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王子様と皇太子殿下 6
皇太子と王子の「本当の処」
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朝おきると、もうエースさんは起きていた。
昨日のこと…怒ってるのかな。
急に1人でするって言ったから…。
エースさんは頼られるのが好きみたい。
だけど、そこにつけ込むのは駄目だ。
これは、自分のためにしなきゃいけないんだ…
「おはよう…ございます」
「あ…あ、おはよう、クロエ」
自分で朝ごはんを用意できるように、昨日ちゃんと考えたんだ。
火打ち石のこっち側をこうやって…布でくるんで、右で固定して、藁はここだから、こうやって…
「儂がやる」
「いえ、昨日考えたので、試してみたいんです」
「…儂がやる、お前は、儂に甘やかされてくれていたら…いいんじゃ」
「でも、1人でできるようにならないと」
「…そうか。…どういうふうに、考えたんじゃ?」
自分は自分の考えを話す。
「…よく、考えついたのう。賢いなクロエ」
急に褒められた。
「…いえ、そんなことは」
エースさんは、もう手を出そうとしてこなかったので、自分で考えた方法を試してみる。
何度かやって…ちゃんと火がついた。
藁を竈門へ持っていく。
薪に、火がちゃんとついた。
「…できた!」
「おお、すごい、やるじゃないか!」
エースさんが一緒に喜んでくれた。
これでお湯を沸かして、お茶を入れられる。
1つ自分でできた!
「クロエ…好きだ、愛してる」
えっ?急に何?
「儂は、クロエのことが好きだ。
愛してる。
だから触りたい。
一緒に気持ちよくなりたいし、一緒に寝たい。
本当はずっとくっついていたい…駄目か?」
もしかして、朝までずっと考えてたのかな…
「儂は、昨日、お前に『1人で寝たい、1人で…したい』って言われて…悲しかった。
こんなことになったのは何でかって…怒って、さっき隣へ怒鳴り込んできたんじゃ…」
「えっ?」
「そうしたら、逆に2人に説教されてしまった。
その…儂は、変なところで格好つけて、お前に誤解されてきたように思う…だから、ちゃんと話をしよう…つまらないかも、しれないがの」
「…はい」
「だから今日は…休みにして、2人で過ごそう」
「…はい、薬草の水やりをしてから、なら」
----------
植物たちの面倒を見たあと、自分とエースさんは向かい合って座った。
エースさんは自分の昔の話をしてくれた。
北の女王陛下が初恋で、それからお兄さんの奥さんに恋したこと、町娘に恋して、色々奮闘して、身分に差があっても結婚できるようにしようとして、それなのにフられて、しかもそれが元でもう一人のお兄さんに謀反の罪を着せられて殺されかけたこと、その時に眷属になったこと。
おまけに、結婚した相手にも、その「身分の差があっても結婚できるようにしたこと」を逆手に取られてフられてしまったこと。
恋愛などもうしないと決めて、この国を変えることに50年をかけ、「死んで」王子を辞めたこと。
それでも、国を守りたい気持ちは変わらなくて、戦が起きる度に軍を指揮するために王子に復帰したり辞めたりしていること。
そうしているうちに、「第3王子」という臨時の役職がこの国に出来てしまったこと。
そして、有事を防ぐためにと、マルーン帝国に「親善大使」としてやってきて、自分を見つけたこと。
「妖精かと、思った」
この国には妖精と呼ばれる存在がいて、それは300年前に一緒に眷属になった子どもたちだそうだ。
自己がまだ確立していなかった子どもたちは、眷属になったとたん人間の形を保てなくなり…羽根が生えたきれいな生き物になってしまったのだと言う。
先生とは時々交流しているようで、学園でごくたまに見かけるそうだ。
「一目で心を奪われて、お前のところに出入りしておった司書に頼みこんで、何とか1日代わってもらえて…司書に姿を変えて、会いに行った。なかなか首を縦に振ってくれんでな、何度も図書館へ押しかけて、頼んだ」
「1日…だけ?」
「いや、その後ずるずると…『約束ができた』とか言うて引き延ばして、通うた…バレておったか」
