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執事と執事

庭師の里帰り(?)

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ある朝、僕とゼフさんはリチャードから1つの報告を受けた。

「ゼフ様、ロイ様、トリエステから私宛に私信が参りまして」
「うん?なんて書いてあるの」
「王宮へ行く用があるので、久しぶりに会わないか…と。それで、一日休暇を頂きたいのですが…」
「いいよ、いつこっちへ来るんだって?」
「僕らもトリエステにも随分と会ってないね」

トリエステは時々王宮へ呼ばれては、陛下が普及を考えている心療についての意見を求められるらしい。

ただの庭師から大出世だ。
まあただの庭師ではなかったんだけどね。
ルースの話では、彼はとある色街から「ユーフォルビアの性技」を盗みに来たスパイだったそうだ。
懐かしい話だな…。

「たまには僕らにも顔を見せて欲しいな」

ゼフさんはそう言って、リチャードに微笑んだ。
僕も言った。

「貴族の皆様にトリエステのクリニックの本部がうちだ、って話が広まってるみたいでね。
 一度情報交換をしたいんだ…今後も定期的に情報交換の機会を持ちたいから、その打ち合わせもね」
「かしこまりました、ではこちらへトリエステを呼んでも宜しいでしょうか?」
「うん、頼むよ」

リチャードはかしこまりました、と言って下がった。

久しぶりの再会だ。
どうやってもてなそうか…
僕とゼフさんはそんな話題に花を咲かせた。

***

「お久しぶりです、旦那様方!」
「トリエステ!元気そうで何より」

久しぶりに会ったトリエステはあの頃と変わらず簡素ないで立ちで、体形も少しふくよかになった程度だ。
ほんとに変わらないな…
何だか嬉しくなっちゃう。

「仕事は順調?」
「ええ、支院も増えまして、その分相談員の質を確保するのに苦労しております。
 ルース坊ちゃまが勉強会を企画してくださるそうで、今回はその打ち合わせも兼ねて…」
「おや、ルースが?」
「はい、何くれと無く支援してくださいます。
 ユーフォルビア家断絶後の知識の継承を我々に任せたいからと…」
「坊ちゃまがそこまで?」
「ああ、本当だとも!
 ただの、娼夫だった自分たちに…そこまで言って下さるなんて、誰も信じないかもしれないが…」

それも今度の合同勉強会で変わるだろう。
閨事のユーフォルビア、その意味も大きく変わる、いや、変えてみせます!とトリエステは言う。

「…そう、楽しみにしてるよ、トリエステ」
「はい、旦那様!」

…とはいえ、もう大分変わって来てる気はする。

補佐局の子たちが時々相談に来るようになったのが一番大きいかな?
それもあって、普通に恋愛相談所としてうちが使われ始めた感じはするよね。

まあ、何より王太子正室ルースの実家だっていう安心感もあるかな。
あの子も相当の人脈だからなぁ…
お客さんの層が分厚くてびっくりだよ。

あっ、そうそう…

「そういえばトリエステ、うちが性相談クリニックの本部っていう間違った認識が貴族の皆様に広がっちゃっててさ、どうしたらいいか考えてるんだけど…」

僕はちょっと申し訳ない感を出しながらトリエステに言った。
できればちょっと特別な支院っていう扱いにならないかな、と提案してみるつもりで…。

するとトリエステはキョトンとした顔で言った。

「えっ、それは…そう、ですよね?」
「えっ」
「だって、うちはユーフォルビアの知識を使ってカウンセリングしてるわけで、だったら本家はここ…
 ってことに、なりませんか?」
「……確かに?」

どうやら、ここが本部っていうのは貴族だけの間で広まってるわけじゃないみたい。
それならそれで…いいのかしら。

「じゃあ本部、っていうんじゃなくて本家、って言い方ならありかもね」
「はい、そうして頂けると、こちらも有難いです。盗んで来た知識だろう、って言われなくて済みますし…」
「つまり、提携してますよってはっきりした方がいいって事ね」

落としどころが見つかって僕らは一安心。
それならもう少し近しい感じを出しても良いかな…。

「ルースが勉強会を企画してるなら、それに参加するのも良いかも…頼めるかな?」
「分かりました、坊ちゃまにお伝えしておきます」

良かった、一番悩んでたものが解決して。
これもルースのおかげかな?
勝手に立派な支院ができちゃった感じ。

「しかし、うちの息子は優秀だね」
「本当にね」

僕とゼフさんは、お互い自分の息子が立派に育ったことを実感して…

親として誇らしい気持ちになったのだった。
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