上 下
451 / 586
学園6年目

最後の学園祭 3日目午後

しおりを挟む
闘技場に入ると、3回戦が終わって準決勝が始まるところだった。

対戦は
<ウィン兄VSディー兄>
<ゴード先輩VSカート君>
というなかなかの好カード。

ウィン兄とディー兄が魔法術で残ってるのなんて珍しいよな…
いつものエルさまとヘザー先輩がスタッフとして駆り出されてるのと、魔法侯爵がまとめて不在になっているせいでケンタウレア先生が審判になったのとが効いているのかしら。


闘技場の観客席へ上がると、ジョンさんがいた。
首には冷やしレモネード袋が下がっている。
飲み物は今年もこのスタイルで行くんだな…アイリス商会が儲かっていればいいんだけど。

「お、殿下、ルース。
 スプーラ殿下に会いに来られたのか?」
「まあそんなところです」
「こっちだ、案内しよう」

エルさまとスプーラ殿下の和解により、ジョンさんも大分気楽になったらしい。
去年は無の顔をしてたな…と思いながらジョンさんに付いていくと、筋肉質な集団を発見した。

「おお、アルファード殿にルース殿!
 あのときぶりだな!元気だったか?」
「ああ、おかげさまでな」

挨拶しているうちにウィン兄とディー兄が入場してきた。

<さあ準決勝!
 まさかのアナガリス兄弟対決がここに実現した!
 兄と弟、どっちが強いのか!!
 エルグラン王子、この戦いどう見ますか?>
<そうですね、魔法術に関してはどちらも積極的に魔法を使うより相手の魔法を利用する事に長けていますから…もしかしたら普通に剣での勝負になるかもしれませんね>
<そうですか!しかし二人ともまさかここで馬に乗って来るとはですね>
<そうですね、もしかしたら馬と会話しながら対戦するのかもしれませんね>
<馬と話せる?どうやって?>
<細かい事は省きますが、そういう魔法があるのです。それも見どころになるでしょうかね…>

エルさまの解説もだいぶ板に付いてるな。

<それでは対戦のお時間です!ファイッ!!>

「…風魔法剣!いくぜウィン!」
「…水魔法剣!来い、ディー!」

ガッキィイイン…!!
風と水がぶつかり合って、小さな嵐を巻き起こす。

<うわっ、すごい、魔法が…!>
<魔法剣同士の戦いというのはなかなか見ませんからね、なるほどこういうふうになるんですねー>
<えっ!これ初めての事例なんですか!?>

2人が打ち合う度に嵐が強くなり、風が水を吹き飛ばし…
渦巻く嵐の中、その嵐に乗って馬を駆る2人。
恐ろしい速度でぐるぐる回りながら打ち合う…

<こ、これ、無事に終わりますかね!!?>
<はは、まあそれは神殿の結界次第ですね~>
<まさに神のみぞ知ると言ったところかー!!>

でも、得てしてこういうのは急に決着が付くもので。

キィイイン…!ザクっ!

という音がしたと思ったら、ウィン兄の剣が弾き飛ばされていた。

「っち、やられた!!」
「はっはー、久々にウィンに勝ったぜ!!」

<こ、これはどういう…>
<水で手が滑ったんでしょうね、単純に>
<勝者!!ディー・アナガリスぅううう!>
…………わああああ!!

<しかし、場内相当地面が荒れましたね>
<そうですね、まあ魔法ですぐに治りますから次に影響は無いですよ、ね、ルース先生!>
<おーい、ルース!見とらんで手伝えー!>

「ええー!」

呼んでたってコレのことなのぉ!?

「…行ってやれルース」
「……仕方ないなぁもう」

俺はいちいち闘技場の入場口まで行くのも面倒なので観客席から飛び降りることにした。

「よっ…うんせ、ちょっと足元トルネード」

飛び降りる瞬間に足から風を出しつつ、華麗にふんわり降り……たつもりが、初心者の四股みたいになったあげくポテンと尻もちをついてしまった。

<………>

ダサい。

おじいちゃん先生が言う。

「魔法だけは相変わらず器用じゃのぉ!」
「…魔法だけ、ですがね…んじゃならしますか。
 んー…これちょっと土乾かしたほうがいいかな」
「そうじゃのう」
「んじゃ…ドライヤーのターボ強、平面円形、大」
ブゴオオオーー……
「クレイウォールやや弱、平面円形、大」
ズズ…スサァァァーー……
「……っと、こんなもんでどうですか?」

