね」

だから雄鶏は、いい感じの大きさまで育てて食べちゃうらしい。
ヒヨコのうちに選別して箱詰めにして、圧死させたり酸欠死させたりするよりは人道的なのかな…?

これからはより有り難く頂こう…。

「餌やりはボタンの仕事だから、ご主人がやりたくなった時には声を掛けてくれ」
「うん、分かった」

そういえばボタン、どこへ行ったのかな。
謝らないと…その、お風呂のときの事とか、色々。

「ねえフク、この時間ってボタンは何してるの?」
「ああ、多分畑に…」
「行ってくる!」

僕は畑へ走った。
ボタンの姿が見えた。
「ボタン!」

するとボタンはまた姿を消した。
「ボタン!?」

もしかしたら畑のどこかへ隠れたのかも。
僕は畑の畝を1つずつ見て回った。
何個目かの畝で黒いしっぽが見えた。
「ボタン!」

するとまた姿が見えなくなった。
僕はまた別の畝を探して回った。
「ボタン、ボタンってば!」

恥ずかしくて逃げてるのかな。
それとも構われたくない気分なのかな。
僕を嫌いに…なったのかな。

「ボタン…ごめんね」

畑の中にはもういないみたい。
田んぼは隠れる所がないから、あっちの…山の方に隠れたのかな。

「行ってみよう」

多分、迷う事はない。
何故かそんな確信があって僕は山へと足を向けた。

***

「ボタン~!」
僕は声を上げながら山を歩く。
畑から随分歩いたけど、距離はそれほど離れていないはず…
ボタンを探すために、ジグザグに進んでいるから。

「おーい、ボタン~!」
畑から離れていないとは言っても、もうそろそろ帰らないと日が暮れる。
フクとスミが心配するかもしれないし、あと少し探したら引き返そう。

「ボ~タン~!」
それほど鬱蒼としていない里山は、人が手を入れている証拠だ。
だれがここを整えていたんだろう…
それとも最初からこの姿でここにあるのかな。
どっちにしろ、この風景を作るのに相当の力を使ったはず…

こんな僕のために、どうしてここまでしてくれるんだろう…猫神様の思し召しだろうか。

あれ、そういえば、この山…

「…あの神社がある場所に、似てる気がする」

もしかしたら、あの神社もあるかもしれない。
そうだ、向こうの世界とこっちの世界を繋ぐ何かがあってもおかしくない…

あれ、でも。

「僕、あっちに帰ったら、どうなるんだろう」

45歳で死ぬ予定だったって聞いたから、やっぱり死ぬのかな…。
僕は何となく足を止めて、周りを見た。
ここから先は、何だか雰囲気が…

「ご主人!だめだ!!こっちに戻って!!」
「あっ…ボタン!?」

後ろからの声に僕は振り向いた。
ボタンがいた!

「ボタン!」
「ご主人!!」

僕は、ボタンをようやく捕まえる事が出来て、気が抜けたのか…ボタンの…腕の…中で、きゅ、激、…眠…

「う…ん」
「ご主人!!」


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