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王子様と皇太子殿下 4
王子、皇太子の幼馴染みに嫉妬する
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今日は久々にクロエと会えることになった。
「~♪~~♪」
帝国もぶっ潰したし、彼奴等はぶっ殺したし、もうこれであとはクロエを儂の伴侶にするだけじゃの。
気分がいいわい。
晴々とした気持ちで、クロエの車椅子を押す。
「最近の調子はどうじゃな」
「はい、汚い字ですが、左でも何とか書けるようになりました」
「それはすごい!で、仕事の方は?」
「まだ始まったばかりで、ご報告できるような成果はありません…
ですが、今度実際にこの国の一般的な家で薬草を育ててみる実験に参加させて下さるそうです」
ここのところ顔色もいいしの。
なにより表情が明るくなったわい。
ああ、やっぱり、こうやって好きな事の話をしておるときの顔は……
愛い!!
はっ、いかん。
おかしなところを見せては。
普通の会話に戻ろう…
「お前の部下は、全員は帰らなんだのじゃな」
「はい、何人かは。
ですが、私の部下もこちらで雇って頂いて…
彼らが面倒を見てくれるので、助かります。
こっちに骨を埋めたいというものもおります。
よっぽどこの国の居心地がいいんでしょう」
うんまあ、こっちにはクロエがおるからだろうの…
北の猟犬共、クロエに四六時中引っ付きおって…
そこまで儂を監視せんでもええと思うがのぉ。
「こうしてみると、品の良い従者のようじゃなぁ」
「ええ、言葉遣いもしっかり学んだようで」
どこで調達したものか、執事服など着よって…
まあ、皇太子には執事位いるのが普通じゃものな。
奴らの思いは分からんでもないが……
まさかここに来て執事とは…はあ。
「ところで、そろそろ義足が出来るころじゃの」
「はい、昨日、合わせてみました。
もう少し調整したら、届けて下さるそうです。
早く義足に慣れて…そうすれば、もっと色んなところへ行けます」
「そうか、そうか。
ならば今度休みの日に、馬で街へ出てみるか?」
「馬ですか?」
「うむ、学園の馬では出来ぬが、儂の馬なら二人で乗っても平気じゃからの。
ほら、あそこの馬じゃ」
「あれですか?りっぱな軍馬ではありませんか」
ちょっと乗ってみるか、などと誘うと、可愛く頷いたりするもんじゃから、たまらん。
馬のそばへ行く。
「リリ、クロエじゃ。乗せてやってもよいか?」
リリ…儂の愛馬は、頷く。
さすが儂の愛馬、偉いぞ!
「リリ、というのですね、いい名前です。
…かわいいね、リリ。いい子。」
リリを撫でるクロエ。
リリよりクロエのほうが可愛いぞ、と思いながら、まずはクロエを乗せ、儂はその後ろに跨がる。
「ちょっと歩いてみるかの」
「はい」
ポコ、ポコ、ポコ、ポコ……
…ふふ。
成功じゃ!
背中にくっついても嫌がられんぞ!!
恐ろしく順調ではないか…ふふふ。
ポコポコと学園を一周する。
執事服の猟犬が横を歩く。
後ろに着いてきておれば、ちょいと蹴飛ばしてやるのにのう…まあ良い、クロエが背中を預けてくれとるのに免じて許してやるとするか。
馬の上でクロエが言う。
「昔こうやって、友人と二人、馬に乗ったことを思い出します」
「友人…?」
「東の辺境伯にお世話になっていた時からの友人で、彼は騎馬民族出身でしたので、馬を操るのが上手で…よく乗馬の訓練を手伝ってもらっていました」
「ふーん、そうか」
それって、多分、あいつのことじゃな。
ふん、それがどうした。
そんなことで妬いたりは…
「その…その友人が、この国でお世話になっていると、聞きました。…久しぶりに、彼に会いたいのですが…」
ぐううう。
妬かぬ!妬かぬもんね!
儂は大人じゃもんね!
くそ、「会いたい」じゃと…
あいつはまだ、儂より先におるというのか…!
くそっ、腹立つのお!
「…その者は、何という名前かの」
つい苛立って固い声でそう聞いた儂に、クロエが微笑んで言う。
「はい、ソラ、という人です。
こちらでは「鬼神」といったほうが、通じるかもしれませんが…」
そうして、駄目ですか?と上目遣いでクロエが儂を覗う。
……身長差がかなりあるから、自然にそうなるのじゃろうが……あああ!!!
こんなもん、断れるわけなかろーが!!
