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学園6年目
詰め込み過ぎた宴 3
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「叔父上は余罪の調べがつくまで幽閉させて頂く。
お父様についても同じく…まあ、最期の逢瀬が楽しめるようには計らいますよ」
「ま、待ってくれ、私は!!」
「お父様、後程取り調べでお会いいたしましょう」
後は司法の場に移して…ということで、王弟殿下・正室陛下、退場。
あとは…国王陛下。
「父上は、申し訳ないが王として最低限の仕事だけして頂き、今後3年は勅書の発効を止めて頂く」
スプーラ殿下の声が聞こえているのか微妙なくらい放心状態の国王に、エルさまがため息をつきながら言う。
「父上、白目を剥いている場合ではありませんよ。
そもそも毎日のように勅令をいくつも出しているからこういう目に遭うのではないですか?
部下が多少おかしな命令でも疑問に感じなかったのはそのせいですよ」
「う…うう……」
スプーラ殿下が国王に追い打ちをかける。
「そういうのを、無能の働き者と言うのです」
わを。
バッサリいったねー。
でもその言葉にようやく国王は気を取り直したらしく、とりあえずスプーラ殿下に怒鳴る。
「なっ!何をいうか貴様!!」
「自分の息子に『貴様』とは…兄上の口が悪いのは父上譲りだったんですね」
「無能は遺伝していないから大丈夫だ」
「本当ですか?」
「お前は私を何だと思っているんだ」
プッ、ははは…と何故か兄弟で笑う2人。
それからスプーラ殿下が続ける。
「毎日のように出される勅書に、皆振り回されておるのです。
官吏が過労で倒れる国など前代未聞。
城で働く者なら私も見て回ってやれますが、地方はどうなっているものやら…。
平穏な年が続いているというのに働き過ぎで人が倒れているのでは、緊急時には全滅ですぞ」
「…それは、その」
するとエルさまも言う。
「兄上が強権を発動して過労の者を無理矢理休ませていなければ、被害者はもっと多かったはずです。
…やり方が強引すぎてそれが悪評を産みはしましたが、ね?兄上」
「仕方なかろう、奴らに休めと言っても『自分が居なければ皆に迷惑が』などと言って休まんのだ。
温厚な私でもいい加減に怒る」
「…兄上、温厚だったんですか?」
「だからお前は私を何だと思っているんだ」
「ぷっ「ははは…」」
またも何故か兄弟で笑う2人。
兄弟仲が劇的に改善されているのがよく分かる…しかもわざとらしくない。
「うまいなぁ2人とも」
うちの殿下とは大違い。
「周りが勝手に対立を煽っていただけだからな。
くだらんオチだ」
ちょっとご機嫌が悪くなるうちの殿下。
でもまあ、何だかんだスプーラ殿下のほうが器用ではあるよな…
「ま、アルファード殿下のほうが強いですけどね」
「当然だ」
…うちの殿下の機嫌も直ったところで、壇上での親子喧嘩(一方的)もどうやら終盤。
兄弟仲の良さで会場の雰囲気も良くなって来たし…
そろそろ、いいんじゃないかな。
俺は壇上に向かって声をかける。
「スプーラ殿下!
この集まりは正室選びと側室披露と結婚披露宴だそうですが、どうなさるのですか?」
「ん、ああ…そうだな。
私は正室をゴードと決めているし、すでに何人もの証人の前で結婚式もやった。
父上たちに集められた正室候補の者や側室になるはずだった者には悪いが、これは揺らがぬ決意だ。
ここにいる皆も聞いたと思うが、ゴード以上に正室として相応しい者はいない。
だから、私とゴードの結婚披露宴だけ行って解散とする」
あ、一応披露宴はするんだ。
そうだよね、食事はもう作っちゃってるだろうし、無駄になるのも嫌だもんな。
「そろそろ料理も出るころだ。
右と左に分かれている理由ももはや無い。
派閥争いも、共に飯を食い酒を飲み、ダンスをして終わりにしよう」
「えっ、ダンスするんですか!?」
「うむ、貴族というものは集まったら踊ると相場が決まっているからな。
それに今日はローズで最も人気のあるフルート奏者もおられるのだ。
彼の音楽で踊ってみたいと思う者もいるだろう」
どうやらデューイ君はカメリアでも有名らしい。
有名な音楽院のあるカメリアで名が知れているなんて、やはり神童はレベルが違う…。
「さすがだなデューイ」
「え、えへへ…それほどでも」
速攻で俺の物アピールするカイト君。
まあそれもそうか、結婚披露宴は出会いの場でもあるからね。
「元正室候補の者たち、そこでぼんやりしている場合ではないぞ?
いい相手を見つけて帰れ。
それから『次期国王の側室』になるはずだった者たちも、すまんがお役御免だ。
叔父上のお手付きとはいえ、まだ若いのだし…
なあエルグラン、光魔法で尻の穴の具合を戻すことは出来んか」
「いやいやそんな都合の良い…ねえ、ヒソップ教授?」
「う~~ん、やってみないとこればっかりは」
「何その下世話な会話!?」
何を急に言うとんねん!
ほらぁ、会場の皆様も「は?」ってなっとるやん!
でも細かい事は気にしないタイプのスプーラ殿下は、会場をぐるりと見渡して号令をかけた。
「さあ、カメリア自慢の宮廷楽団の音で始めるぞ。
武家と魔法家の交流会だ。
とっておきの明るいやつを頼む!」
その言葉に、広間のバルコニーにつめていた楽団が楽器を構え…指揮者が立ち上がった。
「さあ、真ん中の絨毯を一番に越えるのは誰だ?」
「では最初に私と兄上で踊りましょう」
「うむ、それも良いな!」
スプーラ殿下とエルさまは手を取り合って壇を下り、大広間の真ん中に引かれた絨毯の上に立った。
楽団の演奏が始まる…
これで少しは派閥抗争が和らぐといいな。
「俺たちも踊るとするか」
「謹んでお断りしたい…」
「まあそう言うな、行くぞ」
一段落ついたからか、素敵な笑顔で俺を誘う殿下。
今日イチ顔が引きつる俺。
もはや他人のことを考えている場合じゃ無くなった俺は、あの日ダンス講師に教わった「姿勢を良くして殿下を見つめる」事だけに集中することにした。
お父様についても同じく…まあ、最期の逢瀬が楽しめるようには計らいますよ」
「ま、待ってくれ、私は!!」
「お父様、後程取り調べでお会いいたしましょう」
後は司法の場に移して…ということで、王弟殿下・正室陛下、退場。
あとは…国王陛下。
「父上は、申し訳ないが王として最低限の仕事だけして頂き、今後3年は勅書の発効を止めて頂く」
スプーラ殿下の声が聞こえているのか微妙なくらい放心状態の国王に、エルさまがため息をつきながら言う。
「父上、白目を剥いている場合ではありませんよ。
そもそも毎日のように勅令をいくつも出しているからこういう目に遭うのではないですか?
部下が多少おかしな命令でも疑問に感じなかったのはそのせいですよ」
「う…うう……」
スプーラ殿下が国王に追い打ちをかける。
「そういうのを、無能の働き者と言うのです」
わを。
バッサリいったねー。
でもその言葉にようやく国王は気を取り直したらしく、とりあえずスプーラ殿下に怒鳴る。
「なっ!何をいうか貴様!!」
「自分の息子に『貴様』とは…兄上の口が悪いのは父上譲りだったんですね」
「無能は遺伝していないから大丈夫だ」
「本当ですか?」
「お前は私を何だと思っているんだ」
プッ、ははは…と何故か兄弟で笑う2人。
それからスプーラ殿下が続ける。
「毎日のように出される勅書に、皆振り回されておるのです。
官吏が過労で倒れる国など前代未聞。
城で働く者なら私も見て回ってやれますが、地方はどうなっているものやら…。
平穏な年が続いているというのに働き過ぎで人が倒れているのでは、緊急時には全滅ですぞ」
「…それは、その」
するとエルさまも言う。
「兄上が強権を発動して過労の者を無理矢理休ませていなければ、被害者はもっと多かったはずです。
…やり方が強引すぎてそれが悪評を産みはしましたが、ね?兄上」
「仕方なかろう、奴らに休めと言っても『自分が居なければ皆に迷惑が』などと言って休まんのだ。
温厚な私でもいい加減に怒る」
「…兄上、温厚だったんですか?」
「だからお前は私を何だと思っているんだ」
「ぷっ「ははは…」」
またも何故か兄弟で笑う2人。
兄弟仲が劇的に改善されているのがよく分かる…しかもわざとらしくない。
「うまいなぁ2人とも」
うちの殿下とは大違い。
「周りが勝手に対立を煽っていただけだからな。
くだらんオチだ」
ちょっとご機嫌が悪くなるうちの殿下。
でもまあ、何だかんだスプーラ殿下のほうが器用ではあるよな…
「ま、アルファード殿下のほうが強いですけどね」
「当然だ」
…うちの殿下の機嫌も直ったところで、壇上での親子喧嘩(一方的)もどうやら終盤。
兄弟仲の良さで会場の雰囲気も良くなって来たし…
そろそろ、いいんじゃないかな。
俺は壇上に向かって声をかける。
「スプーラ殿下!
