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あの人は今
伏兵の攻撃(ターン)
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突如現れた伏兵に、俺たち全員がポカーンとなった。
「僕は、このカフェでバリスタをしています。
美味しいコーヒーが入れられているかどうか、いつも不安でした。
なぜなら注文する人はみんな、砂糖もミルクもたっぷりでお召し上がりになるからです。
そんな僕の元に、最近一人のおじさまが現れました…」
神官見習いの王宮カフェスタッフは語り始めた…。
~~~~~
彼も、自分の淹れたコーヒーを一口飲んで、ミルクと砂糖を入れました。
ですが、他の人と全くやり方は違いました。
とても繊細に、少しずつ砂糖を入れては飲み、ミルクを入れては飲み…。
そうやって一杯をしっかりとご堪能されて、その日はお帰りになりました。
また次の日、そのおじさまはやってきました。
やっぱりコーヒーを一杯ご注文になり、今度は生クリームも別で注文されました。
また自分の淹れたコーヒーを一口飲んで、ミルクと砂糖、それから生クリームを足しつつ…
その時、気が付いたのです。
コーヒーのカップの下に、計量器が置いてあるのを。
僕は聞きました。
「一体何をなさっているのですか?」
すると、おじさまはこう言ったのです。
「ルースがね、コーヒーにミルクと砂糖を入れて飲みたいなら、王宮カフェのコーヒーが良いって。
ローストがやや深めで酸味より苦みが強いから、香ばしさが引き立って美味しいと思いますって。
僕もここのコーヒーを飲んで思ったよ。
ミルクと砂糖を入れる前提で淹れるコーヒーもあるんだなって」
おじさまは王都で初めてコーヒーを嗜まれ、その味に衝撃を受けたのだとか。
「ただ、その時は飲みやすくなるようにって砂糖とミルクを適当に入れて飲んだんだ。
香ばしくて美味しかったけど、何だか酸味が気になってね…」
美味しく飲む方法が知りたくなったおじさまは、豆を買って帰った。
でも淹れ方が分からなくて…
「陛下が王宮カフェでも飲めるよ、って仰ったのを思い出したんだ。
それでここへ来てみようかなって。
ルースのお店だから、ルースに色々聞いたんだ。
そしたら、ここのコーヒーは伯父さんの飲みたい方法に合ってるかも、って…」
おじさまは陛下ともルース様ともお知り合いで、しかもルース様を呼び捨てに出来るお立場の方。
なのに、僕にも気さくに話して下さる…
どなただか想像もつかないままでした。
それでも、ただおじさまが買った豆が無駄になるのも惜しくて、僕は言ったのです。
「補佐局に、シャラパールの方がいらっしゃいますので、その方に頼めば…」
すると、おじさまは僕の目を一瞬だけ見て、すぐに逸らし、そして仰いました。
「出産の準備で忙しそうでさ…頼めなかったんだ」
~~~~~
「その時のおじさまのお顔が、寂しさと憂いを秘めた笑顔が、僕の心に刺さったんです!」
「ふえぇぇぇぇぇ」
「それに、自分の淹れたコーヒーが不味いんじゃないことも教えて頂きました。
飲めないから足してたんじゃなく、より美味しくなるように足していた…
目から鱗でした!!
その日から、僕はおじさまと一緒に、このカフェに泊まり込んで、最も美味しいレシピを朝まで探しました。
そうして完成したのが、このカフェオレです…どうぞ!!」
神官見習い君はシュタインさんの前にカフェオレのおかわりを置いた。
まるで挑戦するかのように、彼の目の前に、自分と伯父さんの共同作業で生み出されたそれを…
「…飲んでみてよ、先生。
僕がこっちに来て、初めて、やりたい事をやったの。
それがこれ…カフェオレ。
今はホットしか無いけど、来年の夏までに、冷たいカフェオレのメニューも考えようと思ってるんだ」
伯父さんがシュタインさんに勧める。
…これは、きっと…
さよならの、代わりの…
「…うん、おいしい」
「僕が、彼と、作ったんだよ?」
「…とても…っ、おいしい、です…っ」
シュタインさんはポロポロと泣いた。
ただ涙を流しながら無言で俯いた。
伯父さんは、神官見習いさんの横で、シュタインさんのことを見つめた。
そうしてシュタインさんは、泣きながらカフェオレを飲んで、それから…。
吹っ切るように、敢えて明るく、言った。
「俺、もっと学ばないと。
だから、最初に勤務した病院に行こうと思います。
海沿いのあの診療所にいたら…きっと、色々と思い出して、集中できないから」
「そう、先生も、目標…見つかったね」
伯父さんとシュタインさんは握手をする。
「はい、それでもっともっと良い男になって、もう一度カールさんを訪ねるから…
その時は、記念に、一度きりのセックスを、してくれますか」
「ふふ、僕がまだ生きてるうちに、おいでよ?」
伯父さんはにっこりと微笑み、握手は解かれ、シュタインさんはお茶会の場を退出する。
これで丸く収まったな…と思ったら、
「カールさまっ!不倫はだめです!!」
神官見習いさんの叫びが響いた。
…いや、君と結婚するとも、まだ言うてへんやん?
