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学園6年目
今までの成果、色々
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「しかし、魔石錬成ってのは便利ですね」
「そうでしょう?
この薬品を充分にまぶして、インフェルノだかいうので熱するだけですからね」
「その業火が大変だけどな!
まあその辺も魔道具で追々…今はカートが頼りだけど」
「頑張ります!」
***
ゴーレムを応用した筆記だけをする魔道具…
それを、2台。
頼まれた魔石工学研究室では試行錯誤が続き、ついに一つの結論が出たらしい。
ネリネ教授とガーベラ先輩が説明する。
「文字を書くってのは繊細なもんでな」
「だから、タイプライター型を採用しようかと思うんだけど…」
「文字と数字しか伝えられんが、どうだ?」
「充分だと思います!」
ただタイプライター型となると、キーの一つ一つに小さい魔石を埋め込んで回路を繋ぐ必要がある…
という事は、かなり小さな魔石をかなりの数、しかも色とサイズを揃えないといけない。
だったら一旦砕いて粉にした奴を魔石錬成で固めて作ったらどうかという話になり、色を揃える為にスライムの無属性魔石を使おうという話になった。
「ここに来て、色んな研究が1つにまとまって来ましたね」
「スライム牧場の奇跡から始まって…なあ」
スライム牧場で飼われているスライムは、飼われている理由が分かったのか、ほとんどの個体が白い魔石…魔力は吸収するが何の属性もついていない魔石を排出するようになった。
それらは新しい牧場へ連れていけば最初こそモソモソと増えるが、一定数に達する(数が増えすぎて処分が始まる)と白い魔石を排出するようになるのだ。
「やはりある程度の知能があるんですね」
「種の生存を最大の命題にして適応するんだろうね」
こうなったスライムは性格が各段に穏やかになるため、もう少し研究が進めば「各ご家庭に1匹」の時代が来るのではないかと期待されている。
「スライムを研究することで魔生物の大発生を察知するという目標からはだいぶズレましたがね」
「副産物としちゃかなりのもんですよ」
「ええ、街の衛生に役立つなんて思ってもみませんでした…ウォーター」
「これに魔力を吹き込む小遣い稼ぎも生まれましたしね…ライフグロウ」
話をしながらも、魔力を単一属性に染める魔道具を装着して無属性魔石に吹き込むエルさまとヘザー先輩。
2人の周りも副産物の植物と水で湿地帯みたいになってきた…
すごい。
俺とベルガモット教授は、絶賛タイプライターの練習中だ。
魔力を通しつつのタイピングはいつの間にか勝負に変わっていた。
「…終わり!」
「ええっ…!また負けかあ」
ベルガモット教授が地味に早い。
すでにタッチタイピングの域…何で?
「ピアノをやっていたからその分有利なんだろう。
何が役に立つか分からんもんだ」
「…何でもいつかは役に立つんだなあ、やっぱ」
ワルド先輩は感慨深げにつぶやく。
それを聞いたルディ君はクスリと笑う。
この古代魔法研究生2人による研究が実を結んだ結果が光魔法の魔道具に活かされて、巡り巡ってこの国の物流が混乱することを防いでしまったのだから世の中分からないものだ。
今、2人は祈りの結界を再現する魔法陣を紙に書き込んで、それがちゃんと動作するか確認作業をしている。
遠距離から掛けられた闇魔法なら治癒系の光魔法でも無効化できちゃうみたいだけど、掛けられる前に防げたほうがいいに決まってるもんね。
「大神殿の祈りの場で見つけた魔法陣、やっぱすげえな」
「一生懸命書き写して帰った甲斐がありましたね!こんなところで役に立つなんて」
いつの間にか古代魔法を使いこなす様になってるし、意外な伏兵という感じだろうか。
なんたって古代魔法は属性に縛られずに魔法が使えるという特徴がある。
「武器になるような魔法陣もいっぱい書いておきましょう!」
「だな、魔石さえあれば発動できるんだし便利かもな」
魔石さえあれば…。
なんて贅沢な響き!!
今回の戦いに関してはその辺のお金を気にしなくていいもんな。
スライム牧場産の魔石もバンバン使っているし、牧場側からすれば特需だけど…
あんまり戦争特需って良いもんじゃないからなあ。
これに味を占めると、お金に困ったら戦争しよう!ってなっちゃうから…。
「…しかし、何で戦争がしたいんだろう」
そんな俺の呟きに、ジョンさんとケンタウレア先生が魔石をゴリゴリ潰しながら答える。
「ああ、公爵派の話か?」
「さてなあ…分からん」
粉になった魔石を坩堝に1グラムずつ計り入れながら、トレッドさんが言う。
「帝国の再興…みたいな話じゃなかったっけ?」
「帝国…ってことは属国が欲しいのかな?」
「それか、周辺国に色々と援助してるのが気に入らないのかもな」
「相当額を貸してるからなぁ」
あげた訳じゃなくて貸付なんだけどな。
我が国、びっくりするほど債権国だから…。
やっぱり訳が分からないな。
前世の「この世界によく似たゲーム」だって、そういう路線じゃなかったと思う…
多分やけどな?