この集まりは正室選びと側室披露と結婚披露宴だそうですが、どうなさるのですか?」
「ん、ああ…そうだな。
私は正室をゴードと決めているし、すでに何人もの証人の前で結婚式もやった。
父上たちに集められた正室候補の者や側室になるはずだった者には悪いが、これは揺らがぬ決意だ。
ここにいる皆も聞いたと思うが、ゴード以上に正室として相応しい者はいない。
だから、私とゴードの結婚披露宴だけ行って解散とする」
あ、一応披露宴はするんだ。
そうだよね、食事はもう作っちゃってるだろうし、無駄になるのも嫌だもんな。
「そろそろ料理も出るころだ。
右と左に分かれている理由ももはや無い。
派閥争いも、共に飯を食い酒を飲み、ダンスをして終わりにしよう」
「えっ、ダンスするんですか!?」
「うむ、貴族というものは集まったら踊ると相場が決まっているからな。
それに今日はローズで最も人気のあるフルート奏者もおられるのだ。
彼の音楽で踊ってみたいと思う者もいるだろう」
どうやらデューイ君はカメリアでも有名らしい。
有名な音楽院のあるカメリアで名が知れているなんて、やはり神童はレベルが違う…。
「さすがだなデューイ」
「え、えへへ…それほどでも」
速攻で俺の物アピールするカイト君。
まあそれもそうか、結婚披露宴は出会いの場でもあるからね。
「元正室候補の者たち、そこでぼんやりしている場合ではないぞ?
いい相手を見つけて帰れ。
それから『次期国王の側室』になるはずだった者たちも、すまんがお役御免だ。
叔父上のお手付きとはいえ、まだ若いのだし…
なあエルグラン、光魔法で尻の穴の具合を戻すことは出来んか」
「いやいやそんな都合の良い…ねえ、ヒソップ教授?」
「う~~ん、やってみないとこればっかりは」
「何その下世話な会話!?」
何を急に言うとんねん!
ほらぁ、会場の皆様も「は?」ってなっとるやん!
でも細かい事は気にしないタイプのスプーラ殿下は、会場をぐるりと見渡して号令をかけた。
「さあ、カメリア自慢の宮廷楽団の音で始めるぞ。
武家と魔法家の交流会だ。
とっておきの明るいやつを頼む!」
その言葉に、広間のバルコニーにつめていた楽団が楽器を構え…指揮者が立ち上がった。
「さあ、真ん中の絨毯を一番に越えるのは誰だ?」
「では最初に私と兄上で踊りましょう」
「うむ、それも良いな!」
スプーラ殿下とエルさまは手を取り合って壇を下り、大広間の真ん中に引かれた絨毯の上に立った。
楽団の演奏が始まる…
これで少しは派閥抗争が和らぐといいな。
「俺たちも踊るとするか」
「謹んでお断りしたい…」
「まあそう言うな、行くぞ」
一段落ついたからか、素敵な笑顔で俺を誘う殿下。
今日イチ顔が引きつる俺。
もはや他人のことを考えている場合じゃ無くなった俺は、あの日ダンス講師に教わった「姿勢を良くして殿下を見つめる」事だけに集中することにした。
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