「その、話の内容と口調が…司書さんとだいぶ違ったので…ふふっ」
「なんじゃ?」
「バレてないと思ってたんですね、今まで」
「……う…、うむ…」
「でも、あのときして頂いたお話は、大変有用でした。おかげで自分は「死の妖精」と呼ばれるまでになりましたから」
「…そうか、それは何よりじゃ」
何だか複雑な顔になるエースさん。
それはそうか、何気なくしたことが他国の軍事力を増強してしまうなんて、軍を統括している者としては迂闊以外の何物でもないもんな。
意外とうっかり屋さん…というか…
「…エースさんは、そういう方なんですね」
「?」
「エースさんは、自分のしたことが自分に悪い形で返って来やすい星回りの人なんだな、と思って」
「…ハハハ…そうじゃなぁ…」
エースさんが、苦笑して、ちょっと落ち込んだ風で、こっちを見る。
「…こんな儂を、どう思う?」
「とても、素敵だと思います」
「……そうかのう?」
「自分は、あなたをずっと肩書で見てきました。「第3王子」であり「王族」であり…「軍略の天才」として…見てきました。
そう考えるのが自然で、それが自分には最良の手段だったからです。
人は肩書に縛られるものだから、人の行動原理は肩書から推測するのが妥当だと思ってきた」
「…うん」
「でも、あなたは肩書に縛られていない…
エースさんはエースさんとして生きている。
肩書に関係なく、「自分の蒔いた種」に躓くけれど、それをひっくり返してしまえる…人だと」
エースさんは照れ臭そうに笑った。
「自分は、あなたをを肩書で見るべき人ではない、と何度も思いはしました。
でも、それを信じるには、経験が足りなくて…何度も疑って、酷い事を言って、あなたを傷つけた」
「…でも、それは」
「最悪のことを常に考えて行動する…「領主」として、「軍を率いるもの」として、国の名を背負う「第2皇太子」として、その経験ばかり積んできて、肩書のある人を肩書で見たときに、起きうる限りで最も悪いことを想定するのが…染みついてしまって、優しくて真っ直ぐなあなたを見ることを否定してきました。
……本当に、申し訳ありませんでした。」
謂れの無い侮蔑をしたことを謝罪する。
そして、ちゃんと、何で1人でしようと思ったのか、言わなくちゃいけない、と思った。
「自分は、ずっと肩書に生かされてきました。
「第2皇太子」だからちゃんとした教育を受けさせて貰えました。
「北の辺境伯」になれました。
「領主」だから皆が慕ってくれました。
「軍を率いるもの」だから領軍はついてきてくれました。それで軍功を挙げることもできました。
使ってきた肩書は、それだけではありません。
「男に抱かれた男」だから「性具」になって…
その肩書まで、自分で何度も利用してきた」
「それは、」
「ただの「自分」では何もできないんです。
「男」にすらなれなくて、それでソラ君の所へ相談に行ったんです。
そしたらロウさんが『自分に自信をつけろ』って言ってくれて…それで、考えたんです。
そしたら、「自分」には何にもないけど、「自分のしてきた事」なら誇れるものがあると思って。
「自分」だけで何ができるんだろう、何にもできないじゃないかって…だから、何も無いんだって。
だから、自分の力だけで1つでも多くの事が出来たら、自分に自信が持てるんじゃないかって。
手伝ってもらわなくても、1人で…1人で「男の機能」を取り戻せたら、自信もつくかなって、思って…
エースさんが自分の事、好きで…甘やかしたいと思ってるのは知ってました。
でも、好意につけ込んでぬくぬくと生きてたんじゃ、駄目になるって。
ずっと、どんな姿になっても、愛してもらえそうな自分になるために、どうしても1人で、やり遂げたかったんです…」
エースさんは、じっと話を聞いていた。
そして、沈黙した。
--自分はちゃんと伝えられただろうか。
「あの日、「あなたのものになる」って、言ったのに、勝手なこと言って…すみません。
でも、あなたのものになれないなら、あなたを自分のものにすることもまた、できないから…依存するのは、やめにしないといけない。でしょ?」
--身勝手な言い分だけど、聞いて貰えるだろうか?
