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学園6年目
戦という名の総決算 4 ~ベルガモット教授視点~
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「あー…ブロウ…お前たち~あの男に付いて行って本当に良いのか~?命が惜しくば投降せよ~」
校長が前国王陛下としてエルム公陣営に呼びかけている。
何とも間が抜けた棒読みぶりで投降を呼びかけているが、完全にあれは敵を煽っているだけだろう…
「こんな時に~部屋の中で震えとるよ~な~情けない人間に付いて行って~悔いは残らんのか~?
お前らに~勝ち目なんぞ~ありゃせんぞ~!
おいヘヴィ、ちょっとアレ出してくれ」
「はっ」
ヘヴィ殿が学園祭の時に見せた炎の龍を、敵の眼前に再現する。
敵陣に動揺が走り、何十人かは剣を降ろし、何人かは剣を捨ててこっちへ走ってこようとする。
それを見て自分も続こうとする者が出…
その時、バルコニーに人影が現れた。
「『止まれ!!』『剣を捨てたものは拾え!』『持っている者は剣を構えよ!』『我々は戦わねばならん!!』」
その言葉に、投降しようとしていた者達の動きが止まる。
剣を捨てた者は言われた通りに剣を拾い、剣を降ろした者たちは剣を構え直した。
バルコニーの人影は演説を始めた。
「『見掛け倒しの魔法に囚われるな!』『正義は我々にある!』『愚かな王を倒し』
ローザンヌの平和を守るのは我らだ!」
…ローザンヌの平和?
ローズの平和ではなく?
「『王家に従わされた騎士達よ聞け!』
『正義は、この国だけでなく他国をも救おうとする我らにある!』
『今すぐ!諸悪の根源たるその爺の首を刎ねよ!』」
…光の魔石がくすんできた。
どうやらバルコニーにいる者は闇魔法使いのようだ…
となれば、エルム公か、エルム公の伴侶殿か、どちらかという可能性が高い。
「『君たち程の騎士道精神の持ち主ならば、こちらに正義のあることが分かるはずだ!』
『まずは前国王の首を刎ねよ!』」
バルコニーにいる者は、随分と熱心に校長の首を刎ねろと要求する。
だが、こちらの騎士は動じない。
なぜなら光のブローチと同じ効果がある魔道具を全員が持っているからだ。
ルースが手紙と共にそこら中へ配布したそれは、鉱山都市の職人の手に渡り一気に大量生産された。
魔石の色に拘らなくて済むそれは、どこの工房でも作ることが出来たのだ。
発注していたのは、もちろんアイリス商会。
あそこの長男がニコニコとそれを配布しているのを見て、俺はある種の恐怖を覚えた。
…向こうの主張が終わると、今度は校長が言い返した。
「やーーい、たんしょーほーけ~!
まぐろ~のチキン~~!!
粗~チン~のエルム~は童貞~以~下!!」
「何を言っているんだ」
「カルロス様御乱心か?」
最低過ぎる煽りに頭が痛くなる。
全く、校長は遊びが過ぎる!
腐っても公爵家、貴族の筆頭である家の当主がそんな簡単に煽られるわけが…
「やかましい糞爺!このくたばり損ないが!!」
「勃起も射精も人まかせ~
テク無し種無し度胸無し~!」
「種無しじゃねえ!!孕ませた事ぐらいあるわ!
このハゲ!!」
駄目だ、完全に煽られてる…煽られてるよ公爵。
俺は頭を抱える。
そこへ通信が入る。
「…エルム公の姿はあるか、だって?」
そうだな…喚き散らしている内容からして、信じたくは無いが、どうやらあれは本人のようだ。
俺は「バルコニーで怒鳴っている」と打電する。
通信が終わり、自陣の先頭に目を向ける。
すると、今度は妙な踊りと共に煽る校長が見えた。
「儂~がハゲな~らお前はつるっパゲ~お前の親父も~つるっパゲ~」
「うるさい!!誰かあのジジイを殺せ!!」
「おーやおや?闇魔法無しの命令じゃ~1人の兵も動かせんとは!
情けないのォ~公爵家の当主が聞いて呆れるわ~い!
