弟子と師匠と下剋上?

紫蘇

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第三章/家と土地

住むところは大事

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僕はここへ来て初めて家の外へ出た。

瘴気の森になる前は農村だったと言うこの場所には、廃墟がいくつかあり、割れてはいるけどガラスと、さびてはいるけど鉄でできた農機具があった。

「集めて再利用できれば良いんだけどな…」

いっそ一番大きな家を再生する事も考えるけど、話し合って決めた家のサイズと合う家が無い。

「何だかんだ、お屋敷を建てようとしてるもんな」

住人はいないけど一応領主様なわけだし…
一応格好だけは整えておきたいところ。

「廃墟も潰して更地にしたほうがいいな」

移り住んでくる人もいないだろうけど、近くの街道と屋敷を繋ぐ道は整備したほうが良さそうだ。
そうしないと、周りから忘れられるのが早くなって、また瘴気の森に逆戻りしちゃう。

「ともあれ、まずはガラスと鉄くずを集めるところからだな」

僕は最も原型を留めている廃墟に侵入して使えそうな道具を拝借してから、資材の素を集め始めた。

***

ガラスの欠片をたっぷり集め、そろそろ鉄くず集めに掛かろうとした頃、ようやくエルデ君が戻ってきた。

「タビト~!戻りました」
「お帰りエルデ君、何か分かった?」
「はい、勅書の写しを貰ってきました」

エルデ君はズボンのポケットから1枚の書類を出して言った。

「ええと、この土地を貰った時の記録によると、ここがまた瘴気の森にならないようにする事が義務みたいです」
「他には?」
「特に書いていないと思うんですが…」

エルデ君ひとりに任せておくのはどうにも不安で、僕はその写しを見せてもらう事にした。

「うん…確かにそう書いてあるね。
 ということは、この領地の端から端まで、常に監視してなきゃいけないって事か」
「そうなんですか?」
「うん、結構広いから、大変だと思うけど…
 そうだね、領地を24に分けて、転移魔法で毎日1ヶ所見回りに行く感じでいいんじゃない?
 ただ、転移するために位置を特定できる何がしかの工夫はいると思うけど」
「なるほど…転移魔法があるから簡単に治められるという事ですか」
「まあ、見回りに人を雇わなくてもいい「かも」くらいかな…整備は大変だよ?」

この場合、見回りに精霊の力を借りられない。
瘴気の森は「人の居ない場所」に出来るのだ。
そこに精霊のいるいないは関係ない。

「お互い休みの日に少しずつ進めていけるように計画を練らなくちゃ。
 まあ、まずは家から順番だけど…出勤の時間だから、今日はここまでだね」
「もうそんな時間…。
 そういえば、役場が開いたのもついさっきでした」
「役場が8時からで良かったね」
「そうですね」

転移魔法は本当に便利だ。
一度行ったところなら数秒で行けてしまう。

「エルデ君、今日も送って貰っていいかな」
「もちろんですよタビト。
 <時空の精霊よ、この場とタビトの寮室の間の距離を取り去りたまえ>」


・・・・・・


あっという間に学校に着く。

「次の休みに家を作ってしまいたいから、今日の晩は間取り図を考えようね」
「はい、タビト」
「入れたい家具があったらサイズ計っておいてね」
「はい」
「それと、領地を貰った時の勅書、原本もちゃんと探してね」
「はい」

休みまでに、少しずつ窓のガラスを作り始めようかな…。

「そういえば、妊娠したのをまだ報告してないや」

僕もエルデ君の事言ってる場合じゃないな…

休み時間にフェルディナンド校長と相談しよう。


ーーーーーーーーーーーーーー

某ウイルスの襲撃により、後遺症が発生。
異様に疲れやすくなり、正直毎日更新が厳しくなってまいりました。
誠に申し訳ないのですが、この先もし不定期更新になりましても何卒ご容赦くださいませ。
宜しくお願い致します。
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