「……儂はな?」
「はい」
「儂はもうとっくに、どんなクロエでも好きだ。
言ってはならぬかもしれんが、右目も右耳も右手も右足もないお前を、初めて見たときと変わらず可愛くてきれいだと思うておるし…小さかったあの頃も、大きくなりかけとる今も、立派な青年になった未来も、常にクロエだから抱きたいと思う。
……クロエが眷属になることを拒んで、歳を取っておじいちゃんになっても、きっとそれは変わらない、…儂の本心としては、今すぐにでもお前を眷属にして、永遠に一緒でいたいと思うが、の」
「……眷属、ですか」
「先生が言うにはじゃな、実年齢と体の年齢が見合わなければ…クロエに良くないことが起きるかもしれんから、それまで待つようにとのことじゃがな…。
儂は今すぐ、クロエを眷属にしてしまいたい。
お前が…望まなくても、な」
エースさんが淡々と話す。
事実をそのまま語るように話す。
「だが、お前が望まないことをしたくないと思う自分も心の中にある。
お互いがちゃんと同意してからのほうが良いのは、当たり前のことじゃし…何より、嫌われたくないしの」
「……はい」
「じゃから、眷属になる決定権はクロエに譲る。
お前が眷属になっても良いと思ったときにする。
ただしクロエに命の危険が迫った時は…儂はお前を失えぬ、だから眷属にする。
だから、自分の命を1番に考えよ…望まぬうちに眷属になりたくなければ、な」
そうして、エースさんはニヤリと笑った。
分かって、くれたのかな…。
エースさんは続けて言った。
「だが、抱きたいという気持ちは譲らぬ。
儂はお前の雫を、誰にも一滴もやりとうない。
だから精通を1人で迎えるのは、無しじゃ。
クロエの最初の露を味わうのは、儂をおいて他に居らぬ、まして風呂で流してしまうなど…ありえぬ」
…えっ。
「今日は1日、休みじゃからの。
たっぷりと…クロエを、味わえるな?」
エースさんの目に、欲情の光が灯る…
昨日のこと…怒ってるのかな。
急に1人でするって言ったから…。
エースさんは頼られるのが好きみたい。
だけど、そこにつけ込むのは駄目だ。
これは、自分のためにしなきゃいけないんだ…
「おはよう…ございます」
「あ…あ、おはよう、クロエ」
自分で朝ごはんを用意できるように、昨日ちゃんと考えたんだ。
火打ち石のこっち側をこうやって…布でくるんで、右で固定して、藁はここだから、こうやって…
「儂がやる」
「いえ、昨日考えたので、試してみたいんです」
「…儂がやる、お前は、儂に甘やかされてくれていたら…いいんじゃ」
「でも、1人でできるようにならないと」
「…そうか。…どういうふうに、考えたんじゃ?」
自分は自分の考えを話す。
「…よく、考えついたのう。賢いなクロエ」
急に褒められた。
「…いえ、そんなことは」
エースさんは、もう手を出そうとしてこなかったので、自分で考えた方法を試してみる。
何度かやって…ちゃんと火がついた。
藁を竈門へ持っていく。
薪に、火がちゃんとついた。
「…できた!」
「おお、すごい、やるじゃないか!」
エースさんが一緒に喜んでくれた。
これでお湯を沸かして、お茶を入れられる。
1つ自分でできた!
「クロエ…好きだ、愛してる」
えっ?急に何?
