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学園6年目
実力のあるポンコツ
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ベルガモット教授が倒れて1ヶ月半。
俺は何故か魔法理論と魔法戦術、2つの授業の教壇に立っている。
中・上級の両方で非常勤講師を請け負っている為、毎日どこかで授業がある…
大誤算だ。
今、学園ではちょっとした異常事態が起きている。
ヘヴィさん以外の魔法侯爵たちの身内が、代るがわる毎週不幸に見舞われるのだ。
もっと簡単に言おう。
やつらは身内が死んだ事にしてずる休みしている。
ベルガモット教授の所へお見舞いに行くためだ。
今週は水のフェンネル教授の弟が、
先週は風のオレガノ教授の兄が、
先々週は雷のボロニア教授のお父さんが、
3週前は光のヒソップ教授のお父さんが…。
だから来週はヒソップ家の誰かが死ぬだろう。
「アホなのかな?」
そもそも魔法侯爵家の誰かが死んだりしたら、社交界も軍部も大騒ぎになるはずだ。
「何ですぐバレる嘘をつくんだ…」
この件を隠し通そうと言う気概が感じられない。
やつらに誓約書の意味は通じているのだろうか。
「はあ…」
だが騒ごうが喚こうが、奴らの魔法には敵わない。
ベルガモット教授に「学園の事は任せろ」と言ってしまった手前、やつらが空けた穴は俺が埋める事になってしまった。
仕方が無い。
ため息をつきながら教室を出ると、ヘヴィさんと会った。
「ああルース、授業は終わったのか」
「ええ、ヘヴィさんも?」
ちなみにヘヴィさんは2学期中の魔法実践中・上級をベルガモット教授から引き継いでいる。
俺は嘘忌引侯爵共の愚痴を溢す。
「…どうしてあんな適当なんですかね」
「うーん…そうだな。
ベルガモット侯曰く、彼らはベルガモット侯が出来る事は侯に頼れば良いと思っているそうだ」
「ほとんどじゃねーか!!」
つまり魔法以外はほぼポンコツって事?
もしかしてこの短絡的な行動はアホだからなの?
ねえ!!
俺が憤っているとヘヴィさんがぽつりと言った。
「あれを見たら、俺のほうが多少ましな気もしてきた」
「…そうですね」
二人で遠い目になる…が、ヘヴィさんが俺より一瞬早く正気に返って俺に言う。
「それでルース、魔法実践の実習なんだが」
「ああ…中級の?」
「火魔法以外の生徒の指導はどうしたらいい?」
「それは他の教授と話し合った方が…確か最初の実習は全員揃っ…」
「…揃わなくないか、この調子では」
OH,MY GOD.
「実習は再来週から、でしたね」
「そうだな」
「じゃ、多分ボロニア教授の番だ…釘を刺しておかなくちゃ」
「うむ、土の教授にはもう伝えておいたが」
「土…あ、おじいちゃん先生ですか」
そういえば「土の侯爵」も居ないな。
元々居ないのか火の侯爵みたいに空座なのか…
その辺どうなんだろう。
「まあ、いざとなったら「魔法総合魔生物魔石工学古代魔法研究部」に声を掛ければ何とでもなりますけどね…」
「確かにな」
あの部の多彩さたるや、
5属性持ちがエルさま・カート君・ソラン先輩・ビスカリア教授の4人。
6属性持ちが俺・ヘザー先輩・おじいちゃん先生の3人。
複数属性持ちのオンパレード…
古代魔法に至っては属性すら関係ないしな。
「複属性持ちも珍しくなくなって来ましたねー」
「火属性しかない俺からすれば羨ましい限りだ」
「1属性しか持ってないほうが珍しいですけどね」
「ベルガモット侯ぐらい何でも出来たらなぁ…」
「あれはもうそういう化け物ですからね…」
俺は、ベルガモット教授は「努力が必ず実る」というチートスキル持ちなんだと思っている。
「そういえばベルガモット教授、病状が少し落ち着いてきたらしいですよ」
先週末にお見舞いに行った時、後宮のお医者さんから「そろそろ安定期に入りそうだ」と聞かされた。
悪阻で食べれなかった分しっかり食べるのと、それから……
うちの歴代当主手記によると、こっちの世界では安定期に入ったら妊夫は週に1回程度オーラルセックスをするようにすると良いらしくて…
多胎の場合はさらに回数を増やしたほうが良い、とか何とか……。
ほんまか?
本気で言うてるか世界?
んでそれをそのまま奴らにお伝えしたらどうなるかって、そりゃもう全員出勤して来なくなるに決まってるよね。
誓約書に「教授の本分を全うすること」って書いてあるんだけどな…
ほんと阿呆に戦闘力持たすのヤバい。
やりたい放題に歯止めが効かなすぎる。
いざとなりゃ地位も金もいらないんだもん…
冒険者ギルドに登録すりゃ即日Aランクですよ?
俺はそこまで考えて、こっそりため息をつく。
ヘヴィさんが言う。
「そうか、落ち着いたら見舞いに行くかな」
「ええ、ぜひお二人で」
妊娠出産経験があるクリビアさんには、是非ともベルガモット教授に妊娠中の不安とか出産の体験とか聞かせてあげて欲しい。
あと、出来ればその…そういう?妊娠中の営み的なやつの相談にも乗ってあげて欲しい。
「あっ、そういえば今日はパパさんとこのブカツに行くんだった…じゃ、そろそろ失礼して」
「ああ」
さて、この件、どうやって話すかな…。
あー…頭痛い。
俺は何故か魔法理論と魔法戦術、2つの授業の教壇に立っている。
中・上級の両方で非常勤講師を請け負っている為、毎日どこかで授業がある…
大誤算だ。
今、学園ではちょっとした異常事態が起きている。
ヘヴィさん以外の魔法侯爵たちの身内が、代るがわる毎週不幸に見舞われるのだ。
もっと簡単に言おう。
やつらは身内が死んだ事にしてずる休みしている。
ベルガモット教授の所へお見舞いに行くためだ。
今週は水のフェンネル教授の弟が、
先週は風のオレガノ教授の兄が、
先々週は雷のボロニア教授のお父さんが、
3週前は光のヒソップ教授のお父さんが…。
だから来週はヒソップ家の誰かが死ぬだろう。
「アホなのかな?」
そもそも魔法侯爵家の誰かが死んだりしたら、社交界も軍部も大騒ぎになるはずだ。
「何ですぐバレる嘘をつくんだ…」
この件を隠し通そうと言う気概が感じられない。
やつらに誓約書の意味は通じているのだろうか。
「はあ…」
だが騒ごうが喚こうが、奴らの魔法には敵わない。
ベルガモット教授に「学園の事は任せろ」と言ってしまった手前、やつらが空けた穴は俺が埋める事になってしまった。
仕方が無い。
ため息をつきながら教室を出ると、ヘヴィさんと会った。
「ああルース、授業は終わったのか」
「ええ、ヘヴィさんも?」
ちなみにヘヴィさんは2学期中の魔法実践中・上級をベルガモット教授から引き継いでいる。
俺は嘘忌引侯爵共の愚痴を溢す。
「…どうしてあんな適当なんですかね」
「うーん…そうだな。
ベルガモット侯曰く、彼らはベルガモット侯が出来る事は侯に頼れば良いと思っているそうだ」
「ほとんどじゃねーか!!」
つまり魔法以外はほぼポンコツって事?
もしかしてこの短絡的な行動はアホだからなの?
ねえ!!
俺が憤っているとヘヴィさんがぽつりと言った。
「あれを見たら、俺のほうが多少ましな気もしてきた」
「…そうですね」
二人で遠い目になる…が、ヘヴィさんが俺より一瞬早く正気に返って俺に言う。
「それでルース、魔法実践の実習なんだが」
「ああ…中級の?」
「火魔法以外の生徒の指導はどうしたらいい?」
「それは他の教授と話し合った方が…確か最初の実習は全員揃っ…」
「…揃わなくないか、この調子では」
OH,MY GOD.
「実習は再来週から、でしたね」
「そうだな」
「じゃ、多分ボロニア教授の番だ…釘を刺しておかなくちゃ」
「うむ、土の教授にはもう伝えておいたが」
「土…あ、おじいちゃん先生ですか」
そういえば「土の侯爵」も居ないな。
元々居ないのか火の侯爵みたいに空座なのか…
その辺どうなんだろう。
「まあ、いざとなったら「魔法総合魔生物魔石工学古代魔法研究部」に声を掛ければ何とでもなりますけどね…」
「確かにな」
あの部の多彩さたるや、
5属性持ちがエルさま・カート君・ソラン先輩・ビスカリア教授の4人。
6属性持ちが俺・ヘザー先輩・おじいちゃん先生の3人。
複数属性持ちのオンパレード…
古代魔法に至っては属性すら関係ないしな。
「複属性持ちも珍しくなくなって来ましたねー」
「火属性しかない俺からすれば羨ましい限りだ」
「1属性しか持ってないほうが珍しいですけどね」
「ベルガモット侯ぐらい何でも出来たらなぁ…」
「あれはもうそういう化け物ですからね…」
俺は、ベルガモット教授は「努力が必ず実る」というチートスキル持ちなんだと思っている。
「そういえばベルガモット教授、病状が少し落ち着いてきたらしいですよ」
先週末にお見舞いに行った時、後宮のお医者さんから「そろそろ安定期に入りそうだ」と聞かされた。
悪阻で食べれなかった分しっかり食べるのと、それから……
うちの歴代当主手記によると、こっちの世界では安定期に入ったら妊夫は週に1回程度オーラルセックスをするようにすると良いらしくて…
多胎の場合はさらに回数を増やしたほうが良い、とか何とか……。
ほんまか?
本気で言うてるか世界?
んでそれをそのまま奴らにお伝えしたらどうなるかって、そりゃもう全員出勤して来なくなるに決まってるよね。
誓約書に「教授の本分を全うすること」って書いてあるんだけどな…
ほんと阿呆に戦闘力持たすのヤバい。
やりたい放題に歯止めが効かなすぎる。
いざとなりゃ地位も金もいらないんだもん…
冒険者ギルドに登録すりゃ即日Aランクですよ?
俺はそこまで考えて、こっそりため息をつく。
ヘヴィさんが言う。
「そうか、落ち着いたら見舞いに行くかな」
「ええ、ぜひお二人で」
妊娠出産経験があるクリビアさんには、是非ともベルガモット教授に妊娠中の不安とか出産の体験とか聞かせてあげて欲しい。
あと、出来ればその…そういう?妊娠中の営み的なやつの相談にも乗ってあげて欲しい。
「あっ、そういえば今日はパパさんとこのブカツに行くんだった…じゃ、そろそろ失礼して」
「ああ」
さて、この件、どうやって話すかな…。
あー…頭痛い。
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