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ロイ・ユーフォルビアの恋愛相談室
公爵家同士、一人っ子同士 3 ~トーリ・バイオレット視点~
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「…ラミー、どうする」
「どうするって…どうしよう」
思い切ってロイ殿に相談したのは良いが、借りて来た閨教本を読めば読むほど…
うーーーーん。
「…我々には知識が足りなさすぎたね」
「そうだな…」
この閨教本に比べ、我々が受けて来た閨教育の適当さと来たら…
「そりゃ公爵家が先細るわけだ」
「…誰だろう、閨を真剣に考える事をはしたない、下品だと言い始めたのは」
「それは…誰だろうな?」
思えばよく分からん常識に振り回されて、我々は大事な事を見失ってきたのかもしれない。
ラミーは言った。
「…私は、お父様に…閨は子どもを作る為、だけ…にするものだと聞かされて来た」
「ふむ…なるほどな」
「…バイオレット家では、どうだった?」
「ああ、こういう事は交渉時の弱みにもなりやすいから、極力控えろと…」
「確かに、自分や身内の下半身事情を相手方に握られたら…困るな」
どこの国でも、交渉相手の弱みを握る為に諜報員を雇っているものだ。
「もしかしたら、大臣と言う職を家で独占するために始まったのか…?」
弱みになるような事は全て避けて来た結果、こういう目に合っていると言えなくもないだろう。
おまけに、醜聞を避けるためと言いながら、ユーフォルビアという存在に断絶回避の子を押し付けて素知らぬ顔をしているのも異常だ。
普通に考えれば、由緒ある家を都合好く搾取してきた行いは、許される事ではない。
それをかの家が許して許して許し続けてきてくれたことに、我々はずっと甘えてきたのだ。
「…ルースの『大臣職が世襲なのは良くない』というのは、こういう事も含まれているのかもしれんな」
「そうだな…「継がなければならない」という事が継ぐ者に与える歪みについては考えなかった」
私も、心のどこかで「大臣職を妬む者の戯言」だと思っていた。
就きたくても就けない故の嫉妬だと…
「他人を見下す癖は治せた、と思ったのにな」
「ロイ殿の言う通りだ…我々の世代でこれを改めねば、何とかして…」
ラミーはそう言ってため息をつく。
私も同時にため息をつく。
「…とにかく学ぼう。
その、色々必要なものは借りて来たし…」
「そ、そう、だな…」
元後宮である補佐局には何でも揃っている。
そうロイ殿から言われて補佐局に行ったところ、訳知り顔のアウディにニヤニヤされながら色々と貰ったのだ。
「ところであいつ、補佐局で何の仕事をしているんだ?」
「フィーデの仕事が終わるまで、茶を淹れたり子どもの世話をしたりしているそうだ」
「ああ…フィーデを支える為の修行か」
「元公爵家で茶会や夜会にも詳しいから、意外と重宝されているらしい」
「確かに、貴族教育にぴったりの人材だな」
プリムラ家は取り潰された。
それでも取り潰される寸前でフィーデとの婚姻を結び、彼は侯爵家の人間として生き残っている…
あいつは意外にしぶといのだ。
アウディは言った。
公爵家の長男だからって、抱かれる側になっちゃいけないなんて法律は無い、と。
確かにそうだ。
現に下らないしきたりに縛られてきた私たちは…
未だ、どっちがどっちになるか、最初の一歩が踏み出せない。
「…プリムラ家の閨教育はどうだったんだろうな」
「あいつはそういう事に貪欲だったから…愛される外見をしているしな」
「昔ははしたないなどと思っていたが…
こうなると、アウディは正しい考えを持っていたのかもしれないな」
ともかく後輩に負ける訳にはいくまい。
今からでも学ばねば…。
「キスだけで子どもが出来れば良いのに」
「…そう言うな、ラミー」
とにかく、私たちはセックスをしなければならない。
既成事実を作る…その為にも。
「お互いが、お互いの気持ちを理解できるように…しなければ」
「そうだな…我々にはそれが足りなかった」
父や祖父たちと違う事があるとすれば、我々は愛し合っているという事だ。
愛し合っているからこそ、相手を思いやれる。
ラミーが悲しんでいれば側で慰めたいと思う。
この現状を2人で乗り越えたい、と思う。
いや、乗り越えなくてはならないのだ。
そもそも、我々には「都合の良い結婚相手」などいない。
「そもそも子どもの数が少なすぎるんだな…」
「学園の寮も空きが目立つしな…」
父上たちの代からそれはあって、だからどの公爵家も国外から伴侶を迎えたのだ。
そして、あまりの評判の悪さにどこからも愛想をつかされている。
「…それでも、愛する人と結ばれる可能性があるのは、今だ」
