別にこいつとは付き合ってませんけど？

恋人同士になる試練

事の顛末 ～ハイドさん視点～

ああ、思い出すだけで腹が立つ！

転移陣とかいうのでバンデリンへ着いたら敵に囲まれてるし。

その敵が味方になって、城に行ったらまた敵がいるし。

寝込んでる王のとこまでたどり着いて、
マルコが一生懸命治癒して、
王様の目が開いたと思ったら、
隠し部屋から女が現れて、
マルコを刺したんだ！

深く刺さる前に止めたし、王の治癒が直前にだけど終わってたから、マルコは自分で自分を治して事なきを得た…けど。

女は王妃様だったから、半殺しにも出来ないし。

その上部屋の窓から羽の生えた奴が入って来て、
そいつも殴り落としたら今度は猿が何匹も入ってきてそれを窓から投げ捨てたりして、
そうこうしてるうちに部屋の外でヴァン何とかが斬られたとかで、
そんでマルコが王様も王妃様も連れて一旦トラネキサムに逃げるって言うから部屋から出て、
ついでにマルコがヴァン何とかを治癒して…。

そしたらマルコが倒れた。
自分の治癒をギリギリにして魔法を温存したのに、それをあのヴァン何とかに使ったから！

……あいつ、マルコに惚れたかもしれない。
だから二度と会わせない事にする。

「それに、服毒の治癒だからって、他の奴の口に指、入れた…」

治癒だから仕方ないって思ったけど、
無意識だからって言ってたけど、
王の奴、マルコの指、舐めやがった…！

だからちゃんと消毒しないといけないのに、マルコは寝てるし。
もしかしたら１ヶ月近く寝込むかもって…
だから俺はマルコと一緒にいなきゃいけないのに、あのクソ童貞が「駄目だ」って言う。

でもシゲル様は、俺の代わりになる人がいれば代わってもらって、って言ってくれた。
セレスもいなくなるし、戦力としては相当落ちるけど、王都からお使いの人も来てるから相談してくれるって。

優しい。

その代わり、マルコが目覚めたら絶対合流してって。
ちゃんと終わらないと結婚できないでしょ、って…

優しい！

一生信仰しよう。


「しかし、これからどうなるんだろう…」

セレスもマルコも、俺も抜けたら…半分。
何とかマルコの目が覚めたら良いんだけど。

リゲル殿の部下たちじゃ、魔物化する可能性もある。
獣人は魔法が使えない人間よりずっと強いのに、闇の力には弱いなんて盲点だったな。

「だからこの国には獣人がいないのか…」

この国は他の国より闇の力が溜まりやすい。
祠は他の国から闇の力が流れ込んでくるのを押しとどめる為にあるんだって聞いたことがある。
だから、その溜まった闇の力を定期的に浄化しないと、この国は闇の力でいっぱいになってしまう。
そしたら、他の国で出た闇の力はどこにも行けずに溜まり続けて、色んなものが魔物になって…

世界が滅ぶんだって、聞いた。

「…俺は、どうしたら…」

代わりが見つかればいいけど、俺の次に強いのはマキシマ団長だし。
セレスの代わりだって多分赤鷲のヘレナ団長だ。
マルコの代わりは…緑風の、副団長か？

そうなったら王都は誰が守る？

「困った…」

意外と自分の代わりっていないもんだな。

「困ったなあ」

セレスが、約束通り３日で帰ってきてくれたら…
いや、帰って来なかったら、俺がセレスを迎えに行って、面倒なのをブチ殺して、終わりにしてやる。

「上手くやってくれよ、王子様」

でないと俺が血の雨を降らせに行くからな。
覚悟しとけ！