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学園6年目

結婚式、からも怒涛(途中視点切替有)

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式場には補佐局のみんなと兄さんたち、側近ズに学園の教授たちにアンジャベル卿に生徒会メンバー。
当然国王正室両陛下と、おまけにスプーラ殿下とゴード先輩。
それから何故かロメリアのおっさん…

おかげで王都神殿の神官長がド緊張。

「そそそれでは、ち、誓いのこ、言葉を」
「…神官長、それはもうさっきやりましたよ」
「あああええっと、では誓いのキス」
「ちゃうて、指輪や指輪!しっかりせえ」
「ははははい!ゆ、指輪の交換ふぉ!」

……もうおっさんがやったら良くね?

「…何だか締まらないな」
「仕方ないですよ、大神官長様がそこで見てるんですから」

そんなこんなで誓いのキス(濃厚)まで何とか漕ぎつけ、お祝いのブーケを渡された後、アルの腕に右手を添えて2人で神殿から出る。
出口から馬車まで真っ赤な絨毯が引かれ…

遠っ!?

「…長くないですか?」
「仕方ないだろう、基本の20mに加えて、参加者一人につき1m伸びるんだから」
「ひえええ」

そういやそんな話も聞いた気がする。
バタバタしてて忘れてんだな…

「さて、では行くか」
「へ、あ?えっ!?」

殿下は俺をひょいと横抱きにして歩き出す。

「ちょっと待って、聞いてませんよ!?」
「言ったらサプライズにならんだろう」
「サプライズなの!?」

その光景に皆さんがブワーっと盛り上がる。
もう降ろしてとは言えない…

「しっかり掴まっていろ」
「は、はあ…」

降って来る薔薇の花びらに、そういえばこの世界の名前を思い出す。

 「薔薇の楽園」…

もうその世界なのかどうかも分からない。
一応俺は当て馬的に機能してるみたいだけど…

「結婚、しちゃいましたね」
「そうだな、ようやくだ」

アルファード王太子とルース王太子正室、か。
王太子正室って何か長いよな…
上手い略称でも考えよう。

長い長い赤絨毯の上を進みながら、俺は笑顔を貼り付けたまま別の事を考える。
それがどういう効果を生むかを知らないまま…。


***

<アルファード視点>


ようやく結婚式が終わり、これで堂々とルースを自分のものだと言えるようになった。

だからといって気は抜けない。
貴族というものはすぐ浮気や不倫をする。

政略結婚が多いことも影響しているだろうが、俺とルースの結婚も表向き政略結婚に見えなくもないだろう。
愛しているからというだけで結婚が許される立場では無い為に、ルースと結婚した理由を様々推測する者は多い。
自分と同じだと思えば手を出そうとする輩もいるやもしれない。

まあそういう奴は片っ端から監獄送りにしてやるだけだ。
姦通罪が無いから不敬罪で引っ張る。
死刑にも出来て便利だからな。

ルースは恋愛に対して受け身だから、ルースから進んで浮気をする事はあるまいが…
恋というものは突然落ちるものだとも言うし、許されざる恋というものは甘美だからな。


ルースはまた何か考えているようで、悩まし気な雰囲気を醸し出している。

最初に気付いたのは衣装部の連中だ。

「ルース様は、何かを考えている時とても美しく見えます」

と重大な報告を受けた。

ルースは学園でいつも考えたり悩んだりしていたから、学園にいた連中も随分と当てられたようだし…
まあ、何も考えていない時の顔を見れば多少冷静になるようだが。


俺の首に縋りつき、回りに微笑むルースに言う。

「綺麗だな、ルース」
「衣装の効果じゃないですか?」
「いや…、お前、また何か考えているだろう」
「えっ、ああ、王太子正室って長いなと思って…何か気軽に呼びやすい略称は無いものかと」
「なるほど?」

内容を聞けば大した事でも無いようだ。
確かに長い。
長いし、産んだ方の父とか産ませた方の父などもまあまあ長い。

「前世では何と言うんだ?」
「そこを前世と揃えたら、完全に無い概念を持ち込むことに…」

ルースはなぜかあまり前世の知識を持ち込む事に積極的ではない。
食べる物についてはそうでもなさそうだが…

「うーん…悩みますね」

まあ、馬車まで暫く悩ませておこう。
あれほど美しい人だったかと、周りを嫉妬させてやるのも一興だ。

今更欲しがっても届かないもの…

愚かにもルースを馬鹿にした者達にはぴったりの罰だろう。

「そろそろ馬車に着くぞ」
「あ、本当だ…すごい、白のオープンカーだ」
「オープンカー?」
「ああえっと、屋根が無いって事です」
「うむ、あれの方が皆に良く見えるだろう?
 晴れの日ならあれが普通だな」
「婚姻の儀にしか使わないんですか?」
「うむ、今日の為に仕立てたものだ。
 後に払い下げて皆が使えるようにする」
「あら経済的」

馬車の扉を開けるのはアレクの仕事だ。
次に結婚しそうなのはあいつだろうな…

「さて、このまま中央公園までパレードだ」
「中央公園ですか?」
「結婚記念の催しが行われているんだろう?」
「行っても良いんですか!?」
「もちろんだ、あっちで舞台をやっている連中や式場に入れなかった者達にもこの姿を見せてやらねばな」
「そっか、そうですね!」

中央公園の大舞台では、結婚式の再現をする事になっている。
もちろんルースには黙っている。
伝統ではなくサプライズだからな。

「さて、それでは頼む」
「おっけー!」
「おめでとうアルファード、ルー!」

ウィンとディーが馬に指示を出す。
後ろから婚姻の記念品を積んだ荷馬車が3台付いてくる。
先の1台はモローが操縦し、後ろの2台はモローの父親たちが乗る。

馬車は走り出し、俺とルースは国民に応えて手を振る。

刺客が出てくる事も想定して、近衛と魔法師団も付いてくる。
俺の腰にも剣が吊るされている…
ルースには必要ないものだ。

魔法使いというのは身軽で良いな…と、俺はどうでも良い事を考えた。

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