愛だけで一緒になる事が許されない貴族でも、愛し合う人と一緒に添い遂げたい。
殿下とルースのように…。
「どうするって…どうしよう」
思い切ってロイ殿に相談したのは良いが、借りて来た閨教本を読めば読むほど…
うーーーーん。
「…我々には知識が足りなさすぎたね」
「そうだな…」
この閨教本に比べ、我々が受けて来た閨教育の適当さと来たら…
「そりゃ公爵家が先細るわけだ」
「…誰だろう、閨を真剣に考える事をはしたない、下品だと言い始めたのは」
「それは…誰だろうな?」
思えばよく分からん常識に振り回されて、我々は大事な事を見失ってきたのかもしれない。
ラミーは言った。
「…私は、お父様に…閨は子どもを作る為、だけ…にするものだと聞かされて来た」
「ふむ…なるほどな」
「…バイオレット家では、どうだった?」
「ああ、こういう事は交渉時の弱みにもなりやすいから、極力控えろと…」
「確かに、自分や身内の下半身事情を相手方に握られたら…困るな」
どこの国でも、交渉相手の弱みを握る為に諜報員を雇っているものだ。
「もしかしたら、大臣と言う職を家で独占するために始まったのか…?」
弱みになるような事は全て避けて来た結果、こういう目に合っていると言えなくもないだろう。
おまけに、醜聞を避けるためと言いながら、ユーフォルビアという存在に断絶回避の子を押し付けて素知らぬ顔をしているのも異常だ。
普通に考えれば、由緒ある家を都合好く搾取してきた行いは、許される事ではない。
それをかの家が許して許して許し続けてきてくれたことに、我々はずっと甘えてきたのだ。
「…ルースの『大臣職が世襲なのは良くない』というのは、こういう事も含まれているのかもしれんな」
「そうだな…「継がなければならない」という事が継ぐ者に与える歪みについては考えなかった」
私も、心のどこかで「大臣職を妬む者の戯言」だと思っていた。
就きたくても就けない故の嫉妬だと…
「他人を見下す癖は治せた、と思ったのにな」
「ロイ殿の言う通りだ…我々の世代でこれを改めねば、何とかして…」
ラミーはそう言ってため息をつく。
私も同時にため息をつく。
「…とにかく学ぼう。
その、色々必要なものは借りて来たし…」
「そ、そう、だな…」
元後宮である補佐局には何でも揃っている。
そうロイ殿から言われて補佐局に行ったところ、訳知り顔のアウディにニヤニヤされながら色々と貰ったのだ。
「ところであいつ、補佐局で何の仕事をしているんだ?」
「フィーデの仕事が終わるまで、茶を淹れたり子どもの世話をしたりしているそうだ」
「ああ…フィーデを支える為の修行か」
「元公爵家で茶会や夜会にも詳しいから、意外と重宝されているらしい」
「確かに、貴族教育にぴったりの人材だな」
プリムラ家は取り潰された。
それでも取り潰される寸前でフィーデとの婚姻を結び、彼は侯爵家の人間として生き残っている…
あいつは意外にしぶといのだ。
アウディは言った。
公爵家の長男だからって、抱かれる側になっちゃいけないなんて法律は無い、と。
確かにそうだ。
現に下らないしきたりに縛られてきた私たちは…
未だ、どっちがどっちになるか、最初の一歩が踏み出せない。
「…プリムラ家の閨教育はどうだったんだろうな」
「あいつはそういう事に貪欲だったから…愛される外見をしているしな」
「昔ははしたないなどと思っていたが…
こうなると、アウディは正しい考えを持っていたのかもしれないな」
ともかく後輩に負ける訳にはいくまい。
今からでも学ばねば…。
「キスだけで子どもが出来れば良いのに」
「…そう言うな、ラミー」
とにかく、私たちはセックスをしなければならない。
既成事実を作る…その為にも。
「お互いが、お互いの気持ちを理解できるように…しなければ」
「そうだな…我々にはそれが足りなかった」
父や祖父たちと違う事があるとすれば、我々は愛し合っているという事だ。
愛し合っているからこそ、相手を思いやれる。
ラミーが悲しんでいれば側で慰めたいと思う。
この現状を2人で乗り越えたい、と思う。
いや、乗り越えなくてはならないのだ。
そもそも、我々には「都合の良い結婚相手」などいない。
「そもそも子どもの数が少なすぎるんだな…」
「学園の寮も空きが目立つしな…」
父上たちの代からそれはあって、だからどの公爵家も国外から伴侶を迎えたのだ。
そして、あまりの評判の悪さにどこからも愛想をつかされている。
「…それでも、愛する人と結ばれる可能性があるのは、今だ」
愛だけで一緒になる事が許されない貴族でも、愛し合う人と一緒に添い遂げたい。
殿下とルースのように…。
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