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学園6年目

戦という名の総決算 11 ~ベルガモット教授視点~

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バルコニーからエルム邸内に侵入。
元々すべてが終わった時には燃やす予定の建物だ、どこを壊そうが構うことは無い。

「はっ!」

ガラス戸を叩き割り、中へ。

「エルム!自分ひとり逃げる気か!」

この戦にはいくつかの意味がある。

まず反乱分子を炙り出す事。
戦というものは普通、大将だけが指揮を執るのではない。
中隊長・小隊長の中には必ず、金で雇われたのではない者が混じっているはずだ。

それから、ローズ王国の軍事力を見せつける事。
この戦には他国からの手引きでやってきた兵も多いと聞く。
軍事大国と呼ばれるこの国の実力を見せ、戦争を仕掛けようとする国の心を挫く狙いだ。

最後に…
エルム公を追い込む為。
こちらにエルム公を引きつけ、逃げ道を地下道に限定し、確実に捉える。
その為には証拠隠滅の時間を与えないよう、余裕のない撤退を余儀なくさせる必要がある。

エルム公を追うのが誰の役だったのかは知らん。
ただ俺たちは「遊撃隊」だ。
作戦に逆らわなければ自由に行動することが認められている。

「誰だ!」
「邪魔だどけ!!」

バルコニーから攻めてくるという頭はあったのだろう、時間稼ぎを命じられたと思われる手下どもが向かってくるので倒す。
部屋の外へ出れば、何人かが行く手を阻もうとするのでそれも倒す。

重要な証拠があるとすれば書斎だろう。
確か2階のどこかだ…
エルム邸には一度だが来たことがある。

廊下を見渡せば、1つだけ扉の前に護衛が立っている部屋が見える。

「そこか…!ウィンドアロー!!」

護衛を風で吹き飛ばす。
屋敷の中で火を使うと証拠まで燃やしてしまうかもしれない。
自分に風属性が付いていて良かった。

そのまま扉を蹴破って中へ入り、書類を暖炉へ投げ込もうとしている奴らを叩く。
手足を折っておけばこれ以上何も出来ないだろう。
念の為に剣には鞘をつけたままにしているし、ロリィなら脚や腕が折れているのぐらいすぐ治せる。

急いでまた廊下へ出て、中央の階段まで戻り…

と、その時。

「エルム!!」

階段の下にエルムを見つける。
奴を守ろうと数人が俺の行く手を阻もうとする。
彼らも闇魔法で言う事を聞かされているのだろうか…

「人を弄びやがって…!」

一気に奴のところまで飛び降りてやろうかと思ったその時、

バキィイイ!!

木の板が割れたような音が聞こえ、

「エルム公!もうおしまいだ、観念しろ!!」

ケンタウレア殿の声が響く。
するとエルムが往生際悪く闇魔法を使う。

「く…『俺は敵ではない!敵はあいつだ!!』」
「…あいつ?」

エルムは俺を指さしてさらに言う。

「『あいつを殺せ!』」
「あいつ…?」

ケンタウレア殿がこっちを見る。
俺と目が合う。
そしてエルムに対して、言う。

「御免被る」
「なっ」

ケンタウレア殿の残像、
ボッ、ドッ、というような鈍い音。



エルム公とその護衛たちは彼の拳一発で沈んだのであった。





<お礼>
第11回BL大賞、投票頂きました皆様、誠に有難う御座いました。
皆様のおかげで、100位以内という快挙!!
本当にありがとうございます。
御礼遅れまして申し訳ございません。
気が利かない作者ですが、今後とも宜しくお願い致します!
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