晴れた日のグラウンドを目指してみたんだけど、出来てるかな……。
気になっておじいちゃん先生を見る。
素敵な笑顔でサムズアップしている。

あ、イイネなんすね、良かった。

<…………!!?>
<あ、終わりましたね~、さっ、次、次>
<……わ、分かりました!
 準決勝第2試合!因縁の対決!
 ゴード・カメリア対カートランド・リリー!!>

うわぁぁああ!

<ルース先生、この試合の見どころは?>
<こちらの試合、魔法にガタイは関係ないところがはっきり分かる、魔法術ならではの一戦ですね>

俺がそう言うと、カート君が反論する。

「僕はもう小さくないですー!!」

確かに、なんだかんだでもうカート君も16歳だもんね。身長も伸びたし、なかなか男前に育ってきた。

<毎回水に流されるゴードさんですけど、今回はどうなりますかね?>
<カメリアで風魔法拳を相当やりこんでいるそうですから、もしかしたら水と雷が発現してるかも…そうなると今までのようには行かないでしょうね>

「カート!今年こそ俺が勝つぞ!」
「僕だって負けません!神童の名にかけて!」

おおー、やる気充分だな!
そして爽やか!!
これぞスポーツマンシップってやつだね!

<ファイッ!!>

どっちも頑張れー!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

【完結】優しくしないで

にゃーつ
BL
幼少期からの虐待でボロボロになっていたところを武田組若頭に拾ってもらう千秋。 虐待や暴力により心を閉ざしてしまう。 そんな時に武田組で出会ったのは自分の生涯に大きく関わる1人の男の子。その男の子との出会いが千秋を大きく変える。千秋の心の傷を癒やし、千秋に笑顔を取り戻したその男の子は武田空。千秋を拾った武田組若頭の息子だった。 空への想いを自覚するも自分の過去や立場を考え悩む千秋、それとは対照的に自分の思いを曝け出し行動に起こす空。 そこで千秋が下した決断とは!? 年の差12歳 年下×年上 トラウマを抱えながらも必死に空を想う千秋、千秋のためなら周りがどうなってもいいって思うほどに千秋に執着する空。 ちーがいないと生きていけない。 空がいないと不安。 愛を知らなかった千秋が空から大きすぎる愛を注がれる話。 初作品です 完結しました。 2/9 BL 31位!!!!

駄菓子屋継いだらロリハーレム

樋川カイト
恋愛
「道楽で始めた駄菓子屋を継ぐ」という条件で祖父の遺産を相続した青年。 彼にとってその条件は、まさに夢の世界への片道切符だった。 次々にやってくる魅力的なロリっ子たちの誘惑に、ロリコンを隠して生きてきた青年は耐え切ることができるのだろうか?(できません) ※この物語はフィクションです。実在する地名・人物・団体とは一切関係ありません。 ※作中での行為を実際に行った場合、法律に違反してしまう可能性がありますのでご注意ください。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい

香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」 王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。 リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。 『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』 そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。 真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。 ——私はこの二人を利用する。 ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。 ——それこそが真実の愛の証明になるから。 これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。 ※6/15 20:37に一部改稿しました。

ヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年に懐かれた結果、立派なヤンデレ美青年へと成長した彼に迫られ食べられたが早まったかもしれない件について。

宝楓カチカ🌹
BL
諸事情により預かった天使のような美貌を持つヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年(6歳)に懐かれた平々凡々とした鈴木春人くん(14歳)が十数年後、身長187.3cmのヤンデレ科ヤンデレ属に属する立派なヤンデレ美青年へと成長したかつてのヤンデレ気味のハーフ美少年に迫られ食べられて早まったかなあなんて思ってしまうお話。 ※閲覧は自己責任でお願いします。ムーンライトノベルズ様にも掲載させて頂いております(タイトルは微妙に異なります)(文字数制限でタイトル入りきりませんでした) ※※R18シーンには*つけてます。

運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~

日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。 女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。 婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。 あらゆる不幸が彼女を襲う。 果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか? 選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!

処理中です...