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本気のざまぁを見せてやる!
魔術師は結婚を断りたい 10
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ようやく東端の町に着き、病院に行っていつもの確認をしつつ重病人や重症者を治療する。
この村には鉱山で働く人が多くて、病人より怪我人が多い。
「…指が…!元に戻った!」
「ええまあ、生まれつき生えていたものは治せるんですよ」
「生まれつき生えていた…?」
「ええ、生まれつき無い方もいますから…」
「そうか…俺、生えてて良かった!」
落ちてきた岩で手を挟んだり足を挟んだり、転んだ拍子に道具が体に刺さったり…
鉱山労働は危険と隣り合わせだ。
だから、大怪我をした時用にってあの飴を売り込みに来てても良さそうなもんなんだけど…
「ここにも転売被害者はいないんだよな…」
やっぱり王都から離れると被害は格段に減る。
お金を持ってそうな人がいないからか、飴の知名度が低くてまともに取り合ってもらえないのか…
って、それはさておき。
「この方で最後ですか?」
「はい…結界の外で見つかりまして、魔物に襲われたのか片足を失っておりまして…。
発見された時には、この状態だったそうです」
「なるほど…分かりました」
この人は、何かの用で結界の外に出ていたところを事故に見舞われたらしい。
偶然王都から派遣された第9騎士団が、石碑周辺を警戒している時に発見したんだって。
「…良く、生きてましたね」
「ええ、本当に」
足の怪我の具合から見るに、止血は魔法を使ってしたみたいだけど…
途中で魔力が尽きちゃったのかな。
ずっと意識を失ったまま寝ているという事だから、頭を打ったのかもしれない。
「ご家族の方は?」
「いえ、町の住人ではなく、外から石碑を見学に来た学生さんではないかと」
「へえ、学生さんか…随分勉強熱心な方ですねぇ」
俺なんか見学とか考えたこと無かったもんな。
親父の作った物は親父に聞いた方が早いから。
「まずは体の怪我から治しましょうか」
「お願いします」
直接脳のダメージを治すのは骨が折れる。
それこそ自己治癒魔法が一番確実で安全だ。
もし体のダメージを癒して目が覚めるようなら、それからのほうが良い。
「…有りし時に…現状、回復、再生、治癒」
人間本来の回復力に、魔力でブーストを掛ける。
人の体内には元々魔力が流れているから、その流れに寄り添うように魔力を足していく…
少しずつ、千切れた足が再形成されていく。
不思議な世界だ…人間の再生力がこれほど高いなんて、前世じゃ考えられない。
「…何度見ても、すごいですね」
「そうですね、欠損部位が元に戻るなんて、本当に魔法みたいですよね」
まあ、魔法なんだけどね。
回復魔法も攻撃魔法も一括りで「魔法」っていうのも不思議だな…と思う。
「ひとまずはこれで…。
明日まで目が覚めないようなら、また来ます」
「分かりました」
今日は石碑のチェックにも行かなきゃいけないし、これ以上魔力は使えない。
早く行かないと日も暮れちゃうしな…。
「それにしても鉱山か…」
この世界には魔法がある代わりに火薬が無い。
だから鉱石を掘るのは手掘りが主流だ。
相当の重労働だから、それこそ体力回復系の何かを設置するのも良いんじゃないだろうか…。
「…そもそもの仕事が、楽にならないかな」
パワードスーツみたいな…
今考えてる義手や義足の延長に、そういうのが作れたら…専門の人がいても良いかも。
「色々思いついちゃうなぁ…出来るかなぁ」
やっぱり、魔術塔に戻りたいな。
資料も材料も潤沢だし、道具も揃ってるし…
「…ード様、ロンバード様!」
「はっ!?」
声のしたほうを見ると、騎士さんが1人。
「遅いのでお迎えに上がりました」
「あっ、すいません…」
「また考え事ですか?」
「ええ、鉱山ってどういう所なのかな…って」
時間があれば一度見に行ってみよう。
今は石碑が先!
