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学園5年目
SOS
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今日も研究室での一日が終わり、さて今年のクリスマスはどうするか…なんて殿下と話をしていると、急にアレクさんがやってきた。
「ルース様、ゴード先輩から手紙っす」
「えっ…何だろ?」
早速封を開けてみると、そこには…
「タスケテ」
と、たった一言書かれた紙が入っていた。
何か緊急事態が起きたのだろう。
慌ててウィン兄とディー兄に頼んで、最も飛ばせる2人乗りの馬車を出してもらい、殿下と乗り込んで、とるものも取り敢えず急いで王宮へ…
「とにかく飛ばすぞ!しっかり座ってろ!!」
馬車は恐ろしいスピードで走り出す。
このまま行けば半日で着きそう…!
「待ってて、ゴード先輩…!」
とりあえず俺は、ただ祈った。
***
王宮に付いて、そのまま馬車で後宮へ向かう。
「ゴード先輩の部屋は!?」
「3階の一番奥だ」
「了解です!!」
ダッシュで3階に上がって、一番奥の部屋…
「何この鍵!?」
「逃走防止用の部屋だからな」
「これネリネ式鍵罠じゃないですか!?」
「逃走防止用の部屋だからな」
2回言った!?
「なんちゅうとこに!!ゴード先輩!?」
扉を叩く。
叩くけどこれ…聞こえてるか?
分厚過ぎない?ねえ!
「逃走防止用の部屋だから」
「監禁部屋とおっしゃい!!」
なんちゅう扱い!そんなことするから「タスケテ」なんて手紙が来るんですよ!?
殿下とぎゃあぎゃあ言っていると、ウィン兄が解錠係の人を連れて来た。
「今開けますのでお待ちください」
「お願いします!」
まず外側のダイヤルを回し、鍵を挿して右に回してから左。
ぐっと押し込んでまた右…開いた!!
「ゴード先輩!あ、あれ、開かない」
「おや、内側からの鍵が締まっておりますね」
「開けてください!」
「分かりました」
ようやく重い扉が開かれ、薄暗い部屋へ…
「ゴード先輩!?」
そこには…
「誰だ?
私たちの睦時を邪魔するのは…」
「あ!る、ルース!!助け、あっ、あんっ」
部屋のでかいベッドの上でじゃれ合う、スプーラ殿下と、キスマークにまみれたゴード先輩が、居た。
***
婚前交渉も辞さないっていうか、もうガッツリやっちゃってるじゃん。
まあ、どっちもハタチ超えてるし…って、そういう問題じゃねえ!!
「スプーラ殿下、ここで何を?」
いや殿下、聞かなくても分かる…
「ああ、ゴードの閨教育が不十分だったので、詰め込み教育をな」
「閨教育と言えば何でも許されるわけじゃありませんよ!?」
シーツにくるまっているゴード先輩は、全身が性感帯になっているようでちょっと触れない…
こういう時には興奮を抑えるハーブティーだ。
すぐに処方しよう…
現場を殿下にお任せして実家へ行き、ハーブを調合して戻る。
ゴード先輩はバスローブ的なものを着て、何とかかんとかソファに移動していた。
「とりあえずこれを飲んで」
「ふ、うう」ズズっ…
「何か胃にいれたほうがいいと思って、果物とパン粥を頼んでおいた」
「ありがとうございます」
ゴード先輩は温かいものを飲んだからか、目の視点が合い始めた。
「るーす…てがみ、とどいた?」
「ええ、届きましたよ」
よかった、と言って、ゴード先輩は隣に座っている俺の手を握った。
「その、うまれて、はじめての、ことばかりで、おれ」
「怖かったんですか?」
「…うん…」
完全に幼児化しているゴード先輩は、俺の肩におでこをくっつけた。
俺は先輩の短髪をもしゃもしゃするように撫でた。
先輩はおでこをぐりぐり押し付けてくるので、満足するまでなでなでするしかない…。
それを見てお怒り気味の殿下はスプーラ殿下に説教を始めた。
「なぜこんな無茶をなさるのです」
「仕方ないだろう、彼があまりに魅力的で…しかも初物尽くしとくれば、頂かないという選択肢は無い」
うーん完全な俺様タイプだなあ。
ゴード先輩を託して良いもんか悩む…。
「ゴード先輩、カメリア、行きたい?」
「やだ、むり…」
「スプーラ殿下のこと、好き?」
「…きらい」
「!!?」
弾かれたように立ち上がり、先輩に近づくスプーラ殿下。
「な、なぜだ、ゴード!?」
俺の後ろに隠れようとする先輩。
「やめてって、いったのに、する…いや!」
「わ、わかった、もうしないから、こっちにおいで」
「きらい!あっちいって!!」
そう言って俺に抱き着くゴード先輩…
そして真っ赤になって怒る王子様たち。
「ルースから離れろ、ゴード。
お前には別の部屋を用意する、こっちへ来い」
「ゴード!なぜこんなありきたりの男に…!!」
失礼だな!
どうせ「ありきたり」ですよ…と、ところが、その言葉に俺よりもカチンと来た人がいたようで。
「スプーラ殿下、私のルースに今、何と?」
「ふん、何もかもが普通の男だと言っただけだ。
この男のどこが良いのか、全く理解できん!」
「貴様…表へ出ろ」
「望むところだ」
私が勝ったらゴードは攫って行く、とか、
俺が勝ったら頭を垂れて謝罪しろ、とか、
わめきながら2人はドカドカと出て行く…
「…だいりせんそう?」
「なぜそんな言葉だけ出てきた!?」
「う~…」
あ、あかん。泣きそう。
おーよしよし、いい子いい子…
「おれ、がんばった、いっぱいがんばったの」
「そうですね、頑張りましたね」
「うん…」
…そうして先輩のナデナデ要求は、果物とパン粥が来るまで続いたのであった。
「ルース様、ゴード先輩から手紙っす」
「えっ…何だろ?」
早速封を開けてみると、そこには…
「タスケテ」
と、たった一言書かれた紙が入っていた。
何か緊急事態が起きたのだろう。
慌ててウィン兄とディー兄に頼んで、最も飛ばせる2人乗りの馬車を出してもらい、殿下と乗り込んで、とるものも取り敢えず急いで王宮へ…
「とにかく飛ばすぞ!しっかり座ってろ!!」
馬車は恐ろしいスピードで走り出す。
このまま行けば半日で着きそう…!
