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恋人同士になる試練

外周の祠3つ目 2 ~トモアキ視点~

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シゲルが浄化した部屋は綺麗なもんで、魔物の姿はもちろん、魔物になる前の生き物の姿も無い。

「その辺の隙間に逃げ込んでるのかもしれないな…」
「部屋を一通り調べますか?」
「ああ、頼む」

…やっぱシゲルには、あの光景はキツすぎたか。
一瞬目を離した隙に…いや、俺がまだ、シゲルに充分戦えることを分かって貰えていない事もある。

シゲルは俺やみんなを、魔物すらも守ろうとしたんだろう…
なまじ力を持っただけに、素直に守られてくれなくなった。

光の力が俺にも使えたらな…
でも、そうなるとシゲルの立場が悪くなる。
これがベストの布陣…そう考えよう。

シゲルはまだ寝ている。
そばで心配そうに毛布を掛けたり頭を撫でたりしているトライデントに声をかける。

「……上はどうなった、トラさん」
「分からん、だが倒した魔物は…浄化されて、小さくなった」
「通路は通れる状態か?」
「いや、まだ魔物は出る。
 扉の中までは光が入らない…浄化できていない」
「…ならシゲが起きるまでこの部屋で待機だな」

部屋一つ一つの浄化が必要になる。
シゲルには負担を掛けるが…これも仕方がない。
俺の親友は日程の遅れを気にするだろう…何でも自分のせいだと思い込む癖がなかなか抜けなくて困る。

「倒しても倒しても湧いて出て来る。
 階段を塞ぐほどの大きな魔物はあのトカゲ一匹だったが…羽虫、蝙蝠、蛾、蜘蛛…数が多い」

風で一気に押し切ろうと魔法を使ったが、潰しても潰しても湧いて出るそうだ。
あのトカゲの大きさなら、日頃相当量の虫を食ってるはずだが…それでその量、まだいるのか…?
それとも小さいのが闇の力であれほど膨らんだ?
どっちだ。

「あれ、元はどのくらいのサイズなん?」
「トカゲにしては相当の大きさです。
 私の腕くらいでしょうか」
「ハイドの腕じゃあ相当だな」

ってことは、あのトカゲは外部から持ち込まれた可能性がある。
あの魔物自体が罠…という事だ。
そして俺たちは罠にかかったという訳か。

「…やはり下からの方が良かったか」
「今更言っても仕方がない、休憩したら下へ降りてやり直しだ」
「……そうだな」

どうやら一気に上がって下っていくのは間違いらしい。
下から順番にやるのが神のご意志ってこったな。

「階段の浄化が終わってるのは救いだな…
 セトさん、部屋の中だけ焼き尽くす魔法、あと何回行けそう?」
「あと10回は大丈夫でしょう、それほど大きく魔力を使う訳では無いですから」

効果範囲が狭くて済むから、見た目ほど消費しませんよ…とセトさん。
確かに部屋の中に光を放った時のシゲルはそれほど消耗してなかったな…

なら再開後の作戦は
①扉開ける→②魔法→③確認→④浄化
…で行けそうだ。

「…各部屋の浄化はシゲじゃないと出来ない。
 こうなったのは俺の責任だ、すまん」
「いえ、マキタ様のおかげで退避場所が出来たのです。
 そのおかげで、シゲル様にも安全にお休み頂けますし、全員の怪我を完治させる事も出来ました」
「そう言ってもらえると救われる…
 しかし、マルちゃんの治癒もなかなかだな」
「この力だけで団長になりましたからね」
「嘘つけ、剣の腕も相当じゃないか」

ははは…
少しだけ笑いが戻る。
全員が落ち着いてきた証拠だ…もう大丈夫。

だが、トライデントだけは笑っていない。
シゲルが心配でたまらないんだろう…団長の責務を俺に乗っ取られているのにも気づかない。

だが、今のこいつの仕事はシゲルを守る事だ。
それに集中して貰った方がいい。
シゲルに何かあったら俺は…。
だって、こうして倒れてるのを見るのも…辛い。

トライデントが言う。

「だが暴走後に光の力を使ったら、シゲルは…」

分かってる。
正直、シゲルの身体への負担は増すだろう。
それでも、シゲルの心に負担が掛かるよりましだ。

「大丈夫だ、封印の間まで持てば…
 前の祠でシゲから聞いてると思うが、封印の間に入れば後は何日何か月過ごそうがこっちじゃ2時間だ。
 最悪2時間、前室で立て籠もっていれば、完璧に回復したシゲが出て来る。
 みんなには負担をかけて済まないが…」
「マキタ様は、シゲルの事が、」
「心配に決まってるだろ、それでもだ」

シゲルの事を一番分かっているのは俺の方だ。
とはいえ、いつかは俺よりシゲルの事を分かる人間になって貰わないと困るがな。

「当然心配だよ。
 それでも、一旦外に出て明日仕切り直し…は、シゲの心を追い詰める。
 どんな理由を付けても、その理由が出来た原因を自分に求めて、苦しむ」
「…マキタ様、シゲルは」
「あっちの世界で、襲われるたびに相手から『君が悪い』と言われ、周りも『お前が悪い』と言い続けた。
 そのせいで、何でも自分が悪いと思い込む癖がまだ抜けない。
 こっちに来て、まだましになったけどな」

俺や俺の家族も「悪いのは向こうでシゲルじゃない」としつこく言ってきたが、ここまでだ。
それほど周囲の力は強かった。
でも、こっちの世界では…。

「毎日が楽しいから、辛かった過去に蓋が出来るようになってきた。
 辛い思いを強いた連中の事も忘れかけてる…忘れられたら、良いと思う」

さて、そろそろシゲルも目を覚ましそうだ。

「…この話はここまで。」

俺も切り替えていかないとな。

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