別にこいつとは付き合ってませんけど？

恋人同士になる試練

南の祠 ６

俺は自分の考えを語り切った。
ミシェルは困惑気味に俺の顔を見た。

きっと戸惑ってるんだ、あんまりにも突拍子が無いうえに、取っ散らかってるから。

「シゲル、今の話…マキタ様とは？」
「ううん、まだしてない。
　ミシェルが一番最初」
「…そうか」
「だからあまり上手く纏まってないんだ。
　思いつく限りの事話しただけだから…」

すると、ミシェルは微かに微笑んだ。
それから俺に聞いた。

「…私との恋愛は、義務？」
「…義務じゃないよ、今は」
「前は義務だった？」
「うん…分かんない。
　ただ、いつも不安になるんだ。
　義務で仕方なく恋愛してるのか、本当に好きなのかって。
　いつもミシェルはあいつらと違うんだって、あんな連中と比べて…確かめてる。
　……ごめん」

人と比べちゃいけないって分かってる。
でもいちいち比べてしまう。
それから自分の心を疑う。
義務で恋愛していないか、気持ちが付いて来ているか、心変わりしていないか。

ミシェルの事が、好きか。

キスも、その先も、したいと思えるか。

「…俺、ずっと自分の気持ちを疑ってる。
　ミシェルの事好きだって即答できなくて、ごめん」

俺はやっぱり小さな声で謝る。
するとミシェルが聞く。

「私からの愛は疑わないのか？」
「疑いようがないからね」
「どうして？」
「…いっぱい嫉妬してるの、知ってるから…かな」
「では、嫉妬したままでも良いのか？」
「うん…意地悪で、ごめん」

いちいちに嫉妬するミシェルを見て、どこか安心してる自分がいる。
嫉妬させたいわけじゃないけど、それでも…。

申し訳なくて、ミシェルの顔を見られない。
どんな顔をしていいか分からない。
そんな俺の手をそっとミシェルが握って言う。

「謝らなくて良い」
「でも…」
「シゲルに私の気持ちが伝わっているのなら、それが何より嬉しい。
　シゲルが不安になるなら、毎日キスするたびに愛していると言…うのは、もうしているし、風呂は…毎日入れるわけでは無いし、宿、は…シゲルを休ませなければいけないし…」
「…ふふっ、ふふふ」
「何故笑う」
「ミシェルが俺の事、一生懸命考えてくれるのが嬉しくて」
「…そうか？」

ミシェルがはにかむ。
それを素直に可愛いと思う。
そうして、今日も理解する。

「…こうやって、それを嬉しいと思えるのは、俺がミシェルの事を好きだから…だよね？」
「！、ああ、そうだ、その通りだ！！」
「ふふっ…良かった」

俺はミシェルが好きだ。
これは義務じゃないってはっきり言える。

…今のところは。

でも、それで良いのかもしれない。
そうやって毎日自分の気持ちを考える事が、俺の恋愛の仕方なんだって…
いつかは開き直れる気がする。

「ね、ミシェル。
　……しよっか」
「っ、ああ」

どちらからともなく、じゃなくて、俺からちゃんとミシェルを誘う。
ちゃんと俺にも、ミシェルとそういうことしたいって欲があるって伝えなきゃ。

「ミシェル、キスして？」
「うん」

ミシェルの綺麗な顔が迫ってくる。
俺はそっと目を閉じて、その唇を待…

あっ！

「ごめんミシェル、ちょっと待って！」
「どうした、シゲル」

やばい、風呂で尻の中洗うの、忘れてた…！

「ごめん、あの棒、取って来るから…」
「いや、もう持ってきているが？」
「！？」

…ミシェルはそう言うと、そっと神様洗浄棒を取り出して見せた。

「私はいつでもシゲルを抱きたいから…
　こういう事は、怠らないんだ」
「！！」

そういって改めて俺の唇にキスをする。

「…シゲルが欲しい。
　囲って隠して、独り占めしたい…
　そのくらい…いや、もっともっと…
　愛している」

強烈な愛の言葉に、今日もミシェルの言葉を信じていいのだと思わせられる。

だから俺も信じよう、自分の気持ちを…。