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向かえ!大団円

連行される俺

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東へ進路を取って、ほんの5分程だった。

「…鳥?」

一羽の鳥…キュナスという魔物が、俺の横を並走飛行し始めた。
キュナスは魔物の中でも大人しい部類で、大きさは鳩ぐらいの非常によく見る魔物だ。
ほぼ「鳥」といって差し支えない。

そのキュナスが、一羽…また一羽と、俺に並走し始めた。
何か俺にして欲しい事があるのかな…と考えながら一緒に飛んでいると、さらに一羽のガルーダがやってきて、俺を追い越して群れの先頭に立った。

ガルーダはそこそこ危険な鳥だ。
ボディが少し人間っぽくて、キュナスの10倍ほどの大きさで、きりもみ回転で鋭い羽根とカマイタチを飛ばして攻撃してくるし突撃もしてくる。

「クォーーン」

そのガルーダはまるで俺に「ついて来い」と言うように一鳴きし、飛ぶ速度を上げた。
ついて行っていいものか迷う…

「そっちに何かあるの?」
「キューイ」
「俺に何か用があるの?」
「キューイ」

人間の言葉が分かるのかは謎だが、とりあえず問いかけには答えてくれる…
という事は「敵意が無い」という事なんじゃないだろうか?

俺はさらに意思疎通を図れるかガルーダに言ってみた。

「そろそろみんなが心配するからさぁ、帰ってもいいかなぁ」
「ブブー」
「暗くなるから、帰りたいんだけど」
「ブブー」

どうやら人間の言葉を理解しているらしい。
いや、理解できる個体らしい…と言っておこう。
全部のガルーダがこうなのか分からんしな。

「クォーーン」
「はいはい、着いて行けばいいのね?」
「キューイ」
「早めに帰してね」
「ブキュー」
「どっちの返事なのそれは…」

とにかく、行ってみるしかない。
俺は黙ってガルーダの後ろを飛び続ける。
日が沈んで辺りは暗くなってきたけど、仕方ない。

だって、全員殺して帰るなんて出来ないもん。

「ねえまだ飛ぶの?」
「ブブー」
「そろそろつくの?」
「キューイ」

どうやらそろそろ目的地らしい。
「キューイ」がYESで「ブブー」がNOなら、だけど…。


******


…どうしよう。
俺、とんでもない事に巻き込まれたのかもしれない。

そう思ったのは、ガルーダに付いて地面に降りた直後だった。

《よく来てくれましたね、人の子よ》
《妻よ、こいつは我が兄を倒した男の息子だぞ!》

ガルーダの案内で、連れて来られたのは森の中に開いた大きな縦穴だった。
さすがにこの深さの穴には飛び込めないな…と思っていたら、ガルーダにポイと突き落とされて…
必死で何とか着地して。

そしたらさ…
目の前にさ…
竜がいるのよ…
しかも、7頭いるのよ…
希少な種族じゃなかったんか?

《希少だとも!お前の父親のせいで、一人減ったしな》
「はっ、申し訳ありませんっっ!!」


今、竜に、頭の中に直接語り掛けられている。

《あなた……今はどうか我慢して》
《兄は死んだが俺は死なんぞ!》
《我慢しろっつってんだろうが!!》
《ハイッスイマセン》

そう、竜。
東の竜、最も竜らしい竜。
そして人間と意思疎通を図れる個体…

いや、2人分聞こえるしな…
東の竜は人とお話できるのがデフォなんかな。
ところで、親父がこの竜のお兄さんを倒したって…まじ?

《まじだぞ!まあ兄貴も悪いんだ、当時ちょっと荒れてて、人間は皆殺しだ~!!って言ってたしサ…》
《旦那は少し黙っていなさい》
《ハイッスイマセン》

どうやら俺の頭の中も多少覗ける模様。
そして奥様に頭が上がらない旦那様…
竜って仲良し夫婦なんだな。

しかし、どう思考したものを読み取ってどう思考したものは読み取らないのかが分からん。
ここは思い切って声を掛けてみよう…

「そのー…お、奥様?ご用件をお伺…」
《そう!あなた、卵に回復魔法をかけたのよね?》
「えっ、えー…あ、あの、南東の…」

どうやら、鳥の魔物の卵に回復魔法をかけてから返した話がここまで伝わっているらしい。
そういえばあの後の卵は無事に孵ったのかな…
いや、さすがにまだ生まれるには早い…

《どの卵も、みんなとても元気よ。
 順調に育ってるわ、親元から随分長い時間引き離されていたのに…ね》
「本当ですか!?…良かったぁあ~~!」

奥様竜からお聞きするに、どうやら卵にも回復魔法は一定の効果があったらしい。
治癒じゃなくて回復を選んで良かった…

《だから私の卵にも、お願いしたいの》
「えっ…卵?何かあったんですか!?」
《この前から、少し元気が無いの…》
「すぐ見せてください!!」

どうやら、奥様の卵に何かあったらしい。
これほど大きな魔物が次世代を育てられないと、何か良くない事が起きる気がする…!

「俺にどこまでの事ができるか分かりません。
 でも、全力でやってみます…!」

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