一旦落ち着こ、な?
「僕は、このカフェでバリスタをしています。
美味しいコーヒーが入れられているかどうか、いつも不安でした。
なぜなら注文する人はみんな、砂糖もミルクもたっぷりでお召し上がりになるからです。
そんな僕の元に、最近一人のおじさまが現れました…」
神官見習いの王宮カフェスタッフは語り始めた…。
~~~~~
彼も、自分の淹れたコーヒーを一口飲んで、ミルクと砂糖を入れました。
ですが、他の人と全くやり方は違いました。
とても繊細に、少しずつ砂糖を入れては飲み、ミルクを入れては飲み…。
そうやって一杯をしっかりとご堪能されて、その日はお帰りになりました。
また次の日、そのおじさまはやってきました。
やっぱりコーヒーを一杯ご注文になり、今度は生クリームも別で注文されました。
また自分の淹れたコーヒーを一口飲んで、ミルクと砂糖、それから生クリームを足しつつ…
その時、気が付いたのです。
コーヒーのカップの下に、計量器が置いてあるのを。
僕は聞きました。
「一体何をなさっているのですか?」
すると、おじさまはこう言ったのです。
「ルースがね、コーヒーにミルクと砂糖を入れて飲みたいなら、王宮カフェのコーヒーが良いって。
ローストがやや深めで酸味より苦みが強いから、香ばしさが引き立って美味しいと思いますって。
僕もここのコーヒーを飲んで思ったよ。
ミルクと砂糖を入れる前提で淹れるコーヒーもあるんだなって」
おじさまは王都で初めてコーヒーを嗜まれ、その味に衝撃を受けたのだとか。
「ただ、その時は飲みやすくなるようにって砂糖とミルクを適当に入れて飲んだんだ。
香ばしくて美味しかったけど、何だか酸味が気になってね…」
美味しく飲む方法が知りたくなったおじさまは、豆を買って帰った。
でも淹れ方が分からなくて…
「陛下が王宮カフェでも飲めるよ、って仰ったのを思い出したんだ。
それでここへ来てみようかなって。
ルースのお店だから、ルースに色々聞いたんだ。
そしたら、ここのコーヒーは伯父さんの飲みたい方法に合ってるかも、って…」
おじさまは陛下ともルース様ともお知り合いで、しかもルース様を呼び捨てに出来るお立場の方。
なのに、僕にも気さくに話して下さる…
どなただか想像もつかないままでした。
それでも、ただおじさまが買った豆が無駄になるのも惜しくて、僕は言ったのです。
「補佐局に、シャラパールの方がいらっしゃいますので、その方に頼めば…」
すると、おじさまは僕の目を一瞬だけ見て、すぐに逸らし、そして仰いました。
「出産の準備で忙しそうでさ…頼めなかったんだ」
~~~~~
「その時のおじさまのお顔が、寂しさと憂いを秘めた笑顔が、僕の心に刺さったんです!」
「ふえぇぇぇぇぇ」
「それに、自分の淹れたコーヒーが不味いんじゃないことも教えて頂きました。
飲めないから足してたんじゃなく、より美味しくなるように足していた…
目から鱗でした!!
その日から、僕はおじさまと一緒に、このカフェに泊まり込んで、最も美味しいレシピを朝まで探しました。
そうして完成したのが、このカフェオレです…どうぞ!!」
神官見習い君はシュタインさんの前にカフェオレのおかわりを置いた。
まるで挑戦するかのように、彼の目の前に、自分と伯父さんの共同作業で生み出されたそれを…
「…飲んでみてよ、先生。
僕がこっちに来て、初めて、やりたい事をやったの。
それがこれ…カフェオレ。
今はホットしか無いけど、来年の夏までに、冷たいカフェオレのメニューも考えようと思ってるんだ」
伯父さんがシュタインさんに勧める。
…これは、きっと…
さよならの、代わりの…
「…うん、おいしい」
「僕が、彼と、作ったんだよ?」
「…とても…っ、おいしい、です…っ」
シュタインさんはポロポロと泣いた。
ただ涙を流しながら無言で俯いた。
伯父さんは、神官見習いさんの横で、シュタインさんのことを見つめた。
そうしてシュタインさんは、泣きながらカフェオレを飲んで、それから…。
吹っ切るように、敢えて明るく、言った。
「俺、もっと学ばないと。
だから、最初に勤務した病院に行こうと思います。
海沿いのあの診療所にいたら…きっと、色々と思い出して、集中できないから」
「そう、先生も、目標…見つかったね」
伯父さんとシュタインさんは握手をする。
「はい、それでもっともっと良い男になって、もう一度カールさんを訪ねるから…
その時は、記念に、一度きりのセックスを、してくれますか」
「ふふ、僕がまだ生きてるうちに、おいでよ?」
伯父さんはにっこりと微笑み、握手は解かれ、シュタインさんはお茶会の場を退出する。
これで丸く収まったな…と思ったら、
「カールさまっ!不倫はだめです!!」
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