お尻ぺんぺーん、うんこちんちーん!」
「この…!『お前らあのジジイを殺せ!!』」
うおおおお…と敵陣からウォークライ。
こちらも負けじと声を上げる。
校長の前に大きな盾を持ったソランが立ちはだかる…
誰かが言う。
「…史上最低の開戦だな」
俺はあちらに打電する。
開戦した、と。
校長が前国王陛下としてエルム公陣営に呼びかけている。
何とも間が抜けた棒読みぶりで投降を呼びかけているが、完全にあれは敵を煽っているだけだろう…
「こんな時に~部屋の中で震えとるよ~な~情けない人間に付いて行って~悔いは残らんのか~?
お前らに~勝ち目なんぞ~ありゃせんぞ~!
おいヘヴィ、ちょっとアレ出してくれ」
「はっ」
ヘヴィ殿が学園祭の時に見せた炎の龍を、敵の眼前に再現する。
敵陣に動揺が走り、何十人かは剣を降ろし、何人かは剣を捨ててこっちへ走ってこようとする。
それを見て自分も続こうとする者が出…
その時、バルコニーに人影が現れた。
「『止まれ!!』『剣を捨てたものは拾え!』『持っている者は剣を構えよ!』『我々は戦わねばならん!!』」
その言葉に、投降しようとしていた者達の動きが止まる。
剣を捨てた者は言われた通りに剣を拾い、剣を降ろした者たちは剣を構え直した。
バルコニーの人影は演説を始めた。
「『見掛け倒しの魔法に囚われるな!』『正義は我々にある!』『愚かな王を倒し』
ローザンヌの平和を守るのは我らだ!」
…ローザンヌの平和?
ローズの平和ではなく?
「『王家に従わされた騎士達よ聞け!』
『正義は、この国だけでなく他国をも救おうとする我らにある!』
『今すぐ!諸悪の根源たるその爺の首を刎ねよ!』」
…光の魔石がくすんできた。
どうやらバルコニーにいる者は闇魔法使いのようだ…
となれば、エルム公か、エルム公の伴侶殿か、どちらかという可能性が高い。
「『君たち程の騎士道精神の持ち主ならば、こちらに正義のあることが分かるはずだ!』
『まずは前国王の首を刎ねよ!』」
バルコニーにいる者は、随分と熱心に校長の首を刎ねろと要求する。
だが、こちらの騎士は動じない。
なぜなら光のブローチと同じ効果がある魔道具を全員が持っているからだ。
ルースが手紙と共にそこら中へ配布したそれは、鉱山都市の職人の手に渡り一気に大量生産された。
魔石の色に拘らなくて済むそれは、どこの工房でも作ることが出来たのだ。
発注していたのは、もちろんアイリス商会。
あそこの長男がニコニコとそれを配布しているのを見て、俺はある種の恐怖を覚えた。
…向こうの主張が終わると、今度は校長が言い返した。
「やーーい、たんしょーほーけ~!
まぐろ~のチキン~~!!
粗~チン~のエルム~は童貞~以~下!!」
「何を言っているんだ」
「カルロス様御乱心か?」
最低過ぎる煽りに頭が痛くなる。
全く、校長は遊びが過ぎる!
腐っても公爵家、貴族の筆頭である家の当主がそんな簡単に煽られるわけが…
「やかましい糞爺!このくたばり損ないが!!」
「勃起も射精も人まかせ~
テク無し種無し度胸無し~!」
「種無しじゃねえ!!孕ませた事ぐらいあるわ!
このハゲ!!」
駄目だ、完全に煽られてる…煽られてるよ公爵。
俺は頭を抱える。
そこへ通信が入る。
「…エルム公の姿はあるか、だって?」
そうだな…喚き散らしている内容からして、信じたくは無いが、どうやらあれは本人のようだ。
俺は「バルコニーで怒鳴っている」と打電する。
通信が終わり、自陣の先頭に目を向ける。
すると、今度は妙な踊りと共に煽る校長が見えた。
「儂~がハゲな~らお前はつるっパゲ~お前の親父も~つるっパゲ~」
「うるさい!!誰かあのジジイを殺せ!!」
「おーやおや?闇魔法無しの命令じゃ~1人の兵も動かせんとは!
情けないのォ~公爵家の当主が聞いて呆れるわ~い!
お尻ぺんぺーん、うんこちんちーん!」
「この…!『お前らあのジジイを殺せ!!』」
うおおおお…と敵陣からウォークライ。
こちらも負けじと声を上げる。
校長の前に大きな盾を持ったソランが立ちはだかる…
誰かが言う。
「…史上最低の開戦だな」
俺はあちらに打電する。
開戦した、と。
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