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向かえ!大団円

森にお帰り!

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馬車庫の中にあった荷馬車には、やっぱり大量の卵が積まれていた。

鳥の魔物たちが目を覚まさないうちに、みんなで馬車を村の外まで運び、領軍の兵士さんの手も借りつつ、平原に中身の卵を並べていく…

「よくもまあ、これだけの卵を集めたもんだ」
「このデカイのがグリフォンだろうな」
「多分な!後はどれがどれか分からん」
「まあ、親鳥たちには見分けが付くんだろう…付くよな?」
「さあ知らん!確かめた事無えし」

ヨークさんに吹っ飛ばされた魔物はいつの間にかいなくなっていた。
きっと森に戻ったんだろう…

途中で隠してきた第9騎士団の人たちが見つかりませんように!

「念のために、全部に回復魔法をかけておこうかな…」
「そうだな、持ち帰ってやっぱり駄目でしたとなったら困るもんな」

俺は卵にちくちく回復魔法を掛けながら考えた。
これが無事に終わったら、もう一回東の石碑まで行ってみなきゃ駄目だな。
応急処置が甘かった可能性もあるし…。

「さて、これで最後だ。
 後は鳥どもがどう動くか、だな」
「ふむ…ところで、東の竜は来そうにないな?」
「だな、せっかくビゼーが来てくれたのに」

そう言えばヨークさんが『東の竜を倒した事ある人を呼んだ』って言ってたな。
それってビゼーさんの事…あ、ルーシャおじさんとグラノールおじさんもか。
とはいえ、竜まで出てきたらとてもこんな余裕ができたとは思えないし…

うん、出て来なくて良かった。

「いやいや、竜の事はついでだ。
 バレン・ロフィーシュとその部下共を捕縛して、王都へ連行せよというのが本来の任務でな」
「あっ、そうか!」

そうだった、ここにバレンがいるかもしれないんだった。
すっかり忘れてた…
腹が裂けて死にかけたせいかな。

「おいおいまさか、一人でか?」
「そんな訳がなかろう!仲間たちは昨日の夜に南東の農場を出て、こちらへ向かっている。
 私だけ少々先に箒で送って貰ったという事だ」
「ってことは、第30騎士団か?」

ビゼーさんは今も現役の騎士だ。
第27騎士団長を辞めた後も、第30騎士団っていう一線を辞した騎士たちから構成される騎士団に所属している。

主に後進の指導だったり各地の自警団を指導したりする団で、オーセンの大改革の時に新設された新しい騎士団…とはいえ、全員が40~60代。

何だか少々不安な気もしなくはない…
いや剣の腕とかの話じゃなくて。
ほら、歳とると涙もろくなったりするじゃん?
そんなん異能の餌食じゃないの?

「ふむ…しかし『人生経験が豊富な者が良い』とダリル殿下が仰るのでな。
 なので、ここを暫く頼めるだろうか?
 私は村に戻って、バレン一派を探す…もう逃げてしまったかもしれんが」
「ああ、分かった」

ということで、ビゼーさんは村の方へ。
交代する様にヨークさんがこちらへやって来て…

「鳥の魔物が目を覚まし始めたぞ~」

と言った。

***

目を覚ました鳥たちは、一羽、また一羽と平原にやってきた。
領軍の皆様と俺たちは息を潜めてそれを見ていた。

やがて、一羽の鳥が卵を抱き込み、そっとその上に座った。

「…もしかして、持ち運べないのか?」
「しまった、その可能性は考えて無かった」

どうしよう、こんなとこで子育て始まっちゃったら…
と、思った矢先。

「おい、静かに!」

次から次へと、鳥たちが卵の元へ舞い降り始めた。
そして最後に…一番大きい卵が、残され…

「あ…!」

最初の鳥が、卵を抱えて、静かに飛び立ち…
それに追随するように、他の鳥たちも卵を抱えて、静かに…
卵が落ちても割れないぐらいの低空飛行で、森の方へと進んで行く。

「成功だ…!」
「やった!」

鳥の魔物たちはこの場から飛び去った。
棲み処へ帰るのか、それともどこか別の場所まで行って卵を温めるのか…
できれば森まで行ってもらいたいけど…

「…魔物って結界の外へ出られるんですかね?」
「ああ、森に帰るのにか?そりゃ出来るだろ…
 多分」
「多分!?」

これは急いで結界境界線まで戻った方が良いのでは…
と思ったその時。

「…っ、グリフォンだ…!」

最後に残った大きな卵の元に、親鳥が舞い降り…
温めるように抱き込んで、そして…

「くるるぅ…」

卵に、話しかけるように鳴き…

「キュン」

と嬉しそうな声を上げたかと思うと、他の鳥たちと同じ様に卵を抱き抱えて飛んだ。
ヨークさんが言った。

「…やっぱグリフォンも低空飛行か…」
「途中の村で騒ぎにならなきゃ良いですけどね…」
「どうにかして、付いてった方が良さそうだな」
「…そうですね」

バレンの事はビゼーさんに任せよう。
俺がチョロチョロしても役に立つことは無さそうだしな。

「…ヨークさん、まだ魔力残ってます?」
「いやぁ、それが…」
「ですよねぇ」

そう言った俺ももう魔力が無い。
飴玉も残ってないし…

「かくなる上は、あれだ」
「あれ?」
「…あれだよ、あれ」

ヨークさんの指差した方向には、さっきまでおじさん達が乗っていた馬が2頭、のんびり草を食べていた。

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