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学園6年目

学内探索 5

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学園内をほぼほぼ一周し、全員に闇飛ばしして本日の業務終了…

と、いきたいところだけど。

「しかし、結構な人数だな」
「マグノリア教授、どこでやられてきたんだろう」
「魔法棟関係者でほぼ唯一ですもんね…」

闇魔法にかけられてたのは、
・武術棟12名
・一般棟25名
・魔法棟4名(うち2名は武術棟と掛持)
・その他1名(カレンデュラ先生)
の、合計41名。

圧倒的に魔法棟の人数が少ないのは、魔法耐性があるからなのか、単純に人数が少ないからか…。

神官長に頼んで全員を講堂に寝かせ、その間に新しいポテチのフレーバーを試す。
簡単に出来そうなバジル風味と、チャレンジングなハニーバター…

「ハニーバターはどうしてもしっとりするな」
「パリパリ感が大事となると、ちょっと考えないとですかね…」
「でも甘じょっぱくて美味しい!」

ソラン先輩が太鼓判を押してくれたのでこのまま開発を進めていこう。
パリパリ感は風を当てる事で何とか…。


神官長が作った「お菓子作り研究会」は、新しい寄付の対価を開発したいという信心に溢れたブカツだ。
端的に言うと、神殿直属の商品開発部…
やる気があるのは良い事だ。

「ところでルース、新しいクッキーの事なのだが…」

と、神官長が俺にレシピの相談をしかけた時、

「う…う~ん…うん?」
「叔父さん!」「マグノリア教授!!」
「いっ…たた…」「あたた…」
「おお、新人!起きたか!」

最初に闇飛ばした2人とマグノリア教授が目を覚ましたのだった。

***

「…というわけで、俺は2学期頭に数日、どっかで闇の古代魔法の文献を見せられて解読させられてたんだ」
「つまり、掛けられた魔法は<命令オーダー>と<強制忘却ノーリマインド>だろうな」
「ホスタから手紙が来た後は学園にいたわけだから、それより前ってことですね」

結構前の話だけど、殿下によると<命令>は闇魔法の下位、<強制忘却>は上位に当たるらしい。
2つも掛けられてたら、大分前の事でも影響が残りやすいのかもしれない。

「お前たちはどうだ」
「え…、えっと、ルースさんと仲良くなって、服を買いに行く約束を取り付けろ…みたいな」
「服屋…?」

何でだろう…と思ったけど、そういえば市場には強力結界が張られてるんだった。
だからって市場の次に行きそうな場所が服屋だと思うのも変だ。
あれほど本屋デートをしてきたのを知らないわけじゃないだろう。
ってことは服屋でないといけない理由があるってことだよな…。

「そうなると、これは<潜在的命令シークレット・オーダー>だろうな。
 <洗脳ブレインウォッシュ>よりは掛ける時間が短くて済むが、これも上位魔法の1つだ」
「なるほど」

闇属性の魔法となると、学ぶ機会なんてほとんど無い。
学園でも授業は行われていないし、それこそ王宮に近い人間でないと…

「…闇属性の人って、どこで魔法を学ぶんですか?」
「魔術の基礎訓練をした後、王宮の書庫で独学だ。
 闇魔法を使役する者としての心構えなどは騎士団で叩き込まれる。
 弱き者を助け、悪に加担しない心というやつだ」

だから闇属性が発現した人は国に申告する義務があるのだ、と殿下。
王宮で学ばなきゃいけないんだからそういうことにもなるのか…

「魔法の師匠的な方は居ないんですか?」
「強いて言えば父になるだろうな。
 闇属性の研究は王家の仕事でもある」
「だから文献が豊富だったんですね…」

そうだ、と殿下は言って、続けた。

「言葉に魔力を乗せる…というのが、そうした闇属性の特徴だ。
 イメージして魔法名を詠唱すれば発動する魔法のほうが少ない」
「実に古代魔法っぽいですね…」
「そもそも戦闘に使う魔法ではないものが多いからな。
 <影縛り>や<幻影>くらいか?
 あの「賢者の杖」で出せるのもそのくらいだな」

少なっ!
その為にあの十何億っていう魔石が嵌ってんの?
めちゃ贅沢やな…。

「でも、殿下が前に言ってたじゃないですか?
 闇属性を極めるのは他の属性全部を極めるのと一緒って。
 あれはどういう意味で?」
「ああ、あれはだな。
 闇魔法最上位の<迫真の幻影トゥルーファントム>を使えば…
 例えば相手にファイヤーで攻撃されたと相手に信じ込ませることで、ファイヤーで攻撃したのと同じ効果を相手に与えられる…という事だ。
 対生物に限るが」
「おお、なるほど…」

つまり強烈な暗示を掛けるってことか。
これはこれで恐ろしいな…。

「しかし、いつどこでどんな手段で…っていうのがイマイチ見えませんね」
「これだけいれば、誰か覚えてそうなもんだけどねえ」
「全員の行動範囲を確認しましょう、そうすれば共通点があるかもしれません」
「さすがフィーデ!賢いなぁ~」

生徒会2人の会話からそれなりの案が出たところで、ちらほらと起き出す人々が出る。
神官長が言う。

「ルース、この全員に何か祈りでもするか?」
「ああ…っと、魔法が練習できなくなるのは困るので、頭だけ保護する感じで…いけます?」
「ああ、任せろ」
 
神官長は胸を張って答え、祈りの言葉を紡ぐ。
これで多少は時間が稼げると良いんだけど…。

明日からは闇魔法被害者への聞き取りと、闇飛ばしの講習…

頭痛くなってきた。
うーん…
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