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学園6年目
詰め込み過ぎた宴 1
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あの結婚式大作戦から3日後。
カメリア城の大広間には王国中から貴族が集まり、
「右と左に分かれてる…」
センターに引かれたレッドカーペットを境に、右に体格のいい人、左に細身の人と分かれている。
「つまり右が武芸の家、左が魔法の家…?」
「なあルース、俺ら右側に混じっとけば良いの?」
ワルド先輩も右側が武芸の家(つまりスプーラ殿下派)だと気が付いたらしい。
その上でスプーラ殿下を支持するのだから右で良いかって話だけど…
「殿下、どうします?」
「適当に自分の体格に見合ったところへ混ざっておけばいい。
あまり歓迎もされていないようだし、できるだけ固まらず壁へ寄って気配を消しておけ。
それから、派閥で右左に分かれている事などあるはずがない。
いいな」
「あ、あー…了解しました」
そう、気が付かなかったなあエヘヘ~で良い。
断罪後どうなるのか分かんないから、下手に中心には居ないで壁際に散る…
ちなみにジョンさんとエルさまは居ない。
王弟殿下を運んでくる係だからだ。
「殿下とおじいちゃんは前に行かないんですか?」
「ふん、どうせ歓迎されとらんのじゃからどうでも良いわい」
「その通りですお祖父様」
まあそれもそうか。
カメリア国王としては俺たちの悪事を暴いてゴード先輩を追放しようと思ってるんだもんな、多分。
「お、始まるぞ…」
大広間の奥の扉が開いて、一段高い所へ国王・正室両陛下が入って来る。
スプーラ殿下の姿は無い…ローズの側室披露宴をパクるなら一緒に入って来るはずだけど、どうするのかな?
「皆の者、本日は「正室選びの儀」と、選ばれた正室とスプーラの「結婚披露宴」及び「側室披露の儀」を行う。
まず最初に、正室候補の者はこれへ」
そう国王が声を上げると、俺たちが入ってきた扉から「正室候補」と思われる人たちが入ってきた。
その中にゴード先輩は居ない…まあ、当然かな。
ざわつく場内は「聞いて無いぞ」の声多数。
「そんな儀式有ったのか」の声もちらほら…
あれから急に色々と足したらしい。
うん、俺も盛り込み過ぎだと思うな。
周囲の困惑を放置して、カメリア王は威厳たっぷりに言う。
「さて、お前たちに聞く。
正室になった暁にはスプーラをどう支えるのか」
すると、彼らは言う。
「私は、スプーラ殿下が安心して視察に出られるように致します」
「私は、スプーラ殿下が日々公務に集中できるように致します」
「私は、スプーラ殿下を支えこの国がより豊かになるようお手伝い致します」
……は?
「何やそのクッッッソぬるいプレゼンは!」
俺は小さい声でキレた。
思わずキレた。
それを聞いた殿下が笑う…
おじいちゃんも笑う。
「ご立腹だなルース」
「そりゃ怒りますよ!
具体的な話が何もない。
・どうやってそれを実現するのか
・その為に自分にはどういう力があるのか
最低限それくらいは打ち出せないと何をもってその人を選んだのかが不明瞭になります。
結果、折角の急ごしらえなのに、仕込みなのがバレバレですよ。
こんな国にゴード先輩はやれません!」
「全くだ」
そう言うと、殿下は大きな声で言った。
「カメリア王、もうすでに息子の正室は決めているんだろう?さっさと発表したらどうだ」
「な…っ」
「こんな茶番に金を掛けるだけの国力があることでも見せたかったのか?
ローズの側室披露宴のほうがましだな」
「煩い!勝手に下流伯爵家の大男を送りつけてきて、近衛騎士や魔法師達を篭絡し…
どういう教育を施したのかしらんが、見た目に寄らずくわえ込むのに長けていると見える」
「ほう…そうですかそうですか。
ところで、それはこの城と王家を守ってくれている者たちに対して『お前たちは色香に惑わされる愚か者だ』と言っているのと同じ事ですが……
宜しいのですね?」
「なっ、何を言う!ローズの小賢しい策などに我が国の精鋭が騙されるわけが、」
殿下は矛盾を突きつつ王様を煽る。
その煽りに乗ってくる方も来る方だけど…
そういや最初の謁見はあっちが先にキレてたっけ。
17歳の王子に50近い王様がマジギレしてる図ってなかなかだよな。
宴席なんだから笑って躱すとか無いのかね。
…無いか。
スプーラ殿下の感情を隠さないとこって多分ここ由来だもんな。
あっ。
…もしかしてこの人、闇魔法でも掛けられてるのか?
ちょっと確認させて貰おうかなあ…でもな。
俺が少し考え事をしているうちに、言い合いがヒートアップしてきたらしい。
殿下が煽る。
「そこまで仰るなら、我々がどのような策謀を巡らせているとお考えなのか聞かせて頂こう」
王様が怒鳴る。
「そんなもの!カメリアを支配しようとしているに決まっている!!」
殿下とカメリア王の舌戦は続く。
「どのような手を使って?」
「分かり切った事だ!!その醜男とわが息子の間に子をもうけさせ、裏からこの国を操って…」
「ほー?
そこまでして?
我が国が?
カメリアを欲する?
何故です?」
「そ、それは…っ、りょ、領土が、増える!」
「……………………それで?」
「それで、だと?」
殿下はカメリア王の言い分を鼻で笑った。
そして残酷な真実を突き付けた。
「そんな回りくどい方法を取らずとも、今すぐこの国を獲る事くらいできるがな」
そうして殿下は大広間をぐるりと見渡すアクションをする。
カメリアの貴族方は気が付く…
周囲をローズの精鋭に囲まれている事に。
「な、何を…」
「如何な愚鈍とて王家の者が、我々がどこで何をしてきたかを知らぬわけではあるまい。
世界最大級のミミズを2匹倒し、魔物の大発生を止め、3000の兵の前でも怯まず戦い勝利した。
分かるか?
俺の伴侶はな、国の為に俺と共に戦場へ立つ者だ。
そして、俺の側室たちもまたしかり。
王族に関係を迫られても断れる実力を持ちながら、それでも王家に忠誠を誓ってくれる忠義の者たちだ。
父親…いや、王であるなら、次の国王もまたそういう者を求めていると、なぜ理解しない?」
殿下の言葉に、なぜか正室陛下が青くなる。
ちなみに国王は真っ赤っかだ。
「な、な、何を」
「ついでに言っておくが、ゴードもまた我々と共に、先ほど言った修羅場全てに立ち向かった者だ。
連れて帰れというなら遠慮なくそうする。
ゴードは我々にとっても仲間であり戦友であり学友であり、大事な戦力の1人だからな。
既に我が国で開発されたばかりの技術の一端を伝えてしまったようだが、まだ間に合うだろう」
「な、なんだと」
「分からないのか?
ゴードとスプーラ殿が結婚すれば、わが国の最新軍事技術が手に入る。
各国大使が参加したがる我が国の「招待制」学術交流会の参加資格が手に入る。
そこの正室候補たちがそれぞれ口にする内容の事など1人で全部賄えるがな?」
会場がざわつく。
この国の貴族たちは、ゴード先輩にそれだけの価値があるとは思っても居なかったらしい。
まあ、両陛下の大反対もあって、紹介されてもいないらしいから仕方ないけどね。
2人して、無い事無い事吹聴してたんだろうな…
国王が言うんじゃ否定も出来ないだろうし。
ところで、招待制の学術交流会って何?
軍事技術の公開とかそういうのかな…
あとで聞こう。
殿下はさらにカメリア王を追い詰める。
「スプーラ殿は人を見る目がおありだ。
一目でゴードを…国を治める者の隣に必要な素質を持った者を見初めたのだからな。
誰かさんから私兵を差し向けられても背中を任せて戦える。
珍しくないというだけで端に追いやられている風魔法使いを主戦力に鍛え上げる事も出来る。
騎士と魔法使いの溝も埋められるかもしれんな?
どちらの事も十全に理解できるのだから」
「き、貴様…」
青くなる正室陛下、赤黒くなる国王陛下。
そして、最後に殿下は爆弾を落とす。
「本当に、伴侶に不倫をされていても気が付かない間抜けとは大違いだ」
「な、何を言うんだ、急に!?」
あーあ、一番反応しちゃいけない人が反応したぞ。
あーあ、国王陛下もさすがに気が付いたぞ。
「お、お前!!まさか、浮気、」
「馬鹿か!?あんなの嘘に決まってるだろ!!」
「馬鹿だと!?」
カメリア国王と伴侶が壇上で罵り合う。
それを眺めるカメリアの貴族たち。
飛び交う放送禁止用語の数々。
壇上の修羅場は掴み合い寸前。
もはや王の威厳なんてカケラもない……
と、その時。
バアン!!!
入場口の扉が思いっきり音を立てて開かれ、
「父上!いい加減おやめください!!」
…エルさまの声が高らかに響いた。
カメリア城の大広間には王国中から貴族が集まり、
「右と左に分かれてる…」
センターに引かれたレッドカーペットを境に、右に体格のいい人、左に細身の人と分かれている。
「つまり右が武芸の家、左が魔法の家…?」
「なあルース、俺ら右側に混じっとけば良いの?」
ワルド先輩も右側が武芸の家(つまりスプーラ殿下派)だと気が付いたらしい。
その上でスプーラ殿下を支持するのだから右で良いかって話だけど…
「殿下、どうします?」
「適当に自分の体格に見合ったところへ混ざっておけばいい。
あまり歓迎もされていないようだし、できるだけ固まらず壁へ寄って気配を消しておけ。
それから、派閥で右左に分かれている事などあるはずがない。
いいな」
「あ、あー…了解しました」
そう、気が付かなかったなあエヘヘ~で良い。
断罪後どうなるのか分かんないから、下手に中心には居ないで壁際に散る…
ちなみにジョンさんとエルさまは居ない。
王弟殿下を運んでくる係だからだ。
「殿下とおじいちゃんは前に行かないんですか?」
「ふん、どうせ歓迎されとらんのじゃからどうでも良いわい」
「その通りですお祖父様」
まあそれもそうか。
カメリア国王としては俺たちの悪事を暴いてゴード先輩を追放しようと思ってるんだもんな、多分。
「お、始まるぞ…」
大広間の奥の扉が開いて、一段高い所へ国王・正室両陛下が入って来る。
スプーラ殿下の姿は無い…ローズの側室披露宴をパクるなら一緒に入って来るはずだけど、どうするのかな?
「皆の者、本日は「正室選びの儀」と、選ばれた正室とスプーラの「結婚披露宴」及び「側室披露の儀」を行う。
まず最初に、正室候補の者はこれへ」
そう国王が声を上げると、俺たちが入ってきた扉から「正室候補」と思われる人たちが入ってきた。
その中にゴード先輩は居ない…まあ、当然かな。
ざわつく場内は「聞いて無いぞ」の声多数。
「そんな儀式有ったのか」の声もちらほら…
あれから急に色々と足したらしい。
うん、俺も盛り込み過ぎだと思うな。
周囲の困惑を放置して、カメリア王は威厳たっぷりに言う。
「さて、お前たちに聞く。
正室になった暁にはスプーラをどう支えるのか」
すると、彼らは言う。
「私は、スプーラ殿下が安心して視察に出られるように致します」
「私は、スプーラ殿下が日々公務に集中できるように致します」
「私は、スプーラ殿下を支えこの国がより豊かになるようお手伝い致します」
……は?
「何やそのクッッッソぬるいプレゼンは!」
俺は小さい声でキレた。
思わずキレた。
それを聞いた殿下が笑う…
おじいちゃんも笑う。
「ご立腹だなルース」
「そりゃ怒りますよ!
具体的な話が何もない。
・どうやってそれを実現するのか
・その為に自分にはどういう力があるのか
最低限それくらいは打ち出せないと何をもってその人を選んだのかが不明瞭になります。
結果、折角の急ごしらえなのに、仕込みなのがバレバレですよ。
こんな国にゴード先輩はやれません!」
「全くだ」
そう言うと、殿下は大きな声で言った。
「カメリア王、もうすでに息子の正室は決めているんだろう?さっさと発表したらどうだ」
「な…っ」
「こんな茶番に金を掛けるだけの国力があることでも見せたかったのか?
ローズの側室披露宴のほうがましだな」
「煩い!勝手に下流伯爵家の大男を送りつけてきて、近衛騎士や魔法師達を篭絡し…
どういう教育を施したのかしらんが、見た目に寄らずくわえ込むのに長けていると見える」
「ほう…そうですかそうですか。
ところで、それはこの城と王家を守ってくれている者たちに対して『お前たちは色香に惑わされる愚か者だ』と言っているのと同じ事ですが……
宜しいのですね?」
「なっ、何を言う!ローズの小賢しい策などに我が国の精鋭が騙されるわけが、」
殿下は矛盾を突きつつ王様を煽る。
その煽りに乗ってくる方も来る方だけど…
そういや最初の謁見はあっちが先にキレてたっけ。
17歳の王子に50近い王様がマジギレしてる図ってなかなかだよな。
宴席なんだから笑って躱すとか無いのかね。
…無いか。
スプーラ殿下の感情を隠さないとこって多分ここ由来だもんな。
あっ。
…もしかしてこの人、闇魔法でも掛けられてるのか?