「待ってて、ゴード先輩…!」
とりあえず俺は、ただ祈った。
***
王宮に付いて、そのまま馬車で後宮へ向かう。
「ゴード先輩の部屋は!?」
「3階の一番奥だ」
「了解です!!」
ダッシュで3階に上がって、一番奥の部屋…
「何この鍵!?」
「逃走防止用の部屋だからな」
「これネリネ式鍵罠じゃないですか!?」
「逃走防止用の部屋だからな」
2回言った!?
「なんちゅうとこに!!ゴード先輩!?」
扉を叩く。
叩くけどこれ…聞こえてるか?
分厚過ぎない?ねえ!
「逃走防止用の部屋だから」
「監禁部屋とおっしゃい!!」
なんちゅう扱い!そんなことするから「タスケテ」なんて手紙が来るんですよ!?
殿下とぎゃあぎゃあ言っていると、ウィン兄が解錠係の人を連れて来た。
「今開けますのでお待ちください」
「お願いします!」
まず外側のダイヤルを回し、鍵を挿して右に回してから左。
ぐっと押し込んでまた右…開いた!!
「ゴード先輩!あ、あれ、開かない」
「おや、内側からの鍵が締まっておりますね」
「開けてください!」
「分かりました」
ようやく重い扉が開かれ、薄暗い部屋へ…
「ゴード先輩!?」
そこには…
「誰だ?
私たちの睦時を邪魔するのは…」
「あ!る、ルース!!助け、あっ、あんっ」
部屋のでかいベッドの上でじゃれ合う、スプーラ殿下と、キスマークにまみれたゴード先輩が、居た。
***
婚前交渉も辞さないっていうか、もうガッツリやっちゃってるじゃん。
まあ、どっちもハタチ超えてるし…って、そういう問題じゃねえ!!
「スプーラ殿下、ここで何を?」
いや殿下、聞かなくても分かる…
「ああ、ゴードの閨教育が不十分だったので、詰め込み教育をな」
「閨教育と言えば何でも許されるわけじゃありませんよ!?」
シーツにくるまっているゴード先輩は、全身が性感帯になっているようでちょっと触れない…
こういう時には興奮を抑えるハーブティーだ。
すぐに処方しよう…
現場を殿下にお任せして実家へ行き、ハーブを調合して戻る。
ゴード先輩はバスローブ的なものを着て、何とかかんとかソファに移動していた。
「とりあえずこれを飲んで」
「ふ、うう」ズズっ…
「何か胃にいれたほうがいいと思って、果物とパン粥を頼んでおいた」
「ありがとうございます」
ゴード先輩は温かいものを飲んだからか、目の視点が合い始めた。
「るーす…てがみ、とどいた?」
「ええ、届きましたよ」
よかった、と言って、ゴード先輩は隣に座っている俺の手を握った。
「その、うまれて、はじめての、ことばかりで、おれ」
「怖かったんですか?」
「…うん…」
完全に幼児化しているゴード先輩は、俺の肩におでこをくっつけた。
俺は先輩の短髪をもしゃもしゃするように撫でた。
先輩はおでこをぐりぐり押し付けてくるので、満足するまでなでなでするしかない…。
それを見てお怒り気味の殿下はスプーラ殿下に説教を始めた。
「なぜこんな無茶をなさるのです」
「仕方ないだろう、彼があまりに魅力的で…しかも初物尽くしとくれば、頂かないという選択肢は無い」
うーん完全な俺様タイプだなあ。
ゴード先輩を託して良いもんか悩む…。
「ゴード先輩、カメリア、行きたい?」
「やだ、むり…」
「スプーラ殿下のこと、好き?」
「…きらい」
「!!?」
弾かれたように立ち上がり、先輩に近づくスプーラ殿下。
「な、なぜだ、ゴード!?」
俺の後ろに隠れようとする先輩。
「やめてって、いったのに、する…いや!」
「わ、わかった、もうしないから、こっちにおいで」
「きらい!あっちいって!!」
そう言って俺に抱き着くゴード先輩…
そして真っ赤になって怒る王子様たち。
「ルースから離れろ、ゴード。
お前には別の部屋を用意する、こっちへ来い」
「ゴード!なぜこんなありきたりの男に…!!」
失礼だな!
どうせ「ありきたり」ですよ…と、ところが、その言葉に俺よりもカチンと来た人がいたようで。
「スプーラ殿下、私のルースに今、何と?」
「ふん、何もかもが普通の男だと言っただけだ。
この男のどこが良いのか、全く理解できん!」
「貴様…表へ出ろ」
「望むところだ」
私が勝ったらゴードは攫って行く、とか、
俺が勝ったら頭を垂れて謝罪しろ、とか、
わめきながら2人はドカドカと出て行く…
「…だいりせんそう?」
「なぜそんな言葉だけ出てきた!?」
「う~…」
あ、あかん。泣きそう。
おーよしよし、いい子いい子…
「おれ、がんばった、いっぱいがんばったの」
「そうですね、頑張りましたね」
「うん…」
…そうして先輩のナデナデ要求は、果物とパン粥が来るまで続いたのであった。
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