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あの人は今

突如出た伏兵

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最後にセックスでもしようか、という悪魔の如きお誘いの前に、シュタインさん(元主治医)は凍り付いた。

ルージュ様の助け舟虚しく、相当悩んでいる模様…

あーでも「セックスはオマケ」っていう発言は「オマケだからしてもいい」とも取れるのか。

うーん、こういう駆け引きを伯父さんがするようになるとは思わなかったな…

ゼフ父さん曰く、イフェイオンに拉致される前は普通の男の子だったらしいから。

シュタインさんは助けを求める様に伯父さんを呼ぶ。

「…カールさん、俺は、」

優しく微笑んで、伯父さんは言う。

「みんなが先生の事クズだって言うけど、僕は先生の事好きだったよ。
 先生の心のうちがどうであれ、一生懸命頑張って僕を治そうとしてくれた事実は変わらないもの」

そこまで言って、一旦言葉を切り、微笑み直してからまた言った。

「お医者さんだから聖人君子じゃなきゃ駄目って事はない…でしょう?」

すると、それに反応したのはルージュ様だ。

「まあ、そうだよね。
 結果、カールの減薬には成功したし、心を動かすことも出来たわけだから。
 問題は魔法を使った新しい治療の話に対して慎重すぎた、ていう一点に尽きるんじゃない?
 今までの君の治療方針に沿えば、可能性がありそうな事は何でも試してみる…だったら、これが確立されてない治療だとしても、試してみる方に賭けるべきなのに、急に方針をたがえた。
 不信感を持ったきっかけはそこでしょ、陛下?」
「うん」
「なっ…!?」

シュタインさんは驚いて固まった。
あまり自分の行動から心情を読まれる事に慣れていないようだ…

「影が君を調査したのはほんの数か月だ。
 あとは本来の目的である警護の仕事だけ。
 それで充分だったよ?君がカールに対してよこしまな感情を抱いていることも、ユーフォルビア家を特殊な家系だと考えていた事もすぐに分かった。
 カールをすぐに抱かなかったのは、子どもができると面倒だからだろう?
 だからなるべく結論を先延ばしにし続けた」
「違います、そういう事では!」
「君はカールをどうしたかったんだい?
 セックスしたかった、ただそれだけの為にこれほどの事をしたのかい?」
「そんなこと!!」
「じゃあ、どういうつもりだったんだ」

シュタインさんは震えながら言う。

「…俺だって、カールさんの事が、好きだった。
 自分の手から離れていくのが嫌だったんだ!
 俺も、恋をしていたんだ、カールさんに…」
「じゃあ、本当は両想いだったって事?」
「はい…」

そっかあ、と伯父さんは言い、シュタインさんのほうを見た。
シュタインさんも伯父さんの目を見つめ…



「ちょっと待ったぁ!!」
「!!?」


その2人の雰囲気に、実に古式ゆかしい方法でそれにストップをかけたのは…

「僕が、カールさんの子を産みます!」
「えええっ!?」
「だから僕とけっこんしてください!!」
「えええええっ!?」
「こちらご注文のサンドイッチ盛り合わせでございます!!」
「ええっ、あ、ありがとう…」
「カフェオレのおかわりはいかがですか!?」

王宮カフェで働く、若い神官見習いさんだった。
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