別にこいつとは付き合ってませんけど？

聖人様になる旅路

クリスチーヌさんの恋バナ

俺は親友の為に、クリスチーヌさんの恋愛傾向を探る事にした。
まずは最も大事な事から確認しよう。

「あの、クリスチーヌさんって恋人いますか？」
「いえ、今はおりません」
「初恋もまだって事は無いですよね？」
「そうですね、それなりに恋愛はしてきたかと」

表情を変えることなく話すクリスチーヌさん。
過去の恋愛に対しても冷静なのか…さすがだ。

「恋をするきっかけって何ですか？」
「そうですね…何となく気が合う、とか。
　そこから何となく仲が深まる…というような」
「何となく…ですか？
　性格とか、顔とか、決め手みたいなものは？」
「特にありません。
　強いて言えば、私の仕事観を認めてくれる方であれば嬉しいのですが…」

クリスチーヌさんは、毎度恋人に「自分と仕事のどっちか選べ」と言われて、それがきっかけで別れてしまうのだそうだ。

「そう言われたら、急激に冷めてしまって」
「どっちも大切ですもんね…
　出来る限り両立したい気持ちは分かります」

クリスチーヌさんは色々過去の事を思い出したようで、暗い顔になった。

「仕事と恋のどちらかしか選べないものなんでしょうか…」
「うーん…そんな事はないと思いますけど…価値観の差、なのかな…」

神様がああいう人だからか、恋愛に重きをおいてる人が相当多いというか…
なんせ恋愛に関しては全ての障害が取り除かれてるから、傾きがちなのかもしれないけど。

「仕事と恋愛の両立…トモに聞いたら、どう言うかなぁ」

俺はそれとなく呟いた。
それを聞いたクリスチーヌさんが言った。

「…なぜ、マキタ様なのですか？」
「えっ」

俺は聞かせるつもりで言ったはずなのに驚いた。
だって予想もしなかった。
まさかクリスチーヌさんが食いつくなんて…！


もしかしてこれ、良い流れなんじゃないの？


俺はそれとなくクリスチーヌさんにトモアキをおすすめしてみる。

「トモは両親とも仕事をしてる家庭で育ってるからか、そういうのを「両立できるか」じゃなくて「両立させるためにどうするか」って考える人間なんで…解決策を思いつけるかもしれないな、って」
「…そうでしたか」

クリスチーヌさんは少し考え込んで、言った。

「マキタ様は…素敵な方ですしね」
「はい、そりゃもう」

俺はその後も、クリスチーヌさんにトモアキの良さをこれでもかとプレゼンした。

これきっかけでトモアキとクリスチーヌさんが急接近してくれれば…。


俺は心からそう願った。