564 / 586
執事と執事
庭師の里帰り(?)
しおりを挟む
ある朝、僕とゼフさんはリチャードから1つの報告を受けた。
「ゼフ様、ロイ様、トリエステから私宛に私信が参りまして」
「うん?なんて書いてあるの」
「王宮へ行く用があるので、久しぶりに会わないか…と。それで、一日休暇を頂きたいのですが…」
「いいよ、いつこっちへ来るんだって?」
「僕らもトリエステにも随分と会ってないね」
トリエステは時々王宮へ呼ばれては、陛下が普及を考えている心療についての意見を求められるらしい。
ただの庭師から大出世だ。
まあただの庭師ではなかったんだけどね。
ルースの話では、彼はとある色街から「ユーフォルビアの性技」を盗みに来たスパイだったそうだ。
懐かしい話だな…。
「たまには僕らにも顔を見せて欲しいな」
ゼフさんはそう言って、リチャードに微笑んだ。
僕も言った。
「貴族の皆様にトリエステのクリニックの本部がうちだ、って話が広まってるみたいでね。
一度情報交換をしたいんだ…今後も定期的に情報交換の機会を持ちたいから、その打ち合わせもね」
「かしこまりました、ではこちらへトリエステを呼んでも宜しいでしょうか?」
「うん、頼むよ」
リチャードはかしこまりました、と言って下がった。
久しぶりの再会だ。
どうやってもてなそうか…
僕とゼフさんはそんな話題に花を咲かせた。
***
「お久しぶりです、旦那様方!」
「トリエステ!元気そうで何より」
久しぶりに会ったトリエステはあの頃と変わらず簡素ないで立ちで、体形も少しふくよかになった程度だ。
ほんとに変わらないな…
何だか嬉しくなっちゃう。
「仕事は順調?」
「ええ、支院も増えまして、その分相談員の質を確保するのに苦労しております。
ルース坊ちゃまが勉強会を企画してくださるそうで、今回はその打ち合わせも兼ねて…」
「おや、ルースが?」
「はい、何くれと無く支援してくださいます。
ユーフォルビア家断絶後の知識の継承を我々に任せたいからと…」
「坊ちゃまがそこまで?」
「ああ、本当だとも!
ただの、娼夫だった自分たちに…そこまで言って下さるなんて、誰も信じないかもしれないが…」
それも今度の合同勉強会で変わるだろう。
閨事のユーフォルビア、その意味も大きく変わる、いや、変えてみせます!とトリエステは言う。
「…そう、楽しみにしてるよ、トリエステ」
「はい、旦那様!」
…とはいえ、もう大分変わって来てる気はする。
補佐局の子たちが時々相談に来るようになったのが一番大きいかな?
それもあって、普通に恋愛相談所としてうちが使われ始めた感じはするよね。
まあ、何より王太子正室の実家だっていう安心感もあるかな。
あの子も相当の人脈だからなぁ…
お客さんの層が分厚くてびっくりだよ。
あっ、そうそう…
「そういえばトリエステ、うちが性相談クリニックの本部っていう間違った認識が貴族の皆様に広がっちゃっててさ、どうしたらいいか考えてるんだけど…」
僕はちょっと申し訳ない感を出しながらトリエステに言った。
できればちょっと特別な支院っていう扱いにならないかな、と提案してみるつもりで…。
するとトリエステはキョトンとした顔で言った。
「えっ、それは…そう、ですよね?」
「えっ」
「だって、うちはユーフォルビアの知識を使ってカウンセリングしてるわけで、だったら本家はここ…
ってことに、なりませんか?」
「……確かに?」
どうやら、ここが本部っていうのは貴族だけの間で広まってるわけじゃないみたい。
それならそれで…いいのかしら。
「じゃあ本部、っていうんじゃなくて本家、って言い方ならありかもね」
「はい、そうして頂けると、こちらも有難いです。盗んで来た知識だろう、って言われなくて済みますし…」
「つまり、提携してますよってはっきりした方がいいって事ね」
落としどころが見つかって僕らは一安心。
それならもう少し近しい感じを出しても良いかな…。
「ルースが勉強会を企画してるなら、それに参加するのも良いかも…頼めるかな?」
「分かりました、坊ちゃまにお伝えしておきます」
良かった、一番悩んでたものが解決して。
これもルースのおかげかな?
勝手に立派な支院ができちゃった感じ。
「しかし、うちの息子は優秀だね」
「本当にね」
僕とゼフさんは、お互い自分の息子が立派に育ったことを実感して…
親として誇らしい気持ちになったのだった。
「ゼフ様、ロイ様、トリエステから私宛に私信が参りまして」
「うん?なんて書いてあるの」
「王宮へ行く用があるので、久しぶりに会わないか…と。それで、一日休暇を頂きたいのですが…」
「いいよ、いつこっちへ来るんだって?」
「僕らもトリエステにも随分と会ってないね」
トリエステは時々王宮へ呼ばれては、陛下が普及を考えている心療についての意見を求められるらしい。
ただの庭師から大出世だ。
まあただの庭師ではなかったんだけどね。
ルースの話では、彼はとある色街から「ユーフォルビアの性技」を盗みに来たスパイだったそうだ。
懐かしい話だな…。
「たまには僕らにも顔を見せて欲しいな」
ゼフさんはそう言って、リチャードに微笑んだ。
僕も言った。
「貴族の皆様にトリエステのクリニックの本部がうちだ、って話が広まってるみたいでね。
一度情報交換をしたいんだ…今後も定期的に情報交換の機会を持ちたいから、その打ち合わせもね」
「かしこまりました、ではこちらへトリエステを呼んでも宜しいでしょうか?」
「うん、頼むよ」
リチャードはかしこまりました、と言って下がった。
久しぶりの再会だ。
どうやってもてなそうか…
僕とゼフさんはそんな話題に花を咲かせた。
***
「お久しぶりです、旦那様方!」
「トリエステ!元気そうで何より」
久しぶりに会ったトリエステはあの頃と変わらず簡素ないで立ちで、体形も少しふくよかになった程度だ。
ほんとに変わらないな…
何だか嬉しくなっちゃう。
「仕事は順調?」
「ええ、支院も増えまして、その分相談員の質を確保するのに苦労しております。
ルース坊ちゃまが勉強会を企画してくださるそうで、今回はその打ち合わせも兼ねて…」
「おや、ルースが?」
「はい、何くれと無く支援してくださいます。
ユーフォルビア家断絶後の知識の継承を我々に任せたいからと…」
「坊ちゃまがそこまで?」
「ああ、本当だとも!
ただの、娼夫だった自分たちに…そこまで言って下さるなんて、誰も信じないかもしれないが…」
それも今度の合同勉強会で変わるだろう。
閨事のユーフォルビア、その意味も大きく変わる、いや、変えてみせます!とトリエステは言う。
「…そう、楽しみにしてるよ、トリエステ」
「はい、旦那様!」
…とはいえ、もう大分変わって来てる気はする。
補佐局の子たちが時々相談に来るようになったのが一番大きいかな?
それもあって、普通に恋愛相談所としてうちが使われ始めた感じはするよね。
まあ、何より王太子正室の実家だっていう安心感もあるかな。
あの子も相当の人脈だからなぁ…
お客さんの層が分厚くてびっくりだよ。
あっ、そうそう…
「そういえばトリエステ、うちが性相談クリニックの本部っていう間違った認識が貴族の皆様に広がっちゃっててさ、どうしたらいいか考えてるんだけど…」
僕はちょっと申し訳ない感を出しながらトリエステに言った。
できればちょっと特別な支院っていう扱いにならないかな、と提案してみるつもりで…。
するとトリエステはキョトンとした顔で言った。
「えっ、それは…そう、ですよね?」
「えっ」
「だって、うちはユーフォルビアの知識を使ってカウンセリングしてるわけで、だったら本家はここ…
ってことに、なりませんか?」
「……確かに?」
どうやら、ここが本部っていうのは貴族だけの間で広まってるわけじゃないみたい。
それならそれで…いいのかしら。
「じゃあ本部、っていうんじゃなくて本家、って言い方ならありかもね」
「はい、そうして頂けると、こちらも有難いです。盗んで来た知識だろう、って言われなくて済みますし…」
「つまり、提携してますよってはっきりした方がいいって事ね」
落としどころが見つかって僕らは一安心。
それならもう少し近しい感じを出しても良いかな…。
「ルースが勉強会を企画してるなら、それに参加するのも良いかも…頼めるかな?」
「分かりました、坊ちゃまにお伝えしておきます」
良かった、一番悩んでたものが解決して。
これもルースのおかげかな?