ちょっと確認させて貰おうかなあ…でもな。
俺が少し考え事をしているうちに、言い合いがヒートアップしてきたらしい。
殿下が煽る。
「そこまで仰るなら、我々がどのような策謀を巡らせているとお考えなのか聞かせて頂こう」
王様が怒鳴る。
「そんなもの!カメリアを支配しようとしているに決まっている!!」
殿下とカメリア王の舌戦は続く。
「どのような手を使って?」
「分かり切った事だ!!その醜男とわが息子の間に子をもうけさせ、裏からこの国を操って…」
「ほー?
そこまでして?
我が国が?
カメリアを欲する?
何故です?」
「そ、それは…っ、りょ、領土が、増える!」
「……………………それで?」
「それで、だと?」
殿下はカメリア王の言い分を鼻で笑った。
そして残酷な真実を突き付けた。
「そんな回りくどい方法を取らずとも、今すぐこの国を獲る事くらいできるがな」
そうして殿下は大広間をぐるりと見渡すアクションをする。
カメリアの貴族方は気が付く…
周囲をローズの精鋭に囲まれている事に。
「な、何を…」
「如何な愚鈍とて王家の者が、我々がどこで何をしてきたかを知らぬわけではあるまい。
世界最大級のミミズを2匹倒し、魔物の大発生を止め、3000の兵の前でも怯まず戦い勝利した。
分かるか?
俺の伴侶はな、国の為に俺と共に戦場へ立つ者だ。
そして、俺の側室たちもまたしかり。
王族に関係を迫られても断れる実力を持ちながら、それでも王家に忠誠を誓ってくれる忠義の者たちだ。
父親…いや、王であるなら、次の国王もまたそういう者を求めていると、なぜ理解しない?」
殿下の言葉に、なぜか正室陛下が青くなる。
ちなみに国王は真っ赤っかだ。
「な、な、何を」
「ついでに言っておくが、ゴードもまた我々と共に、先ほど言った修羅場全てに立ち向かった者だ。
連れて帰れというなら遠慮なくそうする。
ゴードは我々にとっても仲間であり戦友であり学友であり、大事な戦力の1人だからな。
既に我が国で開発されたばかりの技術の一端を伝えてしまったようだが、まだ間に合うだろう」
「な、なんだと」
「分からないのか?
ゴードとスプーラ殿が結婚すれば、わが国の最新軍事技術が手に入る。
各国大使が参加したがる我が国の「招待制」学術交流会の参加資格が手に入る。
そこの正室候補たちがそれぞれ口にする内容の事など1人で全部賄えるがな?」
会場がざわつく。
この国の貴族たちは、ゴード先輩にそれだけの価値があるとは思っても居なかったらしい。
まあ、両陛下の大反対もあって、紹介されてもいないらしいから仕方ないけどね。
2人して、無い事無い事吹聴してたんだろうな…
国王が言うんじゃ否定も出来ないだろうし。
ところで、招待制の学術交流会って何?
軍事技術の公開とかそういうのかな…
あとで聞こう。
殿下はさらにカメリア王を追い詰める。
「スプーラ殿は人を見る目がおありだ。
一目でゴードを…国を治める者の隣に必要な素質を持った者を見初めたのだからな。
誰かさんから私兵を差し向けられても背中を任せて戦える。
珍しくないというだけで端に追いやられている風魔法使いを主戦力に鍛え上げる事も出来る。
騎士と魔法使いの溝も埋められるかもしれんな?
どちらの事も十全に理解できるのだから」
「き、貴様…」
青くなる正室陛下、赤黒くなる国王陛下。
そして、最後に殿下は爆弾を落とす。
「本当に、伴侶に不倫をされていても気が付かない間抜けとは大違いだ」
「な、何を言うんだ、急に!?」
あーあ、一番反応しちゃいけない人が反応したぞ。
あーあ、国王陛下もさすがに気が付いたぞ。
「お、お前!!まさか、浮気、」
「馬鹿か!?あんなの嘘に決まってるだろ!!」
「馬鹿だと!?」
カメリア国王と伴侶が壇上で罵り合う。
それを眺めるカメリアの貴族たち。
飛び交う放送禁止用語の数々。
壇上の修羅場は掴み合い寸前。
もはや王の威厳なんてカケラもない……
と、その時。
バアン!!!
入場口の扉が思いっきり音を立てて開かれ、
「父上!いい加減おやめください!!」
…エルさまの声が高らかに響いた。
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