上 下
329 / 586
学園5年目

ホスタからの手紙

しおりを挟む
「ルース様、ホスタから小包が来てるっすよ」
「ついに!?やった!」

3学期の巨大ミミズvsゴーレムから約半年。
シャラパールのノース兄さんの伝手を使ってお願いしていた魔力回復の件で、ようやくヒデル兄さんからの手紙が届いた。

「早速読んでみよう」

まずは同封されていた手紙…

「今年の学園祭に、ホスタから魔法研究家を何人か連れて行くって」
「ってことはヒデル様も来るっすか」
「そうなりますね…」

恒例の魔法学会だけでなく、去年やった学術交流会in学園にも参加したいので宜しく、とのこと。
こうなると今年も開催決定か…。
早めにお知らせしないとな。
特に国外。

「歴史学と考古学にも一声かけときます?」
「そうですね、興味は持ってると思うので…
 今度の補講で話すことにします」

あとはメインの文献の写し。
魔力回復の手段について、アルテミシア地域全土から情報を集めてくれたみたい。
有難うヒデル兄さん!!

「さて、早速とりかかりますか…
 アレクさん、アルテミシア語の辞書取ってもらえます?」
「りょ…って、それ、外国語なのか!?」
「そうですよ?」

そりゃホスタから送られてきた資料だもの、当たり前じゃない…と俺が言うと、アレクさんはアルテミシア語の辞書を俺に渡してから慌てて研究室を出て行った。

何だろ?トイレかな…

…………

……十数分後。

「お久しぶりですねルース君!」
「あっ…シェドゥーブル先生!?」

アレクさんはアルテミシア語の講師さんを連れてきた。

「せんせー、これなんすけど」
「う~ん、これは…結構な量だね」

どうやら授業の隙を見て連れて来られたらしい先生。
確かにアルテミシア語が分かる人に参加してもらえば早いのは分かるんだけど…
相手の都合ってもんがあるからね?

「駄目っすかね」
「う~~~ん」

ほら、俺忙しいんですけどオーラがプンプン出てるじゃん。
んもう…

「あの、どうしても急ぐという物でもないので、お忙しいなら無理にとは」
「あっ、その、授業の合間だったら全然良いよ!うん!!」
「え…あ、はい、じゃあ…」

そう言うと先生が俺に握手を求めてきた。
何となく俺はその手を握り返し…
なぜ離してくれない?

「その代わり、条件があるんだけど」
「…な、なんでしょう…?」
「ハーブティーの本のアルテミシア語訳、僕にやらせてくれないかな…って」

ええ!?
まだ出版もしてないのに!?

「そんなの、まだまだ先の話で…」
「先の話だから今しておくんだよ。
 ルース君が正室様になった後に言ってたんじゃ遅いからね」
「それに、アルテミシア地域にローザンヌ地域と同じハーブが生えているとは限らないし」
「僕はホスタに留学してた事があるんだけど、気候は似てるよ?」

ぐぬぬぬぬ…

「じゃあ、まあ…出すことになったら、お願いします」
「こちらこそ、宜しくお願いします!」

いや、だからね?
出せるかどうか分からないんだってば。
兎にも角にも母国語版が売れない事には!!

「じゃあ早速見せて貰っても?」
「いいですけど、先生、授業は…?」
「大丈夫大丈夫、次は4時間目だから」

あらそうなの?
じゃあ最初のう~~~んは何だったの?

あっ。

そういえば薬学コンビも最初レシピをこっそり持ち出そうとしてたんだっけ。
妙な駆け引きなんかしなくても、タダ働きしてもらうつもりはないんだけどな…

俺、一般棟であんまり信用ないのかな…
確かにお金になるような話はあんまり無いか。

何かいい案はないもんかな…。
しおりを挟む
感想 68

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

いじめっこ令息に転生したけど、いじめなかったのに義弟が酷い。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
オレはデニス=アッカー伯爵令息(18才)。成績が悪くて跡継ぎから外された一人息子だ。跡継ぎに養子に来た義弟アルフ(15才)を、グレていじめる令息…の予定だったが、ここが物語の中で、義弟いじめの途中に事故で亡くなる事を思いだした。死にたくないので、優しい兄を目指してるのに、義弟はなかなか義兄上大好き!と言ってくれません。反抗期?思春期かな? そして今日も何故かオレの服が脱げそうです? そんなある日、義弟の親友と出会って…。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

BL
SECRET OF THE WORLD シリーズ《僕の名前はクリフェイド・シュバルク。僕は今、憂鬱すぎて溜め息ついている。なぜ、こうなったのか…。 ※シリーズごとに章で分けています。 ※タイトル変えました。 トラブル体質の主人公が巻き込み巻き込まれ…の問題ばかりを起こし、周囲を振り回す物語です。シリアスとコメディと半々くらいです。 ファンタジー含みます。

目の前の魔法陣と男に巻き込まれて

葵桜
BL
※厨二病時の厨二病による厨二病異世界BL王道?ファンタジー さっきから根暗くん根暗くんって何なんだ。 名前くらい覚えろやぁ! ってなんで壁ドンされてんのかなぁ...? あ、なんか君の後ろに魔法陣が見えるな!ハハハ! 勇者ぽい自己中顔面アイドル君に巻き込まれなんか異世界転移をとげるらしい。 どうか恋人ができますように。 いや、無双ができますように? 年に数回ぼちぼちとリメイクしています。 終わったあと興味があればぜひもう一度読んでください。 完結は…。できないかもしれないです。気長にお待ちください。申し訳ございません。

処理中です...