上 下
57 / 134
王子様と皇太子殿下 4

王子、皇太子の幼馴染みに嫉妬する

しおりを挟む
今日は久々にクロエと会えることになった。

「~♪~~♪」

帝国もぶっ潰したし、彼奴等はぶっ殺したし、もうこれであとはクロエを儂の伴侶にするだけじゃの。
気分がいいわい。
晴々とした気持ちで、クロエの車椅子を押す。

「最近の調子はどうじゃな」
「はい、汚い字ですが、左でも何とか書けるようになりました」
「それはすごい!で、仕事の方は?」
「まだ始まったばかりで、ご報告できるような成果はありません…
 ですが、今度実際にこの国の一般的な家で薬草を育ててみる実験に参加させて下さるそうです」

ここのところ顔色もいいしの。
なにより表情が明るくなったわい。

ああ、やっぱり、こうやって好きな事の話をしておるときの顔は……


い!!


はっ、いかん。
おかしなところを見せては。
普通の会話に戻ろう…

「お前の部下は、全員は帰らなんだのじゃな」
「はい、何人かは。
 ですが、私の部下もこちらで雇って頂いて…
 彼らが面倒を見てくれるので、助かります。
 こっちに骨を埋めたいというものもおります。
 よっぽどこの国の居心地がいいんでしょう」

うんまあ、こっちにはクロエがおるからだろうの…
北の猟犬共、クロエに四六時中引っ付きおって…
そこまで儂を監視せんでもええと思うがのぉ。

「こうしてみると、品の良い従者のようじゃなぁ」
「ええ、言葉遣いもしっかり学んだようで」

どこで調達したものか、執事服など着よって…
まあ、皇太子には執事位いるのが普通じゃものな。
奴らの思いは分からんでもないが……
まさかここに来て執事とは…はあ。

「ところで、そろそろ義足が出来るころじゃの」
「はい、昨日、合わせてみました。
 もう少し調整したら、届けて下さるそうです。
 早く義足に慣れて…そうすれば、もっと色んなところへ行けます」
「そうか、そうか。
 ならば今度休みの日に、馬で街へ出てみるか?」
「馬ですか?」
「うむ、学園の馬では出来ぬが、儂の馬なら二人で乗っても平気じゃからの。
 ほら、あそこの馬じゃ」
「あれですか?りっぱな軍馬ではありませんか」

ちょっと乗ってみるか、などと誘うと、可愛く頷いたりするもんじゃから、たまらん。
馬のそばへ行く。

「リリ、クロエじゃ。乗せてやってもよいか?」

リリ…儂の愛馬は、頷く。
さすが儂の愛馬、偉いぞ!

「リリ、というのですね、いい名前です。
…かわいいね、リリ。いい子。」

リリを撫でるクロエ。
リリよりクロエのほうが可愛いぞ、と思いながら、まずはクロエを乗せ、儂はその後ろに跨がる。

「ちょっと歩いてみるかの」
「はい」

ポコ、ポコ、ポコ、ポコ……

…ふふ。

成功じゃ!
背中にくっついても嫌がられんぞ!!
恐ろしく順調ではないか…ふふふ。

ポコポコと学園を一周する。
執事服の猟犬が横を歩く。

後ろに着いてきておれば、ちょいと蹴飛ばしてやるのにのう…まあ良い、クロエが背中を預けてくれとるのに免じて許してやるとするか。

馬の上でクロエが言う。

「昔こうやって、友人と二人、馬に乗ったことを思い出します」
「友人…?」
「東の辺境伯にお世話になっていた時からの友人で、彼は騎馬民族出身でしたので、馬を操るのが上手で…よく乗馬の訓練を手伝ってもらっていました」
「ふーん、そうか」

それって、多分、あいつのことじゃな。
ふん、それがどうした。
そんなことで妬いたりは…

「その…その友人が、この国でお世話になっていると、聞きました。…久しぶりに、彼に会いたいのですが…」

ぐううう。
妬かぬ!妬かぬもんね!
儂は大人じゃもんね!
くそ、「会いたい」じゃと…
あいつはまだ、儂より先におるというのか…!
くそっ、腹立つのお!

「…その者は、何という名前かの」

つい苛立って固い声でそう聞いた儂に、クロエが微笑んで言う。

「はい、ソラ、という人です。
 こちらでは「鬼神」といったほうが、通じるかもしれませんが…」

そうして、駄目ですか?と上目遣いでクロエが儂を覗う。

……身長差がかなりあるから、自然にそうなるのじゃろうが……あああ!!!

こんなもん、断れるわけなかろーが!!


「うむ、取り計らおう。
 あちらも予定があろうから、都合を聞いておく」

儂は敗北感の中、そう言うのが精一杯じゃった…。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】薄幸文官志望は嘘をつく

七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。 忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。 学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。 しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー… 認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。 全17話 2/28 番外編を更新しました

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?

下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。 そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。 アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。 公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。 アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。 一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。 これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。 小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

処理中です...