勝手に立派な支院ができちゃった感じ。
「しかし、うちの息子は優秀だね」
「本当にね」
僕とゼフさんは、お互い自分の息子が立派に育ったことを実感して…
親として誇らしい気持ちになったのだった。
11
お気に入りに追加
2,458
あなたにおすすめの小説
冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~
日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました!
小説家になろうにて先行公開中
https://ncode.syosetu.com/n5925iz/
残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。
だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。
そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。
実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく!
ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう!
彼女はむしろ喜んだ。
【完結】優しくしないで
にゃーつ
BL
幼少期からの虐待でボロボロになっていたところを武田組若頭に拾ってもらう千秋。
虐待や暴力により心を閉ざしてしまう。
そんな時に武田組で出会ったのは自分の生涯に大きく関わる1人の男の子。その男の子との出会いが千秋を大きく変える。千秋の心の傷を癒やし、千秋に笑顔を取り戻したその男の子は武田空。千秋を拾った武田組若頭の息子だった。
空への想いを自覚するも自分の過去や立場を考え悩む千秋、それとは対照的に自分の思いを曝け出し行動に起こす空。
そこで千秋が下した決断とは!?
年の差12歳 年下×年上
トラウマを抱えながらも必死に空を想う千秋、千秋のためなら周りがどうなってもいいって思うほどに千秋に執着する空。
ちーがいないと生きていけない。
空がいないと不安。
愛を知らなかった千秋が空から大きすぎる愛を注がれる話。
初作品です
完結しました。
2/9 BL 31位!!!!
駄菓子屋継いだらロリハーレム
樋川カイト
恋愛
「道楽で始めた駄菓子屋を継ぐ」という条件で祖父の遺産を相続した青年。
彼にとってその条件は、まさに夢の世界への片道切符だった。
次々にやってくる魅力的なロリっ子たちの誘惑に、ロリコンを隠して生きてきた青年は耐え切ることができるのだろうか?(できません)
※この物語はフィクションです。実在する地名・人物・団体とは一切関係ありません。
※作中での行為を実際に行った場合、法律に違反してしまう可能性がありますのでご注意ください。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ある公爵令嬢の生涯
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。
妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。
婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。
そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが…
気づくとエステルに転生していた。
再び前世繰り返すことになると思いきや。
エステルは家族を見限り自立を決意するのだが…
***
タイトルを変更しました!
婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい
香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」
王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。
リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。
『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』
そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。
真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。
——私はこの二人を利用する。
ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。
——それこそが真実の愛の証明になるから。
これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。
※6/15 20:37に一部改稿しました。
ヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年に懐かれた結果、立派なヤンデレ美青年へと成長した彼に迫られ食べられたが早まったかもしれない件について。
宝楓カチカ🌹
BL
諸事情により預かった天使のような美貌を持つヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年(6歳)に懐かれた平々凡々とした鈴木春人くん(14歳)が十数年後、身長187.3cmのヤンデレ科ヤンデレ属に属する立派なヤンデレ美青年へと成長したかつてのヤンデレ気味のハーフ美少年に迫られ食べられて早まったかなあなんて思ってしまうお話。
※閲覧は自己責任でお願いします。ムーンライトノベルズ様にも掲載させて頂いております(タイトルは微妙に異なります)(文字数制限でタイトル入りきりませんでした)
※※R18シーンには*つけてます。
運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~
日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。
女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。
婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。
あらゆる不幸が彼女を襲う。
果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか?
選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる