385 / 586
学園6年目
【閑話休題】近衛騎士と王都魔法師 ~ヘヴィ視点~
しおりを挟む
「ケイ、お前の息子が見つかったって?」
「ああ、情けない事に学園で保護されたそうだ」
春先の「側室披露宴」からこっち、近衛騎士団も王都魔法師団も大騒ぎだ。
「他の団員は、まだ?」
「…そっちに言われたく無えけどな!」
誰が裏切者で誰が闇魔法被害者なのかが分からないが、近衛のほうはエルムを追っていた一団が消え、それを指揮していた副団長の1人も消え…
「11人も居なくなるなんて想定外だ。
まあそのうち一人は見つかったがな」
「…うちはまだ誰も見つからんようだ。
騎士団のほうがまだましだな…」
魔法師団のほうは団長ともう1人の副団長に、秘書と研究者がごっそりと消えた。
その数22名…単純に倍だ。
元々魔法師団のほうが人が少ないというのにこれでは…。
今どこかの国から攻め込まれたら、戦力不足で大変な事になるだろう。
それこそ一時的にルースやエル王子、ベルガモット殿と4侯爵、古代魔法の3人に盾のソラン…
……ふむ。
何とかなりそうな気がするな。
そこまで心配しなくても良いか。
「騎士団のほうも、戦力が足りんのなら学園へ頼めば良いのではないか?」
「ケンタウレア師とジョン殿か?それも手だな」
まあ、少なくとも今の段階でカメリアから戦を仕掛けられる可能性は低い。
ゴードとスプーラ殿下が結婚するのだ。
しかもスプーラ殿下の一目惚れで!!
まあ、シャラパールとの軍事同盟もあるしな。
戦力のほうは何とかなりそうだ、と2人で笑い合う。
それにしても…とケイが言う。
「団長の動機は分かりやすいが、他はどうだ」
「どうだと言われてもな…
爵位がどうのと言うがそもそも魔法師団には俺より爵位の高い奴しか居らんし、彼らが裏切っていないのに爵位だけで疑うのもおかしな話だろう」
可愛がっていた弟子のゴードにしても伯爵家だったし、後輩も男爵家や子爵家の出身だ。
だが騎士爵の俺を彼らが慕ってくれないかと言うとそういうことは無いわけで…。
先輩方も「俺」という駒の事を理解してくれている人が大半だ。先の団長が俺を活かした戦術や采配をしてくれたからだろう。
「それを今の団長殿が理解していないとは思えん。
やはり闇魔法の支配下にあると考えるのが妥当だろう」
「お前ってホント…まあいいか」
団長殿はゴードと同じく伯爵家の出身だ。
魔法師団でも騎士団でも伯爵家出身者は少ないが、いる。
その上は見たことが無い…
純粋に子どもが少ないからだろう。
ゴードも2人兄弟だと言っていたし、カイトも確か2人だ。
「まあ、その辺はどうしてもな。
伯爵家以上は領地があるから政略結婚も多いから…。
ただそうなると、爵位だけじゃなくて地縁とか血統とか出てくるんだよ」
ケイによると、同じ伯爵家でもゴードの家と団長殿の家では団長殿の家の方が格上なんだそうだ。
ゴードの家は子爵家や男爵家からの伴侶ばかりだが、団長殿の家は何度も伯爵家同士で婚姻を結び、4代前には侯爵家から伴侶を迎えたから…だそうだ。
なんだそれは。
伴侶など、優しくて可愛らしくてしなやかで芯が強くてどうしようもなく惹かれ合い身も心も求めあえるほど愛し合える者、というだけで良いと思うのだが。
「ふむ、面倒なものだな」
「とてつもなくな!
近衛騎士団には必須の知識だから、それを覚えるのが一番大変なんだよ」
「ああ、それで筆記試験があるのか」
「その通り!
しかもそれが何でか変わったりしてな。
そういう情報を集めるために着たくもねえヒラヒラ着てダンスして社交して…嫌になるぜ」
「それでダンスの試験があるのか」
「そういうこと」
は~ウンザリウンザリ、と軽口を叩くケイ。
俺より少しだけ低い位置にあるその頭には金色ではない毛が混じっている。
「…いつの間にか白髪が増えたな」
「お互い様だろ」
確かに俺の頭にも白いものが増えた。
「入団したときはこんなことになるなんて思っても見なかったぜ」
「それは俺も同感だ」
王宮に勤めて20年以上。
まさか内戦の危機が迫ろうとは…
「命令さえあれば、エルム領もイフェイオン領も焼き尽くしてくるんだが」
「領民に甚大な被害が出るから止めろ」
「…屋敷だけならどうだ?」
「一気に仕留められればな」
それじゃ、と言ってケイと分かれる。
さっきの思い付きを提示して、残った魔法師団の不安を和らげてやろう…
「それにしても、爵位か」
上の方は大変だな…。
やはりヘザーにそんな思いをさせたくは無い。
俺は改めて、あの糞餓鬼に息子はやれない…と思うのだった。
「ああ、情けない事に学園で保護されたそうだ」
春先の「側室披露宴」からこっち、近衛騎士団も王都魔法師団も大騒ぎだ。
「他の団員は、まだ?」
「…そっちに言われたく無えけどな!」
誰が裏切者で誰が闇魔法被害者なのかが分からないが、近衛のほうはエルムを追っていた一団が消え、それを指揮していた副団長の1人も消え…
「11人も居なくなるなんて想定外だ。
まあそのうち一人は見つかったがな」
「…うちはまだ誰も見つからんようだ。
騎士団のほうがまだましだな…」
魔法師団のほうは団長ともう1人の副団長に、秘書と研究者がごっそりと消えた。
その数22名…単純に倍だ。
元々魔法師団のほうが人が少ないというのにこれでは…。
今どこかの国から攻め込まれたら、戦力不足で大変な事になるだろう。
それこそ一時的にルースやエル王子、ベルガモット殿と4侯爵、古代魔法の3人に盾のソラン…
……ふむ。
何とかなりそうな気がするな。
そこまで心配しなくても良いか。
「騎士団のほうも、戦力が足りんのなら学園へ頼めば良いのではないか?」
「ケンタウレア師とジョン殿か?それも手だな」
まあ、少なくとも今の段階でカメリアから戦を仕掛けられる可能性は低い。
ゴードとスプーラ殿下が結婚するのだ。
しかもスプーラ殿下の一目惚れで!!
まあ、シャラパールとの軍事同盟もあるしな。
戦力のほうは何とかなりそうだ、と2人で笑い合う。
それにしても…とケイが言う。
「団長の動機は分かりやすいが、他はどうだ」
「どうだと言われてもな…
爵位がどうのと言うがそもそも魔法師団には俺より爵位の高い奴しか居らんし、彼らが裏切っていないのに爵位だけで疑うのもおかしな話だろう」
可愛がっていた弟子のゴードにしても伯爵家だったし、後輩も男爵家や子爵家の出身だ。
だが騎士爵の俺を彼らが慕ってくれないかと言うとそういうことは無いわけで…。
先輩方も「俺」という駒の事を理解してくれている人が大半だ。先の団長が俺を活かした戦術や采配をしてくれたからだろう。
「それを今の団長殿が理解していないとは思えん。
やはり闇魔法の支配下にあると考えるのが妥当だろう」
「お前ってホント…まあいいか」
団長殿はゴードと同じく伯爵家の出身だ。
魔法師団でも騎士団でも伯爵家出身者は少ないが、いる。
その上は見たことが無い…
純粋に子どもが少ないからだろう。
ゴードも2人兄弟だと言っていたし、カイトも確か2人だ。
「まあ、その辺はどうしてもな。
伯爵家以上は領地があるから政略結婚も多いから…。
ただそうなると、爵位だけじゃなくて地縁とか血統とか出てくるんだよ」
ケイによると、同じ伯爵家でもゴードの家と団長殿の家では団長殿の家の方が格上なんだそうだ。
ゴードの家は子爵家や男爵家からの伴侶ばかりだが、団長殿の家は何度も伯爵家同士で婚姻を結び、4代前には侯爵家から伴侶を迎えたから…だそうだ。
なんだそれは。
伴侶など、優しくて可愛らしくてしなやかで芯が強くてどうしようもなく惹かれ合い身も心も求めあえるほど愛し合える者、というだけで良いと思うのだが。
「ふむ、面倒なものだな」
「とてつもなくな!
近衛騎士団には必須の知識だから、それを覚えるのが一番大変なんだよ」
「ああ、それで筆記試験があるのか」
「その通り!
しかもそれが何でか変わったりしてな。
そういう情報を集めるために着たくもねえヒラヒラ着てダンスして社交して…嫌になるぜ」
「それでダンスの試験があるのか」
「そういうこと」
は~ウンザリウンザリ、と軽口を叩くケイ。
俺より少しだけ低い位置にあるその頭には金色ではない毛が混じっている。
「…いつの間にか白髪が増えたな」
「お互い様だろ」
確かに俺の頭にも白いものが増えた。
「入団したときはこんなことになるなんて思っても見なかったぜ」
「それは俺も同感だ」
王宮に勤めて20年以上。
まさか内戦の危機が迫ろうとは…
「命令さえあれば、エルム領もイフェイオン領も焼き尽くしてくるんだが」
「領民に甚大な被害が出るから止めろ」
「…屋敷だけならどうだ?」
「一気に仕留められればな」
それじゃ、と言ってケイと分かれる。
さっきの思い付きを提示して、残った魔法師団の不安を和らげてやろう…
「それにしても、爵位か」
上の方は大変だな…。
やはりヘザーにそんな思いをさせたくは無い。
俺は改めて、あの糞餓鬼に息子はやれない…と思うのだった。
24
お気に入りに追加
2,467
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな?
そして今日も何故かオレの服が脱げそうです?
そんなある日、義弟の親友と出会って…。
【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。
白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。
最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。
(同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!)
(勘違いだよな? そうに決まってる!)
気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々
慎
BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。
※シリーズごとに章で分けています。
※タイトル変えました。
トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。
ファンタジー含みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる