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新婚旅行
寝耳に水、再び
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「…って事で、俺はモローと結婚を前提に付き合う事になったから」
「いやそんなざっくり聞かされても」
実はモロー君の事がずっと気になっていたウィン兄、馬のあれこれを通じてモロー君との距離を詰めていって、それでアナガリス領にモロー君が滞在中に思い切って告白し、オトナの関係を持ち、結婚の約束をした、らしい…
ついていけない!
ついていけないよ!!
なんなのその急展開!?
「んで、ディー兄は…?」
「最初はルーに付く影にしちゃイケてないし、怪しんだりもしたんだけど、何かほっとけなくってさ。
聞いたらモローのとこの子だって言うし、味方なんだったら守ってあげたいなって思って。
そしたら好きだって言ってくれたし、お互い良い歳だし、結婚しようかって。
俺四男だもん、誰と結婚しようが自由だし」
「こっちもざっくりしすぎ!」
そんなとこ双子らしく揃わんでもええねん。
誰か詳しく説明…
「その、モロー君、もうちょっと詳しく…」
「ええっと、それは僕がルースさんと知り合った頃の事でした…」
えっそっから!?
「……セリンセは物を運ぶのが専門です、ですから馬により長く働いてもらうためには馬の扱いや世話についてもっと深く知る必要があるなって家族で話してて。
だから最初はかなり打算的に、アナガリス家の方と仲良くなれればという程度の事だったんです。
ですがその…、年上の方にこんな事を言うのも何ですが…
僕はウィンさんのちょっと抜けてるところとかがとても愛らしいと思うようになりまして…」
やべえ、これめっちゃ長くなるやつ…
「でも、その『ちょっと抜けてるところ』を知っているのは僕だけで…その事に優越感を感じてしまって」
「はあ」
「それでこれは恋なんじゃないかと思って…。
でもウィンさんは馬の事ばっかりで、ずっと片思いだと思って…」
「なるほど」
「ですけどアナガリス領に来てから、馬以外の事も話してくれて、僕の事も知ろうとしてくれて、」
「ふーん」
そうして俺と殿下は、モロー君から2人の馴れ初めから初エッチまでの詳細な報告を受け…
ウィン兄が抱かれる側だった事に震えたのであった。
***
その後、殿下は「好きに使え」と言ってディー兄とモロー君に例のケモ耳パーカーを手渡し、御者さんとウィン兄が真っ赤になるのを見てから部屋に引っ込んだ。
「ウィン兄…まさかの結末というか始まりと言うか…」
「はは、子熊でも熊は熊だという事だな」
「は?子熊…?」
「ああ、何度かウィンがモローをそう呼んでいたのを聞いたんだ」
「へええ…」
人間関係に敏感な殿下は、2人の仲に特に驚くことも無かったらしい。
俺の知らない所で色んな事が進んでたんだな…
「そもそもあの2人が少しずつお前から他の者へと心変わりしていると分かったから、側近にしたんだぞ。
それはともかく、さっさと着替えねば」
「そうでした、晩餐会!
ほんとダンス無いの助かります」
今まで、ダンスがあったのはアイドルさんの余興があった時だけで、それも各個人でリズムに乗る程度の動きですごく助かっている。
ダンス用の衣装も着なくてすむし!
「奴らも、少しでも儲けの種を貰うには、踊るより話をする方が良いと学んだのだろう。
それに下らん世辞や噂なぞ、一歩間違えば敵を作るだけだからな。
しない方が良いとなれば誰もしたくはないという事だ。
お父上たちはむしろダンスで黙らせてきたらしいがな」
「ダンスで!?」
「そうだ、王太子に相応しくないという言葉には堂々たる態度で、伴侶との不仲説は息の合ったダンスで。
人の心に残るようなダンスをすることで存在感を植え付ける…
そういう戦い方もあるという事だな」
「すげえ…」
貴族的ダンスバトル…絶対俺には無理だな。
でも、ダンス以上に、陛下には大きな力がお有りになる…
闇魔法だ。
殿下はここだけの話、として小さな声で俺に教えてくれた。
「決して外には出さないが、お父上は相当な闇魔法使いだ。
いざとなれば連中を操り自分の好きに動かす事くらい出来たはずだし、いざとなればそうしただろう。
そもそもユーフォルビアの子たちを全員どこかの王室へ嫁がせる事に成功したのは、お父上が全ての大臣を操りサインをさせ、その痕跡すら消し去る程の使い手だからだ。
向こうの派閥に知られないように公的には魔法が使えない事にしていたが、もし公爵派に国を盗られたとしても演説一つで国民たちを操って暴動を起こさせる事くらい出来てしまうぞ」
「…陛下は最終手段を残していたんですね」
「うむ」
初めて知る国王陛下の隠された素顔…
というか、端々にその事を匂わせる発言は殿下からもおじいちゃん先生からもあったし、それほど驚きはない。
最後には責任を持って、公爵派を断罪する覚悟が陛下にはあった。
だから殿下や俺たちに任せてくださったんだ。
「公爵派…帝国再興派は、温情を頂いていた事に気づかないまま、突き進んだんですね」
「2代も3代もかけて練ってきた作戦を捨てる決断が出来なかったんだろう…
お祖父様が闇属性では無かったのもあって、あの代で随分と仕込んだようだからな。
もう一人のお祖父様を殺してまで」
「…そう、でしたね」
…彼らが殺したのは前国王殿下の最愛の方であり、陛下のお父様だ。
彼らを憎んだのは前国王殿下だけではない…
つまり、おじいちゃん世代の貴族の半分以上が死んだという「流行り病」の正体は…
もしかしたら、そういう事…
なのかもしれない。
「いやそんなざっくり聞かされても」
実はモロー君の事がずっと気になっていたウィン兄、馬のあれこれを通じてモロー君との距離を詰めていって、それでアナガリス領にモロー君が滞在中に思い切って告白し、オトナの関係を持ち、結婚の約束をした、らしい…
ついていけない!
ついていけないよ!!
なんなのその急展開!?
「んで、ディー兄は…?」
「最初はルーに付く影にしちゃイケてないし、怪しんだりもしたんだけど、何かほっとけなくってさ。
聞いたらモローのとこの子だって言うし、味方なんだったら守ってあげたいなって思って。
そしたら好きだって言ってくれたし、お互い良い歳だし、結婚しようかって。
俺四男だもん、誰と結婚しようが自由だし」
「こっちもざっくりしすぎ!」
そんなとこ双子らしく揃わんでもええねん。
誰か詳しく説明…
「その、モロー君、もうちょっと詳しく…」
「ええっと、それは僕がルースさんと知り合った頃の事でした…」
えっそっから!?
「……セリンセは物を運ぶのが専門です、ですから馬により長く働いてもらうためには馬の扱いや世話についてもっと深く知る必要があるなって家族で話してて。
だから最初はかなり打算的に、アナガリス家の方と仲良くなれればという程度の事だったんです。
ですがその…、年上の方にこんな事を言うのも何ですが…
僕はウィンさんのちょっと抜けてるところとかがとても愛らしいと思うようになりまして…」
やべえ、これめっちゃ長くなるやつ…
「でも、その『ちょっと抜けてるところ』を知っているのは僕だけで…その事に優越感を感じてしまって」
「はあ」
「それでこれは恋なんじゃないかと思って…。
でもウィンさんは馬の事ばっかりで、ずっと片思いだと思って…」
「なるほど」
「ですけどアナガリス領に来てから、馬以外の事も話してくれて、僕の事も知ろうとしてくれて、」
「ふーん」
そうして俺と殿下は、モロー君から2人の馴れ初めから初エッチまでの詳細な報告を受け…
ウィン兄が抱かれる側だった事に震えたのであった。
***
その後、殿下は「好きに使え」と言ってディー兄とモロー君に例のケモ耳パーカーを手渡し、御者さんとウィン兄が真っ赤になるのを見てから部屋に引っ込んだ。
「ウィン兄…まさかの結末というか始まりと言うか…」
「はは、子熊でも熊は熊だという事だな」
「は?子熊…?」
「ああ、何度かウィンがモローをそう呼んでいたのを聞いたんだ」
「へええ…」
人間関係に敏感な殿下は、2人の仲に特に驚くことも無かったらしい。
俺の知らない所で色んな事が進んでたんだな…
「そもそもあの2人が少しずつお前から他の者へと心変わりしていると分かったから、側近にしたんだぞ。
それはともかく、さっさと着替えねば」
「そうでした、晩餐会!
ほんとダンス無いの助かります」
今まで、ダンスがあったのはアイドルさんの余興があった時だけで、それも各個人でリズムに乗る程度の動きですごく助かっている。
ダンス用の衣装も着なくてすむし!
「奴らも、少しでも儲けの種を貰うには、踊るより話をする方が良いと学んだのだろう。
それに下らん世辞や噂なぞ、一歩間違えば敵を作るだけだからな。
しない方が良いとなれば誰もしたくはないという事だ。
お父上たちはむしろダンスで黙らせてきたらしいがな」
「ダンスで!?」
「そうだ、王太子に相応しくないという言葉には堂々たる態度で、伴侶との不仲説は息の合ったダンスで。
人の心に残るようなダンスをすることで存在感を植え付ける…
そういう戦い方もあるという事だな」
「すげえ…」
貴族的ダンスバトル…絶対俺には無理だな。
でも、ダンス以上に、陛下には大きな力がお有りになる…
闇魔法だ。
殿下はここだけの話、として小さな声で俺に教えてくれた。
「決して外には出さないが、お父上は相当な闇魔法使いだ。
いざとなれば連中を操り自分の好きに動かす事くらい出来たはずだし、いざとなればそうしただろう。
そもそもユーフォルビアの子たちを全員どこかの王室へ嫁がせる事に成功したのは、お父上が全ての大臣を操りサインをさせ、その痕跡すら消し去る程の使い手だからだ。
向こうの派閥に知られないように公的には魔法が使えない事にしていたが、もし公爵派に国を盗られたとしても演説一つで国民たちを操って暴動を起こさせる事くらい出来てしまうぞ」
「…陛下は最終手段を残していたんですね」
「うむ」
初めて知る国王陛下の隠された素顔…
というか、端々にその事を匂わせる発言は殿下からもおじいちゃん先生からもあったし、それほど驚きはない。
最後には責任を持って、公爵派を断罪する覚悟が陛下にはあった。
だから殿下や俺たちに任せてくださったんだ。
「公爵派…帝国再興派は、温情を頂いていた事に気づかないまま、突き進んだんですね」
「2代も3代もかけて練ってきた作戦を捨てる決断が出来なかったんだろう…
お祖父様が闇属性では無かったのもあって、あの代で随分と仕込んだようだからな。
もう一人のお祖父様を殺してまで」
「…そう、でしたね」
…彼らが殺したのは前国王殿下の最愛の方であり、陛下のお父様だ。
彼らを憎んだのは前国王殿下だけではない…
つまり、おじいちゃん世代の貴族の半分以上が死んだという「流行り病」の正体は…
もしかしたら、そういう事…
なのかもしれない。
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