425 / 586
学園6年目
結婚式大作戦 4 ~ゴード視点~
しおりを挟む
「…このままどこへ行く気でしょうか」
「ふむ、このルートなら叔父上の所じゃないか?」
スプーラ殿下は何でもない事のように言う。
この腹の座り様は凄い…やはりこの人は王の資質を持っているのだな。
「はてさて、まだ王位を諦めていないとは、叔父上にも困ったものだ」
「…殿下の叔父上ということは、王の弟君、ですか?」
「そうだ。困ったことに王位継承権第3位を持っていて、エルグランがローズで側室として子を産んだ場合には王位継承権は2位になる。
そして俺と次の王位を巡って争おうとしている。
俺が王になれば魔法使いはより冷遇されると言い続け、魔法関係の貴族を取り込んでいる」
別に魔法使いが嫌いなわけではないぞ?
細くてなまっちろい連中に、城内の忙しい部署をまかせるわけにはいかんというだけだ。
そういう連中は激務に耐えきれん事があるからな、
というのがスプーラ殿下の言い分だ。
そういうところが、誤解を招くと思うのだが。
確かに王城にいて思うのは、目の下にクマを作ってふらふら歩く文官が多いという事だ。
殿下が目の届く範囲にそういったものが居れば、問答無用で太るまで登城停止を命ずるそうだが…
それがみんなの目にどう映っているのかは考えた事が無いようだ。
そういうところが誤解を招くのだと思うのだが。
そうやって休ませた文官の仕事は殿下と側近たちで手分けして行っている。
だから書斎に持ち込まれる文書の内容はバラバラ。
だがそのおかげで水増し請求や不当な陳情差戻なども発覚したりする。
今の俺が手伝えるのは書類作成と計算くらいだが、そのうち何でも出来るように学ばなければな。
殿下は言う。
「エルグランは細い。
王という仕事に耐えられると思えんし、それに…
弟と戦うよりは叔父上と戦う方が、弱い者いじめにならずに済むだろう?」
…そういうところが誤解を招くのだと思うのだが。
さらに殿下は言う。
「叔父上は魔法使いでな、伴侶も魔法使いだ。
叔父上は水属性、伴侶殿は光属性だ」
「なるほど、ということは、最悪王弟殿下をぶん殴っても伴侶殿が治してくれる…ということですね」
「さすがゴード、そういう考え方もあるな」
最悪全員をぶん殴って式場へ行こう、と笑い合う。
色々あったけど俺はスプーラ殿下を愛してしまったし、支えたいと思う。
「しかし、私は剣士で魔法はどうも苦手だ」
「その為に私がいるのです、お任せを」
こちらに来て3ヶ月弱、近衛魔法師団の風魔法使いと共に風魔法拳の練習をしてきた。
最近では近衛騎士団のほうでも、興味を持って練習に参加してくれる方が増えた。
人に教える事で、より深く学べたはずだ。
今なら上位の水魔法使いにだって、勝てる。
「もう、簡単に流されたりしませんよ」
「頼もしいな、ゴードを伴侶に選んで正解だ」
馬車が停まった。
どうやら目的地に着いたらしい。
御者が馬車の外から震えた声で呼びかけてきた。
「殿下、到着して御座います」
「うむ、ご苦労であった。
我々が降りたら疾く去るがいい」
ここが式場でないことは百も承知で、堂々と馬車を降りるスプーラ殿下。
そしてエスコートされながら降りる俺…
これだけは一生慣れる気がしないな。
さて。
降りた先には武器を持った剣士たち。
その後ろは、魔法使いたちだろうか?
数十名の武装した人間が俺たちを囲っていた。
「皆の者、出迎えご苦労。
さて、神官殿はどちらかな?」
「ここは神殿ではないぞ、馬鹿王子!」
兵士の中の1人が王子に向かって暴言を吐く。
その言葉に高笑いして、スプーラ殿下が剣を抜く。
「さて、馬鹿はどちらか試してみよう。
何、腕の一本や二本、千切れても光魔法でくっつくらしいからな、殺すつもりで来れば良い」
俺は肩の力を抜き、拳を軽く握って構える。
「魔法ならこちらでお相手しよう」
そうして、軽く拳に火をともし…振ってみせる。
雄叫びが上がり、剣士たちが突っ込んでくる…
「はは、背中は任せるぞゴード」
「御意!」
そう簡単にやられてたまるか。
魔法殺しの兄弟子として、無様な姿は見せられん!
「ふむ、このルートなら叔父上の所じゃないか?」
スプーラ殿下は何でもない事のように言う。
この腹の座り様は凄い…やはりこの人は王の資質を持っているのだな。
「はてさて、まだ王位を諦めていないとは、叔父上にも困ったものだ」
「…殿下の叔父上ということは、王の弟君、ですか?」
「そうだ。困ったことに王位継承権第3位を持っていて、エルグランがローズで側室として子を産んだ場合には王位継承権は2位になる。
そして俺と次の王位を巡って争おうとしている。
俺が王になれば魔法使いはより冷遇されると言い続け、魔法関係の貴族を取り込んでいる」
別に魔法使いが嫌いなわけではないぞ?
細くてなまっちろい連中に、城内の忙しい部署をまかせるわけにはいかんというだけだ。
そういう連中は激務に耐えきれん事があるからな、
というのがスプーラ殿下の言い分だ。
そういうところが、誤解を招くと思うのだが。
確かに王城にいて思うのは、目の下にクマを作ってふらふら歩く文官が多いという事だ。
殿下が目の届く範囲にそういったものが居れば、問答無用で太るまで登城停止を命ずるそうだが…
それがみんなの目にどう映っているのかは考えた事が無いようだ。
そういうところが誤解を招くのだと思うのだが。
そうやって休ませた文官の仕事は殿下と側近たちで手分けして行っている。
だから書斎に持ち込まれる文書の内容はバラバラ。
だがそのおかげで水増し請求や不当な陳情差戻なども発覚したりする。
今の俺が手伝えるのは書類作成と計算くらいだが、そのうち何でも出来るように学ばなければな。
殿下は言う。
「エルグランは細い。
王という仕事に耐えられると思えんし、それに…
弟と戦うよりは叔父上と戦う方が、弱い者いじめにならずに済むだろう?」
…そういうところが誤解を招くのだと思うのだが。
さらに殿下は言う。
「叔父上は魔法使いでな、伴侶も魔法使いだ。
叔父上は水属性、伴侶殿は光属性だ」
「なるほど、ということは、最悪王弟殿下をぶん殴っても伴侶殿が治してくれる…ということですね」
「さすがゴード、そういう考え方もあるな」
最悪全員をぶん殴って式場へ行こう、と笑い合う。
色々あったけど俺はスプーラ殿下を愛してしまったし、支えたいと思う。
「しかし、私は剣士で魔法はどうも苦手だ」
「その為に私がいるのです、お任せを」
こちらに来て3ヶ月弱、近衛魔法師団の風魔法使いと共に風魔法拳の練習をしてきた。
最近では近衛騎士団のほうでも、興味を持って練習に参加してくれる方が増えた。
人に教える事で、より深く学べたはずだ。
今なら上位の水魔法使いにだって、勝てる。
「もう、簡単に流されたりしませんよ」
「頼もしいな、ゴードを伴侶に選んで正解だ」
馬車が停まった。
どうやら目的地に着いたらしい。
御者が馬車の外から震えた声で呼びかけてきた。
「殿下、到着して御座います」
「うむ、ご苦労であった。
我々が降りたら疾く去るがいい」
ここが式場でないことは百も承知で、堂々と馬車を降りるスプーラ殿下。
そしてエスコートされながら降りる俺…
これだけは一生慣れる気がしないな。
さて。
降りた先には武器を持った剣士たち。
その後ろは、魔法使いたちだろうか?
数十名の武装した人間が俺たちを囲っていた。
「皆の者、出迎えご苦労。
さて、神官殿はどちらかな?」
「ここは神殿ではないぞ、馬鹿王子!」
兵士の中の1人が王子に向かって暴言を吐く。
その言葉に高笑いして、スプーラ殿下が剣を抜く。
「さて、馬鹿はどちらか試してみよう。
何、腕の一本や二本、千切れても光魔法でくっつくらしいからな、殺すつもりで来れば良い」
俺は肩の力を抜き、拳を軽く握って構える。
「魔法ならこちらでお相手しよう」
そうして、軽く拳に火をともし…振ってみせる。
雄叫びが上がり、剣士たちが突っ込んでくる…
「はは、背中は任せるぞゴード」
「御意!」
そう簡単にやられてたまるか。
魔法殺しの兄弟子として、無様な姿は見せられん!
15
お気に入りに追加
2,467
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々
慎
BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。
※シリーズごとに章で分けています。
※タイトル変えました。
トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。
ファンタジー含みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる