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学園5年目
前世と今生のすり合わせ 1
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あの後ロメリア大神官長様とハーブの話をして、リラックス効果がある事とお菓子にも使いやすいという事でラベンダーをおすすめしてみた。
あと、花も香りも楽しめるものとしてカモミール。
それからミントは絶対に畑に植えてはいけない話をして、終了。
この世界の話については…
「彼氏と話つけてからでええで」
ということで一旦保留。
神殿の運営には関係ないからね。
それとうちの神官長の側室入りについても保留…
「将来を誓い合う仲の恋人ができること」という条件が満たしてから、その者と2人でなら…と殿下。
「恋人が出来てから後宮て、殺生やなあ」
と最初は難しい顔だったロメリアのおっさんも、殿下の意図を聞いて
「なるほど、そういうことなら」
と納得して帰って行った。
そして、納得していない殿下は…
「夜に全て話して貰う。
俺が納得するまでな」
…と俺を脅してから武術棟へ戻って行った。
そして夜。
夕飯も風呂もそこそこに、俺はベッドで殿下に組み敷かれていた…。
***
「前世、とはどういうことだ」
「…この世界にルースとして生まれる前の、全然違う人間の記憶があるということです」
「ほう…それで、「異世界転生」とは?」
「…この世界でない場所の記憶があるってことです」
「お前が賢いのはそのせいか?」
「賢いかどうかはともかく…お菓子と気球とホバー、あと…あの椅子については前世の知識です」
こんな時にスケベ椅子の話もないもんだけど、そうなんだから仕方ない。
殿下は俺の目をじっと見て…
嘘では無いことが分かったのか、おでこにキスをくれた。
「…他には?」
「前世の記憶によれば、ここは自分が知っているゲームの世界とよく似ています」
「どういうところが?」
「男しか存在しない事。
男が妊娠・出産する事。
それから…アルファード・ローズという強くて頭が良くてカッコいい王子様がいる事」
「ふうん…?」
事実を述べただけだが、殿下は少し赤くなった。
客観的に見れば恋人を褒めちぎっているように見えなくもないから…かな。
俺はそれに気づかないふりで話を続ける。
「その王子様には30人の側室が認められている事。
学園で30人の魅力的な男性と出会う事…
ルースという名の当て馬がいる事」
「当て馬…だと?」
「そう、王子様が気に入って側室にしようとする男性に近づいてはアプローチを仕掛け、全員からフられる係」
「荒唐無稽な話だ」
「でも、よく似ています」
「どこがだ?」
「全部です」
そう言うと殿下は一気に不機嫌になった。
ゲームでの俺の扱いに怒っているのか、それとも俺の言い様に怒っているのか、その両方か。
殿下は俺の胸に頭を乗せてぐりぐりする。
「お前は当て馬などではない。
俺の唯一愛する者だ」
「…はい」
「そのゲームとやらでも、王子はルースといつも一緒だったはずだ」
「多分、そうですね。
ですが、その王子にとって彼は小間使い、またはそれ以下の存在です」
「……そうか。見る目のない男だ」
その王子と自分は違う、と見せつける様に、殿下は俺にキスをした。
舌を入れないまでも、ねっとりした大人のキス…。
お前が一番好きなキスをちゃんと知っているぞ、と言わんばかりだ。
「…そのゲーム通りに事が進めば、お前と俺はどうなるんだ?」
「知りません」
「何?」
「それほど深くそのゲームについて知っているわけではないから…
ただ、彼は殿下の正室候補では無かった。
突出した魅力がない…という設定でしたから」
「ふざけた話だな」
「…俺は、その未来を変えたかった。
だから転生に気づいた時、冒険者になってこの国を出ようと思いました。
当て馬がいなくなっても影響は無いだろうと…貧乏伯爵の12男にそれほどの価値は無いと思って」
「だから急に冒険者になるなどと言い出したのか…」
そうだ。