「うむ、取り計らおう。
あちらも予定があろうから、都合を聞いておく」
儂は敗北感の中、そう言うのが精一杯じゃった…。
「~♪~~♪」
帝国もぶっ潰したし、彼奴等はぶっ殺したし、もうこれであとはクロエを儂の伴侶にするだけじゃの。
気分がいいわい。
晴々とした気持ちで、クロエの車椅子を押す。
「最近の調子はどうじゃな」
「はい、汚い字ですが、左でも何とか書けるようになりました」
「それはすごい!で、仕事の方は?」
「まだ始まったばかりで、ご報告できるような成果はありません…
ですが、今度実際にこの国の一般的な家で薬草を育ててみる実験に参加させて下さるそうです」
ここのところ顔色もいいしの。
なにより表情が明るくなったわい。
ああ、やっぱり、こうやって好きな事の話をしておるときの顔は……
愛い!!
はっ、いかん。
おかしなところを見せては。
普通の会話に戻ろう…
「お前の部下は、全員は帰らなんだのじゃな」
「はい、何人かは。
ですが、私の部下もこちらで雇って頂いて…
彼らが面倒を見てくれるので、助かります。
こっちに骨を埋めたいというものもおります。
よっぽどこの国の居心地がいいんでしょう」
うんまあ、こっちにはクロエがおるからだろうの…
北の猟犬共、クロエに四六時中引っ付きおって…
そこまで儂を監視せんでもええと思うがのぉ。
「こうしてみると、品の良い従者のようじゃなぁ」
「ええ、言葉遣いもしっかり学んだようで」
どこで調達したものか、執事服など着よって…
まあ、皇太子には執事位いるのが普通じゃものな。
奴らの思いは分からんでもないが……
まさかここに来て執事とは…はあ。
「ところで、そろそろ義足が出来るころじゃの」
「はい、昨日、合わせてみました。
もう少し調整したら、届けて下さるそうです。
早く義足に慣れて…そうすれば、もっと色んなところへ行けます」
「そうか、そうか。
ならば今度休みの日に、馬で街へ出てみるか?」
「馬ですか?」
「うむ、学園の馬では出来ぬが、儂の馬なら二人で乗っても平気じゃからの。
ほら、あそこの馬じゃ」
「あれですか?りっぱな軍馬ではありませんか」
ちょっと乗ってみるか、などと誘うと、可愛く頷いたりするもんじゃから、たまらん。
馬のそばへ行く。
「リリ、クロエじゃ。乗せてやってもよいか?」
リリ…儂の愛馬は、頷く。
さすが儂の愛馬、偉いぞ!
「リリ、というのですね、いい名前です。
…かわいいね、リリ。いい子。」
リリを撫でるクロエ。
リリよりクロエのほうが可愛いぞ、と思いながら、まずはクロエを乗せ、儂はその後ろに跨がる。
「ちょっと歩いてみるかの」
「はい」
ポコ、ポコ、ポコ、ポコ……
…ふふ。
成功じゃ!
背中にくっついても嫌がられんぞ!!
恐ろしく順調ではないか…ふふふ。
ポコポコと学園を一周する。
執事服の猟犬が横を歩く。
後ろに着いてきておれば、ちょいと蹴飛ばしてやるのにのう…まあ良い、クロエが背中を預けてくれとるのに免じて許してやるとするか。
馬の上でクロエが言う。
「昔こうやって、友人と二人、馬に乗ったことを思い出します」
「友人…?」
「東の辺境伯にお世話になっていた時からの友人で、彼は騎馬民族出身でしたので、馬を操るのが上手で…よく乗馬の訓練を手伝ってもらっていました」
「ふーん、そうか」
それって、多分、あいつのことじゃな。
ふん、それがどうした。
そんなことで妬いたりは…
「その…その友人が、この国でお世話になっていると、聞きました。…久しぶりに、彼に会いたいのですが…」
ぐううう。
妬かぬ!妬かぬもんね!
儂は大人じゃもんね!
くそ、「会いたい」じゃと…
あいつはまだ、儂より先におるというのか…!
くそっ、腹立つのお!
「…その者は、何という名前かの」
つい苛立って固い声でそう聞いた儂に、クロエが微笑んで言う。
「はい、ソラ、という人です。
こちらでは「鬼神」といったほうが、通じるかもしれませんが…」
そうして、駄目ですか?と上目遣いでクロエが儂を覗う。
……身長差がかなりあるから、自然にそうなるのじゃろうが……あああ!!!
こんなもん、断れるわけなかろーが!!
「うむ、取り計らおう。
あちらも予定があろうから、都合を聞いておく」
儂は敗北感の中、そう言うのが精一杯じゃった…。
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