「儂は、クロエのことが好きだ。
愛してる。
だから触りたい。
一緒に気持ちよくなりたいし、一緒に寝たい。
本当はずっとくっついていたい…駄目か?」
もしかして、朝までずっと考えてたのかな…
「儂は、昨日、お前に『1人で寝たい、1人で…したい』って言われて…悲しかった。
こんなことになったのは何でかって…怒って、さっき隣へ怒鳴り込んできたんじゃ…」
「えっ?」
「そうしたら、逆に2人に説教されてしまった。
その…儂は、変なところで格好つけて、お前に誤解されてきたように思う…だから、ちゃんと話をしよう…つまらないかも、しれないがの」
「…はい」
「だから今日は…休みにして、2人で過ごそう」
「…はい、薬草の水やりをしてから、なら」
----------
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エースさんは自分の昔の話をしてくれた。
北の女王陛下が初恋で、それからお兄さんの奥さんに恋したこと、町娘に恋して、色々奮闘して、身分に差があっても結婚できるようにしようとして、それなのにフられて、しかもそれが元でもう一人のお兄さんに謀反の罪を着せられて殺されかけたこと、その時に眷属になったこと。
おまけに、結婚した相手にも、その「身分の差があっても結婚できるようにしたこと」を逆手に取られてフられてしまったこと。
恋愛などもうしないと決めて、この国を変えることに50年をかけ、「死んで」王子を辞めたこと。
それでも、国を守りたい気持ちは変わらなくて、戦が起きる度に軍を指揮するために王子に復帰したり辞めたりしていること。
そうしているうちに、「第3王子」という臨時の役職がこの国に出来てしまったこと。
そして、有事を防ぐためにと、マルーン帝国に「親善大使」としてやってきて、自分を見つけたこと。
「妖精かと、思った」
この国には妖精と呼ばれる存在がいて、それは300年前に一緒に眷属になった子どもたちだそうだ。
自己がまだ確立していなかった子どもたちは、眷属になったとたん人間の形を保てなくなり…羽根が生えたきれいな生き物になってしまったのだと言う。
先生とは時々交流しているようで、学園でごくたまに見かけるそうだ。
「一目で心を奪われて、お前のところに出入りしておった司書に頼みこんで、何とか1日代わってもらえて…司書に姿を変えて、会いに行った。なかなか首を縦に振ってくれんでな、何度も図書館へ押しかけて、頼んだ」
「1日…だけ?」
「いや、その後ずるずると…『約束ができた』とか言うて引き延ばして、通うた…バレておったか」
「その、話の内容と口調が…司書さんとだいぶ違ったので…ふふっ」
「なんじゃ?」
「バレてないと思ってたんですね、今まで」
「……う…、うむ…」
「でも、あのときして頂いたお話は、大変有用でした。おかげで自分は「死の妖精」と呼ばれるまでになりましたから」
「…そうか、それは何よりじゃ」
何だか複雑な顔になるエースさん。
それはそうか、何気なくしたことが他国の軍事力を増強してしまうなんて、軍を統括している者としては迂闊以外の何物でもないもんな。
意外とうっかり屋さん…というか…
「…エースさんは、そういう方なんですね」
「?」
「エースさんは、自分のしたことが自分に悪い形で返って来やすい星回りの人なんだな、と思って」
「…ハハハ…そうじゃなぁ…」
エースさんが、苦笑して、ちょっと落ち込んだ風で、こっちを見る。
「…こんな儂を、どう思う?」
「とても、素敵だと思います」
「……そうかのう?」
「自分は、あなたをずっと肩書で見てきました。「第3王子」であり「王族」であり…「軍略の天才」として…見てきました。
そう考えるのが自然で、それが自分には最良の手段だったからです。
人は肩書に縛られるものだから、人の行動原理は肩書から推測するのが妥当だと思ってきた」
「…うん」
「でも、あなたは肩書に縛られていない…
エースさんはエースさんとして生きている。
肩書に関係なく、「自分の蒔いた種」に躓くけれど、それをひっくり返してしまえる…人だと」
エースさんは照れ臭そうに笑った。
「自分は、あなたをを肩書で見るべき人ではない、と何度も思いはしました。
でも、それを信じるには、経験が足りなくて…何度も疑って、酷い事を言って、あなたを傷つけた」
「…でも、それは」