「そうでしょう?
この薬品を充分にまぶして、インフェルノだかいうので熱するだけですからね」
「その業火が大変だけどな!
まあその辺も魔道具で追々…今はカートが頼りだけど」
「頑張ります!」
***
ゴーレムを応用した筆記だけをする魔道具…
それを、2台。
頼まれた魔石工学研究室では試行錯誤が続き、ついに一つの結論が出たらしい。
ネリネ教授とガーベラ先輩が説明する。
「文字を書くってのは繊細なもんでな」
「だから、タイプライター型を採用しようかと思うんだけど…」
「文字と数字しか伝えられんが、どうだ?」
「充分だと思います!」
ただタイプライター型となると、キーの一つ一つに小さい魔石を埋め込んで回路を繋ぐ必要がある…
という事は、かなり小さな魔石をかなりの数、しかも色とサイズを揃えないといけない。
だったら一旦砕いて粉にした奴を魔石錬成で固めて作ったらどうかという話になり、色を揃える為にスライムの無属性魔石を使おうという話になった。
「ここに来て、色んな研究が1つにまとまって来ましたね」
「スライム牧場の奇跡から始まって…なあ」
スライム牧場で飼われているスライムは、飼われている理由が分かったのか、ほとんどの個体が白い魔石…魔力は吸収するが何の属性もついていない魔石を排出するようになった。
それらは新しい牧場へ連れていけば最初こそモソモソと増えるが、一定数に達する(数が増えすぎて処分が始まる)と白い魔石を排出するようになるのだ。
「やはりある程度の知能があるんですね」
「種の生存を最大の命題にして適応するんだろうね」
こうなったスライムは性格が各段に穏やかになるため、もう少し研究が進めば「各ご家庭に1匹」の時代が来るのではないかと期待されている。
「スライムを研究することで魔生物の大発生を察知するという目標からはだいぶズレましたがね」
「副産物としちゃかなりのもんですよ」
「ええ、街の衛生に役立つなんて思ってもみませんでした…ウォーター」
「これに魔力を吹き込む小遣い稼ぎも生まれましたしね…ライフグロウ」
話をしながらも、魔力を単一属性に染める魔道具を装着して無属性魔石に吹き込むエルさまとヘザー先輩。
2人の周りも副産物の植物と水で湿地帯みたいになってきた…
すごい。
俺とベルガモット教授は、絶賛タイプライターの練習中だ。
魔力を通しつつのタイピングはいつの間にか勝負に変わっていた。
「…終わり!」
「ええっ…!また負けかあ」
ベルガモット教授が地味に早い。
すでにタッチタイピングの域…何で?
「ピアノをやっていたからその分有利なんだろう。
何が役に立つか分からんもんだ」
「…何でもいつかは役に立つんだなあ、やっぱ」
ワルド先輩は感慨深げにつぶやく。
それを聞いたルディ君はクスリと笑う。
この古代魔法研究生2人による研究が実を結んだ結果が光魔法の魔道具に活かされて、巡り巡ってこの国の物流が混乱することを防いでしまったのだから世の中分からないものだ。
今、2人は祈りの結界を再現する魔法陣を紙に書き込んで、それがちゃんと動作するか確認作業をしている。
遠距離から掛けられた闇魔法なら治癒系の光魔法でも無効化できちゃうみたいだけど、掛けられる前に防げたほうがいいに決まってるもんね。
「大神殿の祈りの場で見つけた魔法陣、やっぱすげえな」
「一生懸命書き写して帰った甲斐がありましたね!こんなところで役に立つなんて」
いつの間にか古代魔法を使いこなす様になってるし、意外な伏兵という感じだろうか。
なんたって古代魔法は属性に縛られずに魔法が使えるという特徴がある。
「武器になるような魔法陣もいっぱい書いておきましょう!」
「だな、魔石さえあれば発動できるんだし便利かもな」
魔石さえあれば…。
なんて贅沢な響き!!
今回の戦いに関してはその辺のお金を気にしなくていいもんな。
スライム牧場産の魔石もバンバン使っているし、牧場側からすれば特需だけど…
あんまり戦争特需って良いもんじゃないからなあ。
これに味を占めると、お金に困ったら戦争しよう!ってなっちゃうから…。
「…しかし、何で戦争がしたいんだろう」
そんな俺の呟きに、ジョンさんとケンタウレア先生が魔石をゴリゴリ潰しながら答える。
「ああ、公爵派の話か?」
「さてなあ…分からん」
粉になった魔石を坩堝に1グラムずつ計り入れながら、トレッドさんが言う。
「帝国の再興…みたいな話じゃなかったっけ?」
「帝国…ってことは属国が欲しいのかな?」
「それか、周辺国に色々と援助してるのが気に入らないのかもな」
「相当額を貸してるからなぁ」
あげた訳じゃなくて貸付なんだけどな。
我が国、びっくりするほど債権国だから…。
やっぱり訳が分からないな。
前世の「この世界によく似たゲーム」だって、そういう路線じゃなかったと思う…
多分やけどな?
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