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学園6年目
最後の「ざまぁ」 ~プリムラ君視点~
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お父上たちは本当に勝手だ!
用があるなら自分で来ればいいのに、従者をよこして済ませようとする態度もムカつく!!
それに、今更家庭教師を付けて内務大臣としての知識を全部学びきるまで監禁だとか、金持ちの平民を輿入れさせるとか、何のつもり!?
「出てけよ!学園は部外者立ち入り禁止だぞ!!」
「アウディ様…かくなる上は!!」
「な、何するんだ、この…!」
従者たちが僕に妙な魔道具を向けてきて、
「アウディ君に結界」バチン!!
「ぬああ!?」
何かに弾かれた。
そして階段の上からトコトコ降りて来たのは…
「私の大事な学友に何をなさるおつもりです?」
「き、貴様…!邪魔をするな!!」
「おやおや、貴様とは口の悪い。
2月14日を過ぎたら不敬罪で捕まるところですよ」
「な…何だと」
「ウィンドアロー2本、死なない程度」
ブワッ!!と強い風が僕を避けて吹き付ける。
従者が風で吹き飛んで下の踊り場へ転がっていく。
「んー、やりすぎたかな…ま、生きてればとりあえずOKか」
そう言いながら僕の立っている所まで降りて来たのは…
「アウディ君、大丈夫?」
「る…ルース…」
僕に努力を強要する同級生だった。
***
僕はつっかえつっかえ、今あった事をルースに話した。
「はあ…なるほど、プリムラ公のケツに火がついたって事か」
「そうみたい…助けてくれてありがと」
「まあ没落一直線だからなあ…公爵位も危ういし」
「そうなの!?」
「うん、中央銀行からお金を引っ張ろうとしてたから…さすがにね」
「え、中央銀行ってお金貸してくれるっけ?」
「くれないよ!だから問題になってるの」
何だ、父上たちも大概馬鹿じゃないか。
なんでそんな僕でも分かるような事…
「普通の銀行だと利子が発生するでしょ?
だから中央銀行に裏で造幣を増やしてその分を無利子で貸せ…ってとんでもない話を持ちこんでね。
普通に通貨偽造罪だし流通通貨の数を私物化しようとするのは人として無理だねって事に」
「うそ」
「嘘じゃないよ…
財務局のみんなと頭を抱えたよ、本気で」
ルースの話によると、うちの借金は王都の屋敷を引き払って領地経営だけに専念すれば返せない額じゃないんだって。
「但し、現状を維持できたとして30年はかかると思うけど」
「えっ、それって…」
「ローズ王国の貴族の平均寿命は大体70歳だから、今アウディ君の父君が40歳だとしたら死ぬまでかかるよね」
「…そういう事か」
「実際いくつなのかは知らないけどさ。
ここから先借金を返し続けるだけの人生だって思ったら、一人息子に賭ける情熱がおかしな方向へ行くんじゃない?
で、アウディ君としてはどうしたいの」
「えっ…」
「プリムラ家を再興したいかしたくないかって事」
「……」
ちなみにユーフォルビアは一旦これでおしまいにするんだ、とルース。
自分の子どもに継がせてもいいと思える家にしてから再興させるつもり、だって。
それを聞いて、僕は思った事をそのまま言った。
「僕の父上たちも、ルースみたいだったら良かった」
「え?」
「子どもが継ぎたいと思う家にするって…公爵位だから継ぎたいだろうって上から目線じゃなくて、子どもの目線になってくれてるっていうか…そんな感じ」
「うーん…まあ、今のユーフォルビアは継ぎたい家じゃないからね。
分かるでしょ?」
「…うん、ごめん…僕、酷い事色々、言った」
「はは、今更そんな事謝らなくていいよ」
あの時の事は水に流して、新しく始めるほうが建設的だ…とルースは言う。
こんな奴に公爵家だって言うだけの人間が勝てる訳なかったんだ、と僕は改めて思う。
だから、僕はずっと考えてたことをルースに告げる事にした。
「僕ね、プリムラ家は終わりでいいと思うんだ」
「そうなの?」
「あんな事やらかしといて、まだ公爵で居ようなんておかしいでしょ?本当なら爵位も領地も返上して罰を受けるべきだと思うんだ。
それに内務大臣だって、ちゃんと能力のある人がやるほうが正しいと思う。
それは僕じゃなくて、きっとフィーデだから…
僕はフィーデがのびのびとお仕事できるように家を守るほうがいい。フィーデの事、好きだし…子どもも産んであげたいと思う」
すると、ルースはさも簡単な事みたいに言った。
「そっか、じゃあそうするよ」
「えっ…?」
「俺ね、陛下に、アウディ君の為にもプリムラ家を潰すのは保留にして欲しいって言ってたの。
でもアウディ君がそう言うんなら、意味無いし」
「そ、んなこと、できるの…?」
「できるよ?」
じゃ、潰れるまで後宮に隠れててね…と言って、ルースは階段を降り、途中で倒れていた従者たちに「強めのヒール」をかけて去って行った。
呻き声が聞こえる…
「まずい」
従者たちが目を覚まさないうちに慌てて寮へ戻ると、そこには一番速度が出ると噂の2輪馬車と王国最速の御者であるアナガリス兄弟のうちの一人が居た。
「乗れ、アウディ。送る」
「えっ…あ、うん…」
いつの間に手配されていたんだろう?
でも、もう僕はその手際に驚くことも無かった。
そうして僕が後宮の一室に隠れて一週間後。
ルースの言葉通り、プリムラ家は公爵位と領地を返上させられて潰れた。
それから父上たちがどこへ行ったか…
誰も教えてはくれなかった。
用があるなら自分で来ればいいのに、従者をよこして済ませようとする態度もムカつく!!
それに、今更家庭教師を付けて内務大臣としての知識を全部学びきるまで監禁だとか、金持ちの平民を輿入れさせるとか、何のつもり!?
「出てけよ!学園は部外者立ち入り禁止だぞ!!」
「アウディ様…かくなる上は!!」
「な、何するんだ、この…!」
従者たちが僕に妙な魔道具を向けてきて、
「アウディ君に結界」バチン!!
「ぬああ!?」
何かに弾かれた。
そして階段の上からトコトコ降りて来たのは…
「私の大事な学友に何をなさるおつもりです?」
「き、貴様…!邪魔をするな!!」
「おやおや、貴様とは口の悪い。
2月14日を過ぎたら不敬罪で捕まるところですよ」
「な…何だと」
「ウィンドアロー2本、死なない程度」
ブワッ!!と強い風が僕を避けて吹き付ける。
従者が風で吹き飛んで下の踊り場へ転がっていく。
「んー、やりすぎたかな…ま、生きてればとりあえずOKか」
そう言いながら僕の立っている所まで降りて来たのは…
「アウディ君、大丈夫?」
「る…ルース…」
僕に努力を強要する同級生だった。
***
僕はつっかえつっかえ、今あった事をルースに話した。
「はあ…なるほど、プリムラ公のケツに火がついたって事か」
「そうみたい…助けてくれてありがと」
「まあ没落一直線だからなあ…公爵位も危ういし」
「そうなの!?」
「うん、中央銀行からお金を引っ張ろうとしてたから…さすがにね」
「え、中央銀行ってお金貸してくれるっけ?」
「くれないよ!だから問題になってるの」
何だ、父上たちも大概馬鹿じゃないか。
なんでそんな僕でも分かるような事…
「普通の銀行だと利子が発生するでしょ?
だから中央銀行に裏で造幣を増やしてその分を無利子で貸せ…ってとんでもない話を持ちこんでね。
普通に通貨偽造罪だし流通通貨の数を私物化しようとするのは人として無理だねって事に」
「うそ」
「嘘じゃないよ…
財務局のみんなと頭を抱えたよ、本気で」
ルースの話によると、うちの借金は王都の屋敷を引き払って領地経営だけに専念すれば返せない額じゃないんだって。
「但し、現状を維持できたとして30年はかかると思うけど」
「えっ、それって…」
「ローズ王国の貴族の平均寿命は大体70歳だから、今アウディ君の父君が40歳だとしたら死ぬまでかかるよね」
「…そういう事か」
「実際いくつなのかは知らないけどさ。
ここから先借金を返し続けるだけの人生だって思ったら、一人息子に賭ける情熱がおかしな方向へ行くんじゃない?
で、アウディ君としてはどうしたいの」
「えっ…」
「プリムラ家を再興したいかしたくないかって事」
「……」
ちなみにユーフォルビアは一旦これでおしまいにするんだ、とルース。
自分の子どもに継がせてもいいと思える家にしてから再興させるつもり、だって。
それを聞いて、僕は思った事をそのまま言った。
「僕の父上たちも、ルースみたいだったら良かった」
「え?」
「子どもが継ぎたいと思う家にするって…公爵位だから継ぎたいだろうって上から目線じゃなくて、子どもの目線になってくれてるっていうか…そんな感じ」
「うーん…まあ、今のユーフォルビアは継ぎたい家じゃないからね。
分かるでしょ?」
「…うん、ごめん…僕、酷い事色々、言った」
「はは、今更そんな事謝らなくていいよ」
あの時の事は水に流して、新しく始めるほうが建設的だ…とルースは言う。
こんな奴に公爵家だって言うだけの人間が勝てる訳なかったんだ、と僕は改めて思う。
だから、僕はずっと考えてたことをルースに告げる事にした。
「僕ね、プリムラ家は終わりでいいと思うんだ」
「そうなの?」
「あんな事やらかしといて、まだ公爵で居ようなんておかしいでしょ?本当なら爵位も領地も返上して罰を受けるべきだと思うんだ。
それに内務大臣だって、ちゃんと能力のある人がやるほうが正しいと思う。
それは僕じゃなくて、きっとフィーデだから…
僕はフィーデがのびのびとお仕事できるように家を守るほうがいい。フィーデの事、好きだし…子どもも産んであげたいと思う」
すると、ルースはさも簡単な事みたいに言った。
「そっか、じゃあそうするよ」
「えっ…?」
「俺ね、陛下に、アウディ君の為にもプリムラ家を潰すのは保留にして欲しいって言ってたの。
でもアウディ君がそう言うんなら、意味無いし」
「そ、んなこと、できるの…?」
「できるよ?」
じゃ、潰れるまで後宮に隠れててね…と言って、ルースは階段を降り、途中で倒れていた従者たちに「強めのヒール」をかけて去って行った。
呻き声が聞こえる…
「まずい」
従者たちが目を覚まさないうちに慌てて寮へ戻ると、そこには一番速度が出ると噂の2輪馬車と王国最速の御者であるアナガリス兄弟のうちの一人が居た。
「乗れ、アウディ。送る」
「えっ…あ、うん…」
いつの間に手配されていたんだろう?
でも、もう僕はその手際に驚くことも無かった。
そうして僕が後宮の一室に隠れて一週間後。
ルースの言葉通り、プリムラ家は公爵位と領地を返上させられて潰れた。
それから父上たちがどこへ行ったか…
誰も教えてはくれなかった。
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