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ざまぁなど知らぬ!

おやのきもち ~ギゼル視点~

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この前から、長男の様子がおかしい。
いや、次男の様子もおかしいんだが、その理由がどうやら、長男…の、ようで。

「…ロンバード、お前、何かあったのか」
「えっなんもないよう?」
「最近おかしいぞ」
「おかしくないよう?」

いやいや、魔術塔に来ておきながら、俺の姿を見て逃げるなんておかしいだろ。
身重の人間を振り回すなんて、そんな子に育てた覚えは無いんだが?

「…親に嘘をつくんじゃない」
「う…うるさい!なんもないって言ってるだろ!
 このバカ親父っ!!」

そう言うと、ロンバードは走ってどこかへ行ってしまった。
俺にあんな暴言を吐いた事なんか一度も無かったのに…!

「何てことだ…」

ロンバードが反抗期を迎えてしまった。
前世でだって無かったのに!!

もしかしたら、年の離れた弟が生まれる事に反発しているのかもしれない…
セジュールの時に何も無かったから、油断していた。

「ちゃんと、子どもたちの心をケアしなきゃ…」

良い父親かと聞かれたら、自信は無い。
ロンバードの時もセジュールの時も、肝心な事はメルバと保育士に任せっぱなしで…。

「今更かもしれないけど、ちゃんと2人と話をしよう」

そうだ、たまにはこちらから会いに行こう。
ロンバードもセジュールも、親の七光りだなんてもう言われないだけの実力を身に着けた。
俺が姿を見せたところで、何も揺らぐものは無い…はず。

「…よし」

善は急げ、だ。
今から学生寮に行ってみよう…


・・・・・・


と、いうわけで学生寮に乗り込んだ俺は、セジュールの言葉に茫然とした。

「だから最近、お兄様がダリル様の部屋に入り浸って、僕と一緒に寝てくれないんですっ!!」
「せっ…セジュール、それはどういう…」

いや、分かってはいた。
セジュールがロンバードに向ける思慕がやや度を越している事は。
って、そういう事じゃない。

「国際会議の準備だとか言って、魔法の道具作りに没頭してるのはまだしも、貴族名鑑を完璧にだなんて、そんなの僕がいれば良い事なのにっ!!」
「それは…………確かに、そうだな」

殆ど覚えていない俺でも、そういう事が完璧なメルバが隣にいればどんな夜会でも乗り切れる。
ダンスも、ただ身を任せていればいいだけだし…

うんうん、と頷く俺にセジュールは更に訴える。

「きっとお兄様は、殿下に大人の階段を登らされてしまったのです……。
 結婚してからだって、あんなに言ってたのに!」


!!!


「せ、ジュール…それは……、……確かなのか」
「絶対そうです!お兄様が朝からお風呂に入るなんて、それしか考えられませんっ。
 今日だって夕食を食べてすぐ殿下のお部屋に…。
 お父様、お兄様を取り返してください!!」
「……分かった、あとは父さんに任せなさい」

あの野郎…婚前交渉禁止の約束を、何だと……!

くそ……辛そうだからと、条件を緩めてやったのが間違いだった。
もう許さん!うちに連れて帰る!!

俺は怒りで頭がいっぱいになったまま、子どもたちの部屋を出た。
部屋の周りには寮生たちが詰めかけていた。
俺はそいつらに聞いた。

「…ダリルの部屋は、どこだ」
「こちらです、大魔術師殿」

一人の男が前に出て、部屋まで案内するというのでついていく。
彼の顔…どこかで…

「火山の件、お世話になりました」
「ああ、それはロンバードとルーシャ軍曹が」
「ロンバード殿から、局長殿のご助力があってこそだとお聞きしました」
「…そうでしたか」

その言葉がきっかけになったのか、後ろからついてきた寮生たちも口々に感謝の言葉を述べ始めた。

腕輪の話、種の開発の話、その他魔法の道具の話…

中でも「魔法の手紙」への称賛が目立つな。
一般販売した途端に売り切れ、増産しても増産しても足りなくなる魔法の手紙…
いつの間にか世界に流れていったのか。

「……うちの息子は、優秀だな」
「ええ、それはもう…我が国ではロンバード殿に関する事は最優先事項となっております」
「そりゃまたすごい」

実はあの手紙に使われている「場所を特定する」技術…俺が実現させようとしている転移魔法にも取り入れているんだ。
ということは、転移魔法は国外でも通用するってことだ。
うんうん…

はっ、ほっこりしてる場合じゃない。
今はダリルの野郎からロンバードを取り返す事に集中せねば。

俺は再度頭の中で怒りを再燃させる。

あのクソ王子め…
ブチ殺してやる!!

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