***
迎えに来てくれた騎士さんと一緒に石碑へ向かう。
前回の事もあるので、こういう時は護衛より騎士ってなったみたい…
俺の知らない所で「俺の扱い」がいつの間にか決まっているんだな。
複雑。
「ロンバード様~!お待ちしてました!」
石碑にはすでに騎士団の人が何人か待機していた。
「我々の方で確認致しましたところ、やはり根本に傷が入っておりました」
「やはりですか…」
俺は魔力集積回路が刻まれたプレートに触れてみる。
「ぱっと見、異常は無さそうだけど…」
プレートに掛けられた強化魔法には異常が無い…これが石碑そのものを守るように、回路を書き替えたらどうなんだろう。後で親父に提案してみるか…。
「では、回路の確認に入ります」
俺は北端でやったのと同じ様に、回路に少しだけ魔力を流してみる。
「…う~ん」
結界自体にほころびは見られない。
それは北端の村でも同じだった。
魔力が広い範囲で濃くなっている場所を選んで建てられているから、ぶっちゃけ半径3m程度のズレは許容範囲内なのだ。
「やっぱいいとこ選んで建て…………ん?」
変だな。
この石碑、北のと何か違う…
「何が違うんだろう…うーん…」
もう少しよく調べてみるか。
違和感をほっとくと大変な目に合うからな…。
この村には鉱山で働く人が多くて、病人より怪我人が多い。
「…指が…!元に戻った!」
「ええまあ、生まれつき生えていたものは治せるんですよ」
「生まれつき生えていた…?」
「ええ、生まれつき無い方もいますから…」
「そうか…俺、生えてて良かった!」
落ちてきた岩で手を挟んだり足を挟んだり、転んだ拍子に道具が体に刺さったり…
鉱山労働は危険と隣り合わせだ。
だから、大怪我をした時用にってあの飴を売り込みに来てても良さそうなもんなんだけど…
「ここにも転売被害者はいないんだよな…」
やっぱり王都から離れると被害は格段に減る。
お金を持ってそうな人がいないからか、飴の知名度が低くてまともに取り合ってもらえないのか…
って、それはさておき。
「この方で最後ですか?」
「はい…結界の外で見つかりまして、魔物に襲われたのか片足を失っておりまして…。
発見された時には、この状態だったそうです」
「なるほど…分かりました」
この人は、何かの用で結界の外に出ていたところを事故に見舞われたらしい。
偶然王都から派遣された第9騎士団が、石碑周辺を警戒している時に発見したんだって。
「…良く、生きてましたね」
「ええ、本当に」
足の怪我の具合から見るに、止血は魔法を使ってしたみたいだけど…
途中で魔力が尽きちゃったのかな。
ずっと意識を失ったまま寝ているという事だから、頭を打ったのかもしれない。
「ご家族の方は?」
「いえ、町の住人ではなく、外から石碑を見学に来た学生さんではないかと」
「へえ、学生さんか…随分勉強熱心な方ですねぇ」
俺なんか見学とか考えたこと無かったもんな。
親父の作った物は親父に聞いた方が早いから。
「まずは体の怪我から治しましょうか」
「お願いします」
直接脳のダメージを治すのは骨が折れる。
それこそ自己治癒魔法が一番確実で安全だ。
もし体のダメージを癒して目が覚めるようなら、それからのほうが良い。
「…有りし時に…現状、回復、再生、治癒」
人間本来の回復力に、魔力でブーストを掛ける。
人の体内には元々魔力が流れているから、その流れに寄り添うように魔力を足していく…
少しずつ、千切れた足が再形成されていく。
不思議な世界だ…人間の再生力がこれほど高いなんて、前世じゃ考えられない。
「…何度見ても、すごいですね」
「そうですね、欠損部位が元に戻るなんて、本当に魔法みたいですよね」
まあ、魔法なんだけどね。
回復魔法も攻撃魔法も一括りで「魔法」っていうのも不思議だな…と思う。
「ひとまずはこれで…。
明日まで目が覚めないようなら、また来ます」
「分かりました」
今日は石碑のチェックにも行かなきゃいけないし、これ以上魔力は使えない。
早く行かないと日も暮れちゃうしな…。
「それにしても鉱山か…」
この世界には魔法がある代わりに火薬が無い。
だから鉱石を掘るのは手掘りが主流だ。
相当の重労働だから、それこそ体力回復系の何かを設置するのも良いんじゃないだろうか…。
「…そもそもの仕事が、楽にならないかな」
パワードスーツみたいな…
今考えてる義手や義足の延長に、そういうのが作れたら…専門の人がいても良いかも。
「色々思いついちゃうなぁ…出来るかなぁ」
やっぱり、魔術塔に戻りたいな。
資料も材料も潤沢だし、道具も揃ってるし…
「…ード様、ロンバード様!」
「はっ!?」
声のしたほうを見ると、騎士さんが1人。
「遅いのでお迎えに上がりました」
「あっ、すいません…」
「また考え事ですか?」
「ええ、鉱山ってどういう所なのかな…って」
時間があれば一度見に行ってみよう。
今は石碑が先!
***
迎えに来てくれた騎士さんと一緒に石碑へ向かう。
前回の事もあるので、こういう時は護衛より騎士ってなったみたい…
俺の知らない所で「俺の扱い」がいつの間にか決まっているんだな。
複雑。
「ロンバード様~!お待ちしてました!」
石碑にはすでに騎士団の人が何人か待機していた。
「我々の方で確認致しましたところ、やはり根本に傷が入っておりました」
「やはりですか…」
俺は魔力集積回路が刻まれたプレートに触れてみる。
「ぱっと見、異常は無さそうだけど…」
プレートに掛けられた強化魔法には異常が無い…これが石碑そのものを守るように、回路を書き替えたらどうなんだろう。後で親父に提案してみるか…。
「では、回路の確認に入ります」
俺は北端でやったのと同じ様に、回路に少しだけ魔力を流してみる。
「…う~ん」
結界自体にほころびは見られない。
それは北端の村でも同じだった。
魔力が広い範囲で濃くなっている場所を選んで建てられているから、ぶっちゃけ半径3m程度のズレは許容範囲内なのだ。
「やっぱいいとこ選んで建て…………ん?」
変だな。
この石碑、北のと何か違う…
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