上 下
381 / 586
学園6年目

学内探索 3

しおりを挟む
「第2寮、異常なし」

俺たちは第2寮にあるデューイ君とカイト君の部屋を確認した後、共用部を捜索。
手紙という可能性も考えて暖炉や風呂釜、焼却炉にキッチンまで調べたがそれらしきものの痕跡は無かった。

捜索中にソラン先輩に連れられてイドラ君が合流。
ブローチを見せて貰うと魔石の照りがほぼ無くなっていたので、念の為に闇飛ばし。

「まっぶしい…こりゃ目が覚めるわけだ」
「頭が痛かったりとかしない?」
「うん、別に何も無いよ」

ブローチの効果はギリギリ間に合っていたらしい。
良かった。

イドラ君にここまでの経緯を簡単に説明する。
名簿の件に関しては「今まで中身を盗まれた事がない」というアイリス商会の地下金庫に入っているそうで、とりあえずひと安心。
ただそうなると、無差別に闇魔法かけまくってる可能性も出てくるんだけど…。

「じゃあ次は武術棟ですね」
「会った奴からどんどん闇飛ばししていくか?」
「それしか無いですね…。
 せめて闇魔法にかけられてるかどうかが分かるものがあればなあ」
「んじゃそういう魔道具も考えるか」
「ビスカリア教授、魔生物学からのアプローチも考えましょう」
「そうだな、大発生時の魔生物と通常の魔生物の様子の違いから割り出せるものがあるかも…」

そんな話をしているうちに武術棟に到着。
1階のピロティには、今日も属性付与魔法に勤しむ一団がいる。

「あっ!ルースさん、おはようございます!」
「来年から魔法剣の指導はどなたが…?」
「それについては、近衛騎士団から講師を派遣する方向で話を進めていますよ!」
「そうなんですか…良かった!」
「それはそうと、皆さんにご協力頂きたい事が…」

何だなんだ…と1階にいた生徒が集まってくる。
事情を説明し、1人ずつ闇飛ばし…

「うあああ!!」
「ぎゃあああ!!」

2人発見。

***

武術棟のあちこちでピッカピッカしていたら、数人の闇魔法被害者が発見された。
ちなみにケンタウレア先生始め講師陣は異常なし。
倒れている生徒たちの面倒を任せて、第3~6寮まで一気に確認して回ることにした。

「78人中12人か…」
「よく魔力続くね、ルース」

んん、まあ確かに。
まだ全然いける感じする…我ながらすごい魔力量になったもんだ。
死にかけただけのことはあるな。

「しかし効率が悪いねえ」
「闇属性を使えるやつがいれば実験も出来るが…
 校長、何とかならないんですか?」
「む、儂は使えんぞ…それで一悶着したんじゃから」
「そうなんですか?」

おじいちゃんが言うには、ローズ王家は代々闇属性を持って生まれる人が多いらしい。
なんなら、かつては闇属性があるなしで王位継承権が決まっていたそうで…

「儂をすっ飛ばして息子が王になるべきじゃとか、まあ色々あったのう。
 じゃから元々息子が王位を任せられる歳になったらすぐに譲るという条件で王になったんじゃ…
 研究をするのにもちょうど良かったし、今となってはそれで良かった気もするがの」

公爵派どもの暗躍はだいぶ前から始まっていたんだな。
随分前から王位簒奪の計画はあったんだ。
おじいちゃんの代に公爵派だった奴らは何故だか全員墓の中で、もうどうしようもないけれど…。

「陛下って闇属性なんですか?」
「そうじゃよ?
 儂も儂の伴侶も闇属性なぞ持っとらんのにのう…」

ここで1つの疑問が頭をもたげる。

「属性って遺伝…関係ありますかね?」
「昔はそう信じられとったが、どうじゃろうの。
 儂も伴侶も闇属性で無かったのに息子は闇属性じゃし、孫も闇属性じゃし…よく分からんのう」

昔はそう信じられていたけど、今は否定されつつある…というところかな。

「まあ、遺伝だという前提があるから、ローズ王国の不思議な「お家継承」法が残っているんでしょうしねぇ」
「確かにね!養子の跡継ぎできない、びっくりでした」
「あ、やっぱ変だと思いますよね」
「子ども1人だけのに、仕事2つあるも変よ!
 領主と大臣一緒、無理。
 どっちか伴侶に任せる、したら別居。
 それだから子ども出来ないでしょう?」
「ですよねえ」

そもそも代々大臣を務めているっておかしくない?
そこは能力主義であるべきだと思うんだよね…
大臣の意見をまとめる宰相もいないし。

改革すべきところだらけだな…
実は結構いびつな国なのかもしれない、この国。

「こんなだからいつまでも帝国再興の夢が消えないのかもな…」

何かすることいっぱいだな。
卒業してからも忙しくなりそう…

俺、大丈夫なんか?
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

目の前の魔法陣と男に巻き込まれて

葵桜
BL
※厨二病時の厨二病による厨二病異世界BL王道?ファンタジー さっきから根暗くん根暗くんって何なんだ。 名前くらい覚えろやぁ! ってなんで壁ドンされてんのかなぁ...? あ、なんか君の後ろに魔法陣が見えるな!ハハハ! 勇者ぽい自己中顔面アイドル君に巻き込まれなんか異世界転移をとげるらしい。 どうか恋人ができますように。 いや、無双ができますように? 年に数回ぼちぼちとリメイクしています。 終わったあと興味があればぜひもう一度読んでください。 完結は…。できないかもしれないです。気長にお待ちください。申し訳ございません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...