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【過去ばなし】チート魔術師とチャラ男令息
【おまけのおまけ】パパとギゼルと私 ~カリーナ様視点~
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ギゼル殿とメルバの婚約が成った次の日、パパは朝からギゼル殿と寮の庭で箒に跨っていた。
「…何をしてるんだ?」
二人とも真剣な顔で、箒を股に挟んでぴょんぴょん…
不思議な光景。
あんまり気になるものだから、近くまで行って様子を覗う。
「そう、自分の重心の真下に風の渦を作るんだ」
「うむ…こうか?」
「そう、もうちょっと強く…風で自分を浮き上がらせる感覚で!」
「分かっ、た…!」
強い風がこっちまで吹き付ける。
その風に負けないように、大きな声でギゼル殿がパパに言う。
「OK!その感覚だ!!
軽く地面を蹴って!軽くだぞ、軽く!」
「お、おう……おう!?」
するとパパが箒に跨ったままふわり、と浮いた。
すごい…!!
「OK!その状態をキープするんだ!」
「お、おおお…!!」
「下ばっか見たら崩れる!姿勢だ姿勢、重心ずらさない!」
「ぐうう…」
「いいぞ!OK、OK!」
パパは浮いたままの姿勢を必死で維持してる。
平衡感覚を保つ訓練…か?
それにしても、パパのあの大きな体を風で浮かせようなんて…相当な魔力がいるぞ。
あっ、パパ、危ない!
左右にグラグラしてる、落ちる!!
きゃっ!?
「うおっ…と、ふぅ…これは、大変だ」
「ああ、だが慣れれば魔力の消費も抑えられる」
…ああ、良かった。
まったく、いい歳して何やってんだ…
こけて骨でも折ったら、って、それはギゼル殿が治してくれるのか…
はは、心配して損した。
何とか着地したパパにギゼル殿が言う。
「これを思いっきり蹴って上空へ上がって、そこからは斜め上を意識して前へ進む…この箒の穂から風が出るようになってるから、これで方向をコントロールする」
「こんとろーる…つまり舟で言えば、これが舵…だな?」
「そうそう、さすが理解が早い」
こんとろーる、おーけー、きーぷ。
時々ギゼル殿はこの国の言葉でない言葉を使う。
ご両親のどちらかが異国出身だったのだろうか…
もう知るすべがないのが悔やまれる。
ちなみに「パパ」もギゼル殿が言った異国の言葉だ。
幼い頃に聞いた時、その響きが可愛くて気に入ってしまったんだ。
パパも特別な呼び方で呼ばれるのが嬉しいみたいで、パパって呼べって言ってるしね。
ギゼル殿とパパの話は続いてる。
私は耳を澄ませてそれを聞く。
「落ちた、と思ったらこの紐を引け。
落下の衝撃が和らぐように、風で自分を包んでくれる魔法がこのベルトに仕込んである」
「という事は、この箒と腰布が無ければ空は飛べん、という事か?」
ん?『空は飛べん』…?
えっ、それってつまり、飛べるって事!?
私も空を飛んでみたい!
ギゼル殿に頼めば教えてくれるのかしら?
私程度の魔力でも出来るのかしら?
もっとよく話を聞かなきゃ…
私は二人のおしゃべりに集中する。
「さすがセーユ殿、話が早い」
「…いくらだ」
「金はいらん、その代わり前回世話になった分をこれでチャラにしてくれ」
ん?前回…?
それって、陸で魔物が増えすぎたって騒ぎになった時の…?
だがあの時は近隣領からの避難民を受け入れたのと、船をあちこちに出したのと、何人か助っ人を…
うん、結構やってたな。
でもその礼は国かその領の領主がする事で、ギゼル殿がする事じゃないし…
パパとギゼル殿の間で何かあったのかな。
私の知らない所で…
うん、後で必ず聞いておこう。
「は…はは!なるほど、借りを返そうという事だな?
有難い…だが、これを追加で頼みたいんだ」
「ああ、いくつ入り用だ…と言いたいところだが、今用意できるのは3セットだけなんだ。
命のかかる事だから手伝いも信用のあるやつにしか頼めないし、そんな奴もいないし」
「そうか…なら、そいつから用意する。
人選は任せろ」
「本当か?有難いな」
人を送ってくれるんなら安くしとく…とギゼル殿。
それにしても3、せっと…せっと?
3組、って事?
じゃあ…
「私の分もあるのか!?」
「カリーナ!?」
もうじっと聞いてなんていられない。
空を飛べたら、リブリー様と一緒にいつでも海へ行ける!
「なあギゼル殿、これは二人乗りできるか!?」
「いや二人乗りは…今のところ、作ってないんだ」
なんだ、残念…と、あからさまにがっかりする姿を見せると、パパが言った。
「どうしたカリーナ、パパと一緒に乗りたいのか?
よしギゼル、金は出す。作ってくれ」
えっ、私、パパと乗るの!?
一瞬そう思ったけれど、反論する間も与えずギゼル殿が言う。
「金はともかく、先に人を寄越してくれ。
元々材料費はそこまでかからないんだが、とにかく手間がな…」
「分かった、信頼できる職人を5人ほど送る。
魔法は使えた方が良いよな?」
「もちろんだ、だがそんな人材を5人も…大丈夫なのか?」
「心配ない、川を下ってうちに逃げてきた民間魔術師は山ほどいる」
「マジで?すげえ…有難い」
そうやって、私が何か言う前に、パパとギゼル殿の間で話が決まってしまう…
嫌よ!
私は自分の力で空を飛びたいの!
後でギゼル殿に直談判してやらなきゃ…!!
「…何をしてるんだ?」
二人とも真剣な顔で、箒を股に挟んでぴょんぴょん…
不思議な光景。
あんまり気になるものだから、近くまで行って様子を覗う。
「そう、自分の重心の真下に風の渦を作るんだ」
「うむ…こうか?」
「そう、もうちょっと強く…風で自分を浮き上がらせる感覚で!」
「分かっ、た…!」
強い風がこっちまで吹き付ける。
その風に負けないように、大きな声でギゼル殿がパパに言う。
「OK!その感覚だ!!
軽く地面を蹴って!軽くだぞ、軽く!」
「お、おう……おう!?」
するとパパが箒に跨ったままふわり、と浮いた。
すごい…!!
「OK!その状態をキープするんだ!」
「お、おおお…!!」
「下ばっか見たら崩れる!姿勢だ姿勢、重心ずらさない!」
「ぐうう…」
「いいぞ!OK、OK!」
パパは浮いたままの姿勢を必死で維持してる。
平衡感覚を保つ訓練…か?
それにしても、パパのあの大きな体を風で浮かせようなんて…相当な魔力がいるぞ。
あっ、パパ、危ない!
左右にグラグラしてる、落ちる!!
きゃっ!?
「うおっ…と、ふぅ…これは、大変だ」
「ああ、だが慣れれば魔力の消費も抑えられる」
…ああ、良かった。
まったく、いい歳して何やってんだ…
こけて骨でも折ったら、って、それはギゼル殿が治してくれるのか…
はは、心配して損した。
何とか着地したパパにギゼル殿が言う。
「これを思いっきり蹴って上空へ上がって、そこからは斜め上を意識して前へ進む…この箒の穂から風が出るようになってるから、これで方向をコントロールする」
「こんとろーる…つまり舟で言えば、これが舵…だな?」
「そうそう、さすが理解が早い」
こんとろーる、おーけー、きーぷ。
時々ギゼル殿はこの国の言葉でない言葉を使う。
ご両親のどちらかが異国出身だったのだろうか…
もう知るすべがないのが悔やまれる。
ちなみに「パパ」もギゼル殿が言った異国の言葉だ。
幼い頃に聞いた時、その響きが可愛くて気に入ってしまったんだ。
パパも特別な呼び方で呼ばれるのが嬉しいみたいで、パパって呼べって言ってるしね。
ギゼル殿とパパの話は続いてる。
私は耳を澄ませてそれを聞く。
「落ちた、と思ったらこの紐を引け。
落下の衝撃が和らぐように、風で自分を包んでくれる魔法がこのベルトに仕込んである」
「という事は、この箒と腰布が無ければ空は飛べん、という事か?」
ん?『空は飛べん』…?
えっ、それってつまり、飛べるって事!?
私も空を飛んでみたい!
ギゼル殿に頼めば教えてくれるのかしら?
私程度の魔力でも出来るのかしら?
もっとよく話を聞かなきゃ…
私は二人のおしゃべりに集中する。
「さすがセーユ殿、話が早い」
「…いくらだ」
「金はいらん、その代わり前回世話になった分をこれでチャラにしてくれ」
ん?前回…?
それって、陸で魔物が増えすぎたって騒ぎになった時の…?
だがあの時は近隣領からの避難民を受け入れたのと、船をあちこちに出したのと、何人か助っ人を…
うん、結構やってたな。
でもその礼は国かその領の領主がする事で、ギゼル殿がする事じゃないし…
パパとギゼル殿の間で何かあったのかな。
私の知らない所で…
うん、後で必ず聞いておこう。
「は…はは!なるほど、借りを返そうという事だな?
有難い…だが、これを追加で頼みたいんだ」
「ああ、いくつ入り用だ…と言いたいところだが、今用意できるのは3セットだけなんだ。
命のかかる事だから手伝いも信用のあるやつにしか頼めないし、そんな奴もいないし」
「そうか…なら、そいつから用意する。
人選は任せろ」
「本当か?有難いな」
人を送ってくれるんなら安くしとく…とギゼル殿。
それにしても3、せっと…せっと?
3組、って事?
じゃあ…
「私の分もあるのか!?」
「カリーナ!?」
もうじっと聞いてなんていられない。
空を飛べたら、リブリー様と一緒にいつでも海へ行ける!
「なあギゼル殿、これは二人乗りできるか!?」
「いや二人乗りは…今のところ、作ってないんだ」
なんだ、残念…と、あからさまにがっかりする姿を見せると、パパが言った。
「どうしたカリーナ、パパと一緒に乗りたいのか?
よしギゼル、金は出す。作ってくれ」
えっ、私、パパと乗るの!?
一瞬そう思ったけれど、反論する間も与えずギゼル殿が言う。
「金はともかく、先に人を寄越してくれ。
元々材料費はそこまでかからないんだが、とにかく手間がな…」
「分かった、信頼できる職人を5人ほど送る。
魔法は使えた方が良いよな?」
「もちろんだ、だがそんな人材を5人も…大丈夫なのか?」
「心配ない、川を下ってうちに逃げてきた民間魔術師は山ほどいる」
「マジで?すげえ…有難い」
そうやって、私が何か言う前に、パパとギゼル殿の間で話が決まってしまう…
嫌よ!
私は自分の力で空を飛びたいの!
後でギゼル殿に直談判してやらなきゃ…!!
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