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学園6年目

最後の学園祭 1日目

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2学期も早々から、俺は毎日研究室で通常業務をこなす傍ら授業して実習して産科研修に行ってお見舞いして王宮の雑事を片付けて、エッチな事もしつつその合間に論文も書いて…。

毎日毎日結構なハードスケジュールをこなし、ついに本日。


「ここに学園祭の開催を宣言する」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ…


殿下の宣言で、ついに学園祭当日を迎えた。
眠い…。

欠伸をかみ殺す俺に、フィーデ君が聞いてきた。

「ルースさん…大丈夫ですか?」
「うん…まあ、何とか、学会と交流会は耐える…。
 だから、フィーデ君は次期生徒会長の意識を持って生徒会を指揮するんだよ…」
「はい!頑張ります!」

魔法術大会の解説はエルさまに、武術大会の解説はパパさんに投げてきたし、音楽科の定期演奏会はダンピエラ男爵お墨付きの演出家さんが来て仕切ってくれている。

演出家さんには
「ギャラ代わりに、シャラパールでの世紀の一戦を舞台化する許可を下さい」

と言われたので、とりあえずギャラを払った。
だって俺が許可するもんでもないじゃん?
好きにすれば良いと思うんだけどな。

俺はもう一度欠伸をかみ殺す。

「これが終わったら、冬休みに入れる…」

ぐったり気味の俺に、イドラ君が話しかける。

「ルース、大分お疲れだもんね。
 せめてと思って、クリスマスパーティーは新年会に変更しておいたよ」
「さすが出来る男…でも、やるのはやるんだ」

とはいえ、少しずれただけでも有難い。
なんせベルガモット教授の出産予定日がそのくらいだから…イドラ君には話せないけど。

ちょっと申し訳なく思っていると、イドラ君はにっこり笑ってさらに言った。

「だってこのパーティー券の売上は、アイリス商会の奨学金制度の大事な資金源だからね」
「そっか…大事なこ、
 ……は?」
「優秀な人材を育てて色んなとこへ紹介するんだ、結構いい商売になると思ってね」
「福祉とビジネスの両立!?」

いつの間にそんな事になっとんねん!!
それこそ俺の許可は!?

「だって、お金の無い人の為にもなる事だしさ。
 反対理由がないじゃん?」
「そりゃそうだけどさ…。
 はあ、だからか…最近教育関係のとこからやたら講演会の依頼が来るのは」
「えっ…講演会の依頼?それ詳しく…」
「絶対やらないからね!?」

そういうのこそベルガモット教授が復帰したら丸投げする案件ですよ。

「さて、俺はちょっと闘技場のほうを見てくるよ。
 明日からのイベントで不備があったら困るからね」
「そっか、イドラ君も大変だね…ふぁ…」
「…ルースほどじゃないよ?」

そういうとイドラ君は颯爽と講堂を去って行き、他の生徒たちも移動を始め、それと入れ替わりに神殿バザーのために神職がサササと入ってきた。
やけに身のこなしがスマートだな…

「お、ルース!元気か?」
「えっ……まさか、ダグさん!?
 もしかして、神職に転向したんですか!?」
「はは、違う違う…セント神官の手伝いでな」
「えっ、シンカンチョー来てるんですか?
 最近ブカツのほうに姿が見えないから…」

学園の近所に住んでるって言ってたし、たまには顔見せに来てくれてもいいのに…
とダグさんに溢したら、後ろから知った声が話しかけてきた。

「もう学園の神官長では無いのに訪ねてくるのもおかしいだろう」
「あっ!シンカンチョー!」
「もう神官長ではない、神官だ」

妙なところで律儀なシンカンチョーにちょっと笑ってしまう。
俺は言う。

「いいじゃないですか、今の神官長よりよっぽど神官長ですよ」
「はは、何だそれは」
「祈りの信仰度レベルが上ってことですね」

新任さんは単純に力不足っていうか…
情熱はあるし良い人なんだけどね?
そんな感じ。

「はっ…う、うむ、そうか…うぬ」
「…おい、セント!行くぞ!」

シンカンチョーはちょっとニヤニヤしながら、ダグさんに呼ばれてバザーの準備へ戻った。

さて、初日は魔法学会だ…
俺の今年の発表は「液体濃縮の古代魔法」。
合わせて魔道具のほうも発表するので、ネリネ教授とガーベラ先輩を探して最後の打ち合わせをしないと…。

「しかしダグさん、シンカンチョーの事呼び捨てにしてんだな…」

あの2人がどう進展してるのかは謎だけど、仲良きことは美しき事かな…と、いうことで。


急いで講堂を出ると、ウィン兄とディー兄に遭遇した。

「あっ、ルー!今から魔法棟?」
「ウィン兄!何だか久しぶりだね」
「それはルーが忙しすぎるからじゃない?」
「…そう?」
「だってあんまり武術棟のほうに来ないじゃん」
「あー…そっか、そうかも…。
 ウィン兄は今からどこへ行くの?」
「ディーと一緒に魔法棟。
 俺らも風魔法剣の巻き取りの実演に出るから、その打ち合わせ」
「そっかあ」

そういえば、馬に乗って戦ってる最中に巻き取りができるかどうかって、すっごい練習してたよな。
魔法に驚かないように調教した馬でも、なかなか難しいって言ってたっけ…。

「馬に乗るからさ、ちょっと広めに練習場使いたいんだよね」
「そういうのは確かプリムラ君のお仕事じゃなかったかな…」
「ああ、アウディか…了解、じゃあね!」
「うん、後でね!」

颯爽と講堂の外へ停めていた馬に飛び乗る2人。
やっぱ2人には馬が似合うな…

「ほら、ルーも乗って」
「えっ、いいの?」
「むしろ連れて行かないとみんなに怒られるよ」

俺は足からウィンドを出して馬に飛び乗る。
ふふ、これぐらいはできるようになったんだぜ!

「じゃ、しゅっぱーつ」

まあ、魔法棟までそんなに距離はないんだけどね。

「よーし、頑張るぞ!」
「おっ、急にどうしたのルー」

パカパカと馬が走る。
ゆらゆらとした揺れが眠気を誘う…

「いいよ、ルー。5分だけ寝な?」
「ん…うん…」

かくんと意識が途切れる。
俺が次に目を覚ましたのは…
魔法学会の30分前だった。
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