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ざまぁしやがれください!
話がでかい!
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外務大臣は俺を見るや否や、その体格に見合わない速度でこっちへやってきた。
「ロンバード殿、遅いですぞ」
「いや授業が…っていうか、何でこちらに?」
「あなたが学生寮…つまり留学生の皆様に会う可能性がある場合、必ず外交官を伴って頂くことになりまして。
本日はその外交官のご紹介がてら…」
「えええええ」
やだ、大事になってきた!
「だから、今後は気を付けますって…」
「だまらっしゃい!!
既にこういう事態を引き起こしておられるでしょうが!!」
外務大臣は俺をチクチク説教しはじめた。
こうなると止まらないんだよな…
俺は、なぜか俺の背後に隠れたニールに囁いた。
「ごめんニール、先行って」
「…そうだね。話長そうだもん、この人」
ニールは俺の後ろを通って、寮へ入ろうとした。
すると、外務大臣が叫んだ。
「っ!ああ!?ニール殿下…っ!?」
は?でんか?
俺は慌ててニールの顔を見る。
ニールは無表情で言う。
「いいえ人違いです」
すると、外務大臣は青い顔になって頭を下げる。
「は、申し訳ありません、人違いで御座いました!
すみません、このようなお見苦しい所を…」
いや、どう見てもこれは人違いとかじゃ…
ん?ニールが?でんか?どゆこと?
俺は軽くパニック状態だ。
ニールが冷たく大臣に言い放つ。
「…お見苦しいと思うんなら止めれば?
あんたの説教の時間、勿体無いんだけど」
「は、ははっ…!」
あ、あれ?ニールのほうが大臣より偉いの…?
でんかって、殿下…?
「…行こ、ロンバード」
「お、お…おう」
あれ、俺これ、タメ口聞いて良いのか…?
「…ふふっ、ロンバード、全部顔に出てるよ」
「はえっ」
「いつも通りで良いよ。
ロンバードまで敬語になったら、僕発狂しちゃう」
「そ…そう?じゃあ、普通だな」
「うん、普通でいいよ。
そうしないとあのおじさんの首が物理的に飛んじゃうから」
「えええええ」
ぶ、物理的って……まじ、で……?
俺は外務大臣の顔を見た。
彼は真っ青を通り越して、真っ白な顔をしていた…。
***
真っ白な外務大臣に連れられて、俺の卒業まで学生寮に詰めるという外交官のおじいさんに挨拶をし、その後寮監さんに魔法飴を渡しつつ謝罪し、さらにその後。
「待ちわびたぞ、ロンバード君」
「あ、レドモンド君…どうしたの?」
去年同じクラスだったレドモンド君に会った。
彼は剣ダコの目立つ手で俺の手を取り、騎士みたいにキスをしてから言った。
「この度は腕輪の話を快諾頂き、恐悦至極」
「あ、うん、どういたしまして」
レドモンド君はアデア王国の出身で、俺と同い年…見た目は完全に大人な男性なんだけど。
更にどこからどうみても立派な騎士様なので、あらゆる仕草が様になるんだよね…。
毎度毎度、ちょっぴりドキッとしてしまう。
そんなレドモンド君が俺の手を引きながら言う。
「ところで、その腕輪の事なんだが…。
どの程度の金額になるか、早めに概算を出したいんだ」
「そうなの?えーと、レドモンド君の要望は『防寒』だったよね…」
俺はポケットの中のメモを探って取り出す。
「えっと、1本につきホノカセキを10個、エンダイト5個…」
「ふむふむ…そのメモ、貰っても?」
「あ、いや、ちゃんと書き直すよ。
ちゃんと書面作れって言われてるから」
「いや、書面はこちらで作る。
そんな雑事より腕輪を優先して…」
すると、廊下の向こうからまた知った顔がやってきた。
黒目黒髪、実に落ち着くカラーリングの彼は、レドモンド君の肩を叩いて言った。
「抜け駆け禁止でしょう?スフィーリアさん」
「なんだカナデか」
「なんだ、ではありませんよスフィーリアさん。
なんですかその手と、先ほどのキスは」
彼はカナデ・レンギョウ君。
大陸も海も越えた向こうの島国、サラシナ国の出身で、すらっとした長身のミステリアス美男子だ。
「俺の国の風習だ、気にするな」
「それは親しい間柄の、でしょう?」
「俺とロンバードは親しい間柄だ、問題ない」
「親しき中にも礼儀あり、では?」
サラシナ国は前世の日本とちょっと似ていて、奥ゆかしめの文化だ。
挨拶は基本お辞儀だし、箸を使って飯を食う。
主食も当然米だ。
俺の今行きたい国No.1。
「ところで、カナデ君。
サラシナ国の要望は『防湿』だよね」
「うん、うちジメジメしてるから…水害も多いし」
本当は防暑も防寒も防風も全部欲しい、とカナデ君。
「そういえばニールさん、ドラーク帝国の要望は何です?」
「ああ、うちの国は『通話』だよ。
集落と集落の間に谷や森があったりして行き来が大変だからさ」
「へえ、それも良いなぁ…」
するとレドモンド君がその話に反応して、とんでもない事を言いだす。
「ふむ…確かに、どの国が依頼した物も欲しくなるな。
どうだろう?いっそ材料を各国から格安で輸入出来るようにし、完成品を手頃な価格で輸出してもらうというのは」
「えっ、話が大きすぎるよレドモンド君…!」
それ、通商交渉の場でする話じゃん。
学生同士で決める話じゃ無さ過ぎるでしょ…!
「ロンバード殿、遅いですぞ」
「いや授業が…っていうか、何でこちらに?」
「あなたが学生寮…つまり留学生の皆様に会う可能性がある場合、必ず外交官を伴って頂くことになりまして。
本日はその外交官のご紹介がてら…」
「えええええ」
やだ、大事になってきた!
「だから、今後は気を付けますって…」
「だまらっしゃい!!
既にこういう事態を引き起こしておられるでしょうが!!」
外務大臣は俺をチクチク説教しはじめた。
こうなると止まらないんだよな…
俺は、なぜか俺の背後に隠れたニールに囁いた。
「ごめんニール、先行って」
「…そうだね。話長そうだもん、この人」
ニールは俺の後ろを通って、寮へ入ろうとした。
すると、外務大臣が叫んだ。
「っ!ああ!?ニール殿下…っ!?」
は?でんか?
俺は慌ててニールの顔を見る。
ニールは無表情で言う。
「いいえ人違いです」
すると、外務大臣は青い顔になって頭を下げる。
「は、申し訳ありません、人違いで御座いました!
すみません、このようなお見苦しい所を…」
いや、どう見てもこれは人違いとかじゃ…
ん?ニールが?でんか?どゆこと?
俺は軽くパニック状態だ。
ニールが冷たく大臣に言い放つ。
「…お見苦しいと思うんなら止めれば?
あんたの説教の時間、勿体無いんだけど」
「は、ははっ…!」
あ、あれ?ニールのほうが大臣より偉いの…?
でんかって、殿下…?
「…行こ、ロンバード」
「お、お…おう」
あれ、俺これ、タメ口聞いて良いのか…?
「…ふふっ、ロンバード、全部顔に出てるよ」
「はえっ」
「いつも通りで良いよ。
ロンバードまで敬語になったら、僕発狂しちゃう」
「そ…そう?じゃあ、普通だな」
「うん、普通でいいよ。
そうしないとあのおじさんの首が物理的に飛んじゃうから」
「えええええ」
ぶ、物理的って……まじ、で……?
俺は外務大臣の顔を見た。
彼は真っ青を通り越して、真っ白な顔をしていた…。
***
真っ白な外務大臣に連れられて、俺の卒業まで学生寮に詰めるという外交官のおじいさんに挨拶をし、その後寮監さんに魔法飴を渡しつつ謝罪し、さらにその後。
「待ちわびたぞ、ロンバード君」
「あ、レドモンド君…どうしたの?」
去年同じクラスだったレドモンド君に会った。
彼は剣ダコの目立つ手で俺の手を取り、騎士みたいにキスをしてから言った。
「この度は腕輪の話を快諾頂き、恐悦至極」
「あ、うん、どういたしまして」
レドモンド君はアデア王国の出身で、俺と同い年…見た目は完全に大人な男性なんだけど。
更にどこからどうみても立派な騎士様なので、あらゆる仕草が様になるんだよね…。
毎度毎度、ちょっぴりドキッとしてしまう。
そんなレドモンド君が俺の手を引きながら言う。
「ところで、その腕輪の事なんだが…。
どの程度の金額になるか、早めに概算を出したいんだ」
「そうなの?えーと、レドモンド君の要望は『防寒』だったよね…」
俺はポケットの中のメモを探って取り出す。
「えっと、1本につきホノカセキを10個、エンダイト5個…」
「ふむふむ…そのメモ、貰っても?」
「あ、いや、ちゃんと書き直すよ。
ちゃんと書面作れって言われてるから」
「いや、書面はこちらで作る。
そんな雑事より腕輪を優先して…」
すると、廊下の向こうからまた知った顔がやってきた。
黒目黒髪、実に落ち着くカラーリングの彼は、レドモンド君の肩を叩いて言った。
「抜け駆け禁止でしょう?スフィーリアさん」
「なんだカナデか」
「なんだ、ではありませんよスフィーリアさん。
なんですかその手と、先ほどのキスは」
彼はカナデ・レンギョウ君。
大陸も海も越えた向こうの島国、サラシナ国の出身で、すらっとした長身のミステリアス美男子だ。
「俺の国の風習だ、気にするな」
「それは親しい間柄の、でしょう?」
「俺とロンバードは親しい間柄だ、問題ない」
「親しき中にも礼儀あり、では?」
サラシナ国は前世の日本とちょっと似ていて、奥ゆかしめの文化だ。
挨拶は基本お辞儀だし、箸を使って飯を食う。
主食も当然米だ。
俺の今行きたい国No.1。
「ところで、カナデ君。
サラシナ国の要望は『防湿』だよね」
「うん、うちジメジメしてるから…水害も多いし」
本当は防暑も防寒も防風も全部欲しい、とカナデ君。
「そういえばニールさん、ドラーク帝国の要望は何です?」
「ああ、うちの国は『通話』だよ。
集落と集落の間に谷や森があったりして行き来が大変だからさ」
「へえ、それも良いなぁ…」
するとレドモンド君がその話に反応して、とんでもない事を言いだす。
「ふむ…確かに、どの国が依頼した物も欲しくなるな。
どうだろう?いっそ材料を各国から格安で輸入出来るようにし、完成品を手頃な価格で輸出してもらうというのは」
「えっ、話が大きすぎるよレドモンド君…!」
それ、通商交渉の場でする話じゃん。
学生同士で決める話じゃ無さ過ぎるでしょ…!
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