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受視点

スパダリと休日

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優しく頭を撫でられる感覚がある。


「う、うーん…」

はっ!?
ここどこ!?

「昨日ちょっと飲ませすぎちゃったね、ごめんね」
「はっ、あっ、お、長船課長っ!?」

気がつくとそこは見知らぬ部屋。
そして見知らぬパジャマ…そしてベッド。
ベッドに座ってるスパダリ(多分)。
これは…

「やらかしたっ!?」
「どしたの?」
「すいません!
 俺、うっかり酔いつぶれて…!
 これ、課長のベッドですよね?
 昨日寝れなかったんじゃ…」

俺、昨日ついつい飲み過ぎたんだ。
課長から勧められたからって、飲みなれない日本酒なんか飲むから…!

俺は慌てて謝った。
だけど課長は涼しい顔で言った。

「ああ、大丈夫だよ。
 それは来客用のベッドだからね」
「えっ…」

来客用ベッド?それにしては寝心地が良い気が…
自分ちの煎餅布団と比べるのも申し訳ないけど。

「だから気にせず寝てて?
 もう少ししたら昼だから、また起こしに来るよ」
「いや、さすがに…もう帰ります、すいません!」

俺が慌ててベッドから出ようとすると、課長が俺の手を握って引き留める。
俺は一瞬ドキっとして硬直する。
課長は俺の手を握ったまま言う。

「そう?もう少しいてくれると嬉しいんだけど。
 安田君のぶんのお昼が無駄になっちゃうから」
「えええっ、そんな、昼飯まで!?」

な、なんでそんな事までしてくれるの…?
スパダリだから?スパダリだからなの?

「うん、後30分ほどでご飯が炊けるから、ね」

長船課長は有無を言わせない笑顔で俺に言った。

「お昼を食べたら、家まで送るよ。
 もし体調が悪くなければシャワーしておいで?」
「あっ、はい、すいません」

よく考えたら俺臭いよな…
有難くシャワーお借りしよう。

「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「うん、あとでタオル出しておくよ、ごゆっくり」
「ありがとうございます…
 えっと、シャワーはどちらに…」
「ああ、こっちだよ」

課長は俺に部屋の中を案内してくれた。
リビングは広いし部屋も3つあって、明らかにファミリータイプ…家賃高そう。

「ここがお風呂。こっちがトイレ」
「ありがとうございます」

とにかく申し訳ないからお礼だけは言っておこう。

「ボディソープもシャンプーも遠慮なく使って」
「ありがとうございます!」

課長が台所に行ったのを見届けてから、俺は着ていたパジャマを脱いで畳み、パンツを…

おや?

「パンツ、新しくなってる…?」

も、もしかして、俺、とんでもない粗相を…!?

「どうしよう…!!」

この歳で漏らしたとか、洒落にならないんだけど…!


***


俺はここ最近で一番丁寧に身体を洗い、頭を洗い、軽く掃除してシャワーを出た。
置かれていたタオルで身体を拭いたら、長袖Tシャツとカーゴパンツが置いてあるのに気づいた。
これ着ても良いのかな…と思って手に取ったら、着替えだよ、というメモが落ちた。

「至れり尽くせり…」

広げてみるとかなり大きいので、きっと課長の普段着なんだろう。
タグには某ファストファッションのロゴ…
スパダリは意外にも庶民派だったようだ。
ブランド物とかでなくて良かった。


服を着てリビングに戻ると、課長が台所に立って料理をしていた。鼻歌を歌いながらご機嫌な様子。
俺は勇気を出して、自分の昨日の醜態を確認することにした。

「あの、かちょう…俺、昨日穿いてたパンツ」
「……もしかして、思い出の品だった?」
「いや全然そんなんじゃないんですけど」
「そう?なら良かった!
 大分傷んでたし、汚れてるかなと思って処分しちゃったんだ、ごめんね?」
「あっ、いや、全然いいっす、いつ捨てようか迷ってたくらいで!」

汚れてた…汚れてたのか…それは、捨てるな。
やっぱ漏らした…とか…うおおん!!

「あの、課長、俺…昨日…その」
「大丈夫、吐いたりはしてないよ。
 急に寝ちゃっただけだから…ふふふっ」
「な、何か俺しましたか」
「ううん、大人しく僕の膝枕で寝てたよ」

ひざまくらっ!?

「そ…それは、大変申し訳ありません」
「何で?僕は安田君と仲良くなれたような気がして嬉しかったよ」
「えっ…そうですか?」

どうやらスパダリは、相手を申し訳ない気持ちにさせない気遣いが出来るものらしい。

「さて、お昼にしようか。余り物の野菜で作ったお味噌汁だけど、卵入りだよ」
「わぁ…卵!ありがとうございます」

ちょっと大きなお椀によそわれたお味噌汁は…
ほのかにお出汁の香りがした。

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