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学園5年目
前世と今生のすり合わせ 2
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俺は構わず話を続けた。
「殿下と結ばれる未来なんか無いと思いました。
学園に行けば魅力的な人が30人もいるのですから、殿下は俺みたいな…平凡を絵に描いたような人間の事などどうでも良くなると思ったのです」
「そこまで信用されていないとは思わなかった」
「人間の恋心などその程度だと聞がされていましたから…愛するのは子どもだけで充分だ、とも」
きっとそれはゼフ父さんの優しさ。
教えに反して恐々と人を愛しはじめていた時に彼を失い、悲しみに暮れている中で伴侶を殺した男に抱かれるという醜悪すぎる経験が、教えは正しかったと父さんに刷り込んだんだ。
抱かれたからには産まなければならない。
そして産んだ子どもは全員平等に愛すべきだ。
でもその男の子どもだけは愛せない。
その確信があったから産まなかった。
育てる事までが家業だから、家業に反する事になるという理由をつけて…
それはとてもささやかな復讐だった。
ユーフォルビアの秘儀の中にはそういった内容も含まれていた。
産むべきでない子を産まない…妊娠のごく初期なら、水魔法で子宮になる部分を洗い流してしまえばいい。
それは前世で聞いた、妊娠時に下剤を飲むと流産する…という話に似ていた。
「ただ…最近、思う事があります。
誘われれば誰とでも寝る。
寝れば快楽の為だけに種付けを強請る…そして多数の子どもを産み、育てる。
そうなれば食わせていくだけで精一杯。
貴族の子が必ず通う学園にも通わせる金がない…それはユーフォルビアがもはや貴族ではないということ。
ユーフォルビアは没落し、俺の子どもたちは、家畜のように高位貴族に買われていく。
公爵派が思い描くのはそういう俺…多分それは、ゲームの内容に沿った俺の未来なんじゃないかと」
「…つまり、何が言いたいんだ」
ついに、この話をする時が来たのだ。
甘いと言われるかもしれない。
ついて行けないと言われるかもしれない。
頭がおかしくなったと、距離を置かれるかもしれない。
それでも。
「コーラス・エルムとミカ・シャムロック。
公爵派の彼らもまた、世界の力に巻き込まれた被害者なのではないかと…」
「あの2人がか?」
そうだ。
彼らもまた…攻略対象者だったはずだ。
生徒会のメンバーだし、あのお家柄なら幼少の頃にアルと会った事もあるだろう。
その時にアルを好きになっていても不思議はない。
おまけに外見も整っている…
証拠が揃いすぎている。
「お2人とは、個人的な繋がりを持った事がありません。
2年前のお茶会でも、彼らからの敵意を緩和することは出来ませんでしたし、敵だという認識は変わりません。
でも今になって…彼らも救われるべきだと思うようになったんです。
世界に踊らされた被害者でもあるから」
「ルース、お前は…何を考えている」
殿下は俺をじっと見つめる。
俺は…ついに、たどり着いた答えを言う。
「俺は、この世の「神」が誰かを断罪することを望むのなら、それを止めたいんです。
それがこの国の歪な貴族制度を容認し、甘やかしてきたユーフォルビアの責務です」
今日、神殿のトップと話をしたばかりだけど、腹の内では「神」に従うつもりなどさらさらない。
貴族という立場にいる。
そして王族という立場にも近い今、この国の行く末を不幸にするわけには行かない。
殿下に、王族に意見してでも…
守るべき国と国民の中には、貴族たちも確かに、含まれているはずだから。
「…世界を作った「神」に逆らおうというのです。
正室として相応しい思想かと聞かれれば、相応しくは無いでしょう…この国が宗教国家でないとしても。
不都合があれば婚約破棄してください。
すでに冒険者登録は済ませました。
国を追放されても生きていけるように」
卑怯だと思うだろうか。
そっちから別れを切り出せと言うのは。
「殿下と結ばれる未来なんか無いと思いました。
学園に行けば魅力的な人が30人もいるのですから、殿下は俺みたいな…平凡を絵に描いたような人間の事などどうでも良くなると思ったのです」
「そこまで信用されていないとは思わなかった」
「人間の恋心などその程度だと聞がされていましたから…愛するのは子どもだけで充分だ、とも」
きっとそれはゼフ父さんの優しさ。
教えに反して恐々と人を愛しはじめていた時に彼を失い、悲しみに暮れている中で伴侶を殺した男に抱かれるという醜悪すぎる経験が、教えは正しかったと父さんに刷り込んだんだ。
抱かれたからには産まなければならない。
そして産んだ子どもは全員平等に愛すべきだ。
でもその男の子どもだけは愛せない。
その確信があったから産まなかった。
育てる事までが家業だから、家業に反する事になるという理由をつけて…
それはとてもささやかな復讐だった。
ユーフォルビアの秘儀の中にはそういった内容も含まれていた。
産むべきでない子を産まない…妊娠のごく初期なら、水魔法で子宮になる部分を洗い流してしまえばいい。
それは前世で聞いた、妊娠時に下剤を飲むと流産する…という話に似ていた。
「ただ…最近、思う事があります。
誘われれば誰とでも寝る。
寝れば快楽の為だけに種付けを強請る…そして多数の子どもを産み、育てる。
そうなれば食わせていくだけで精一杯。
貴族の子が必ず通う学園にも通わせる金がない…それはユーフォルビアがもはや貴族ではないということ。
ユーフォルビアは没落し、俺の子どもたちは、家畜のように高位貴族に買われていく。
公爵派が思い描くのはそういう俺…多分それは、ゲームの内容に沿った俺の未来なんじゃないかと」
「…つまり、何が言いたいんだ」
ついに、この話をする時が来たのだ。
甘いと言われるかもしれない。
ついて行けないと言われるかもしれない。
頭がおかしくなったと、距離を置かれるかもしれない。
それでも。
「コーラス・エルムとミカ・シャムロック。
公爵派の彼らもまた、世界の力に巻き込まれた被害者なのではないかと…」
「あの2人がか?」
そうだ。
彼らもまた…攻略対象者だったはずだ。
生徒会のメンバーだし、あのお家柄なら幼少の頃にアルと会った事もあるだろう。
その時にアルを好きになっていても不思議はない。
おまけに外見も整っている…
証拠が揃いすぎている。
「お2人とは、個人的な繋がりを持った事がありません。
2年前のお茶会でも、彼らからの敵意を緩和することは出来ませんでしたし、敵だという認識は変わりません。
でも今になって…彼らも救われるべきだと思うようになったんです。
世界に踊らされた被害者でもあるから」
「ルース、お前は…何を考えている」
殿下は俺をじっと見つめる。
俺は…ついに、たどり着いた答えを言う。
「俺は、この世の「神」が誰かを断罪することを望むのなら、それを止めたいんです。
それがこの国の歪な貴族制度を容認し、甘やかしてきたユーフォルビアの責務です」
今日、神殿のトップと話をしたばかりだけど、腹の内では「神」に従うつもりなどさらさらない。
貴族という立場にいる。
そして王族という立場にも近い今、この国の行く末を不幸にするわけには行かない。
殿下に、王族に意見してでも…
守るべき国と国民の中には、貴族たちも確かに、含まれているはずだから。
「…世界を作った「神」に逆らおうというのです。
正室として相応しい思想かと聞かれれば、相応しくは無いでしょう…この国が宗教国家でないとしても。
不都合があれば婚約破棄してください。
すでに冒険者登録は済ませました。
国を追放されても生きていけるように」
卑怯だと思うだろうか。
そっちから別れを切り出せと言うのは。
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