「最悪のことを常に考えて行動する…「領主」として、「軍を率いるもの」として、国の名を背負う「第2皇太子」として、その経験ばかり積んできて、肩書のある人を肩書で見たときに、起きうる限りで最も悪いことを想定するのが…染みついてしまって、優しくて真っ直ぐなあなたを見ることを否定してきました。
……本当に、申し訳ありませんでした。」
謂れの無い侮蔑をしたことを謝罪する。
そして、ちゃんと、何で1人でしようと思ったのか、言わなくちゃいけない、と思った。
「自分は、ずっと肩書に生かされてきました。
「第2皇太子」だからちゃんとした教育を受けさせて貰えました。
「北の辺境伯」になれました。
「領主」だから皆が慕ってくれました。
「軍を率いるもの」だから領軍はついてきてくれました。それで軍功を挙げることもできました。
使ってきた肩書は、それだけではありません。
「男に抱かれた男」だから「性具」になって…
その肩書まで、自分で何度も利用してきた」
「それは、」
「ただの「自分」では何もできないんです。
「男」にすらなれなくて、それでソラ君の所へ相談に行ったんです。
そしたらロウさんが『自分に自信をつけろ』って言ってくれて…それで、考えたんです。
そしたら、「自分」には何にもないけど、「自分のしてきた事」なら誇れるものがあると思って。
「自分」だけで何ができるんだろう、何にもできないじゃないかって…だから、何も無いんだって。
だから、自分の力だけで1つでも多くの事が出来たら、自分に自信が持てるんじゃないかって。
手伝ってもらわなくても、1人で…1人で「男の機能」を取り戻せたら、自信もつくかなって、思って…
エースさんが自分の事、好きで…甘やかしたいと思ってるのは知ってました。
でも、好意につけ込んでぬくぬくと生きてたんじゃ、駄目になるって。
ずっと、どんな姿になっても、愛してもらえそうな自分になるために、どうしても1人で、やり遂げたかったんです…」
エースさんは、じっと話を聞いていた。
そして、沈黙した。
--自分はちゃんと伝えられただろうか。
「あの日、「あなたのものになる」って、言ったのに、勝手なこと言って…すみません。
でも、あなたのものになれないなら、あなたを自分のものにすることもまた、できないから…依存するのは、やめにしないといけない。でしょ?」
--身勝手な言い分だけど、聞いて貰えるだろうか?
「……儂はな?」
「はい」
「儂はもうとっくに、どんなクロエでも好きだ。
言ってはならぬかもしれんが、右目も右耳も右手も右足もないお前を、初めて見たときと変わらず可愛くてきれいだと思うておるし…小さかったあの頃も、大きくなりかけとる今も、立派な青年になった未来も、常にクロエだから抱きたいと思う。
……クロエが眷属になることを拒んで、歳を取っておじいちゃんになっても、きっとそれは変わらない、…儂の本心としては、今すぐにでもお前を眷属にして、永遠に一緒でいたいと思うが、の」
「……眷属、ですか」
「先生が言うにはじゃな、実年齢と体の年齢が見合わなければ…クロエに良くないことが起きるかもしれんから、それまで待つようにとのことじゃがな…。
儂は今すぐ、クロエを眷属にしてしまいたい。
お前が…望まなくても、な」
エースさんが淡々と話す。
事実をそのまま語るように話す。
「だが、お前が望まないことをしたくないと思う自分も心の中にある。
お互いがちゃんと同意してからのほうが良いのは、当たり前のことじゃし…何より、嫌われたくないしの」
「……はい」
「じゃから、眷属になる決定権はクロエに譲る。
お前が眷属になっても良いと思ったときにする。
ただしクロエに命の危険が迫った時は…儂はお前を失えぬ、だから眷属にする。
だから、自分の命を1番に考えよ…望まぬうちに眷属になりたくなければ、な」
そうして、エースさんはニヤリと笑った。
分かって、くれたのかな…。
エースさんは続けて言った。
「だが、抱きたいという気持ちは譲らぬ。
儂はお前の雫を、誰にも一滴もやりとうない。
だから精通を1人で迎えるのは、無しじゃ。
クロエの最初の露を味わうのは、儂をおいて他に居らぬ、まして風呂で流してしまうなど…ありえぬ」
…えっ。
「今日は1日、休みじゃからの。
たっぷりと…クロエを、味わえるな?」
エースさんの目に、欲情の光が灯る…
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