当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき！

学園5年目

2学期の始まり

今日から無事に２学期のスタートだ。

夏休みはゴーレムの実験に始まり、大発生手前の魔物軍団と大立ち回りをし、その処理に追われ…。

古代魔法チームが次の日の朝には全員起きてきたもんだから、じゃあ他の人に任せて…と思ったんだけど、やっぱり他人にこの魔力溜まりを人に知られるわけにはいかない…ということで、現場から離れた場所まで処理しきれない魔生物の死体を運ぶことにしたんだ。

何だかんだゴーレムというのは使えれば便利なもので、ズモモモ…と作っちゃえば大きな魔生物もひょいひょいとつまんで右から左へと移動させるだけで遠くへ運べちゃう。

まあ俺の魔力がちょっと枯渇気味にはなるんだけどね…
そこはまあ、あれだ、うん。

う、後ろはまだだから！
もう色々アウトだけど！！

それにしてもこの世界の微妙な貞操観念のユルさって、もしかして古代魔法が原因なのでは？
まあまあ魔力食うもん…すぐ枯渇しちゃう。
だからマグノリア教授がネリネ教授とそういう仲になるのも仕方ないのかもしれない。


魔生物の処理はイドラ君とモロー君が呼んでおいてくれたクリビアさん率いる冒険者軍団に「魔石も素材も半分あげる」という条件で捌いてもらった。

その他、俺と魔生物学の2人で色々な魔獣の肉を採取して焼いたり茹でたり干したりしてみた。

で、結局のところ、美味しくは無いけど食べても特に何も起こらない事が分かった。
非常食としてはアリ、というところかな…
ベルガモット教授は魔力回復の効果が無かったことにガッカリしていたが、他の４人はまあそんなもんだよとニコニコしていた。

良かったね（泣）！

ちなみに実家に当然の顔して泊まり込んでいた薬学コンビにこの話をすると「何てことしてるんですか！！」とめっちゃ怒られた。
今とりあえず確実な方法があるんだから、焦らなくてもいいだろう、って…

何を実績に胡坐かいとんねん！！
常に上を目指さんかい！！

まあ、今薬学コンビはそれどころじゃないんだけどね。
うちのハーブティーレシピ本が出版に向けて大詰めを迎えているから…
こちらは今年の冬に出版予定。
売れてくれるといいなあ。


ダンジョンから王都に戻ってからも学者さん達の意見交換会（定期学術交流会…フィーデ君命名）に参加したり、ダンピエラ興業とフェスの準備をしたり小説に賞話をしたり、アイリス商会とセリンセ商会に観光物産展の話をしたり、何より実家の子爵時代の資料に目を通したりまとめたり…。

子爵家のころのユーフォルビア家は、不妊・不育治療に特化した産科医だったようだ。
孕みやすい体位の研究に始まり、魔力の相性と不育の関係、妊娠初期に禁忌な食品・薬品、あとは患者（相談者？）のカルテがしっかりと残されていた。
不妊治療が効かず、どうしてもと乞われて腹を貸した相手についても。

しかし残ってた資料が本当なら、国内の子爵位以上の貴族の殆どにユーフォルビアの血が入り込んでいるということになるんだけど…

ほんまか？

それもこれも「直系の子孫で無ければ家名も家業も領地も継げない」という法律のせいだ。
何でこんな法律が出来たんだろう？
年代的に古代魔法が属性魔法に移行するあたりになるから、そのへん関係あるのかな…

ともかくさっさと改定したい。

そもそも、他の国では家を継がせるために養子をとったりするのは普通にある。
どうしてローズ王国がそうしなかったのかと言うと…する必要性が無かったんだな。

必ず産んでくれる家があるから。

ユーフォルビア家がこの国の家督相続システムを甘やかしてきたんだな…。
やはり次期当主の俺が何とかしないと。
時代に合わない法律は変えていきたい！ってフリージア様も言ってたしな。

そんなフリージア様だけど、どうやらバイオレット様と友達以上恋人未満なご様子。
でも一人っ子同士でしかも公爵家同士の結婚って相当難しくない…？
どっちも当主だからどっちが産むのかで、周りがめっちゃ揉めそう。

そういう時に適当に当てがわれてきたのがユーフォルビアなワケだけど、今回ばっかりはそうもいかないんだな…。
いやまあ、結婚して産んで離婚してを繰り返せば良いんだろうけど、穴兄弟同士で結婚すんのか？
まあそれでも好き合ってんならいいのか…いいのか？

なんかこう、もうちょっと人の気持ちに寄り添った制度作りをしていこう。
王室に入れたらの話だけど……。



「さて、2学期初日の来客は…」
「今日はシンカンチョーが空けとけって、1学期の終わりから言ってたっすね」
「神官長が？」

何だろう…
ハーブティーでも売りたいのかな？
まあ、庭の隅で育てられるし、ミントやノコギリソウの扱いだけ気を付ければ…

「でも、1学期の終わりから言うって、なかなか…」

えらい気合い入っとんな。
嫌な予感しかせえへん…。