その時、俺の必死の努力は始まった。
チート能力なんか1つも無かったから…
それが、より自分を平凡でつまらない人間にしているようで、嫌だったから。
あと、花も香りも楽しめるものとしてカモミール。
それからミントは絶対に畑に植えてはいけない話をして、終了。
この世界の話については…
「彼氏と話つけてからでええで」
ということで一旦保留。
神殿の運営には関係ないからね。
それとうちの神官長の側室入りについても保留…
「将来を誓い合う仲の恋人ができること」という条件が満たしてから、その者と2人でなら…と殿下。
「恋人が出来てから後宮て、殺生やなあ」
と最初は難しい顔だったロメリアのおっさんも、殿下の意図を聞いて
「なるほど、そういうことなら」
と納得して帰って行った。
そして、納得していない殿下は…
「夜に全て話して貰う。
俺が納得するまでな」
…と俺を脅してから武術棟へ戻って行った。
そして夜。
夕飯も風呂もそこそこに、俺はベッドで殿下に組み敷かれていた…。
***
「前世、とはどういうことだ」
「…この世界にルースとして生まれる前の、全然違う人間の記憶があるということです」
「ほう…それで、「異世界転生」とは?」
「…この世界でない場所の記憶があるってことです」
「お前が賢いのはそのせいか?」
「賢いかどうかはともかく…お菓子と気球とホバー、あと…あの椅子については前世の知識です」
こんな時にスケベ椅子の話もないもんだけど、そうなんだから仕方ない。
殿下は俺の目をじっと見て…
嘘では無いことが分かったのか、おでこにキスをくれた。
「…他には?」
「前世の記憶によれば、ここは自分が知っているゲームの世界とよく似ています」
「どういうところが?」
「男しか存在しない事。
男が妊娠・出産する事。
それから…アルファード・ローズという強くて頭が良くてカッコいい王子様がいる事」
「ふうん…?」
事実を述べただけだが、殿下は少し赤くなった。
客観的に見れば恋人を褒めちぎっているように見えなくもないから…かな。
俺はそれに気づかないふりで話を続ける。
「その王子様には30人の側室が認められている事。
学園で30人の魅力的な男性と出会う事…
ルースという名の当て馬がいる事」
「当て馬…だと?」
「そう、王子様が気に入って側室にしようとする男性に近づいてはアプローチを仕掛け、全員からフられる係」
「荒唐無稽な話だ」
「でも、よく似ています」
「どこがだ?」
「全部です」
そう言うと殿下は一気に不機嫌になった。
ゲームでの俺の扱いに怒っているのか、それとも俺の言い様に怒っているのか、その両方か。
殿下は俺の胸に頭を乗せてぐりぐりする。
「お前は当て馬などではない。
俺の唯一愛する者だ」
「…はい」
「そのゲームとやらでも、王子はルースといつも一緒だったはずだ」
「多分、そうですね。
ですが、その王子にとって彼は小間使い、またはそれ以下の存在です」
「……そうか。見る目のない男だ」
その王子と自分は違う、と見せつける様に、殿下は俺にキスをした。
舌を入れないまでも、ねっとりした大人のキス…。
お前が一番好きなキスをちゃんと知っているぞ、と言わんばかりだ。
「…そのゲーム通りに事が進めば、お前と俺はどうなるんだ?」
「知りません」
「何?」
「それほど深くそのゲームについて知っているわけではないから…
ただ、彼は殿下の正室候補では無かった。
突出した魅力がない…という設定でしたから」
「ふざけた話だな」
「…俺は、その未来を変えたかった。
だから転生に気づいた時、冒険者になってこの国を出ようと思いました。
当て馬がいなくなっても影響は無いだろうと…貧乏伯爵の12男にそれほどの価値は無いと思って」
「だから急に冒険者になるなどと言い出したのか…」
そうだ。
その時、俺の必死の努力は始まった。
チート能力なんか1つも無かったから…
それが、より自分を平凡でつまらない人間にしているようで、嫌だったから。
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