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学園5年目
【閑話休題】絶望的戦力差
しおりを挟む「嘘、だろう…?」
僕としたことが、焦りすぎたのかもしれない。
向こうの戦力がどの程度なのかは把握していたはずなのに!!
「いや、違う」
あと1日、2日あれば、向こうの戦力を削ぐどころか、騎士団長や魔法棟の連中の何人かを先2年は戦闘不能にすることが出来ていたはずだ。
「奴らの悪運が強かった…だけだ」
ルースから何かを引き出すことも、当然アルファードから何かを引き出すことも無理。
だから2人の周辺から情報を得るのに、一番警戒の薄いビスカリア男爵に狙いを定めた。
あれは行動範囲が広く、単独行動が多い。
冒険者ギルドと繋がりを持ったことで、冒険者に対して警戒心も低い。
だから食い詰めた冒険者を使って拐かし、あの力を使って有益そうな情報を洗いざらい吐かせた。
洗脳は…止めた。
奴らは闇魔法<洗脳>を解く方法を手に入れているし、今更意味も無い。
その中で使えそうだった「魔力溜まりに魔石を漬ける」実験の話。
それと「魔生物の大発生時に必ず闇の魔石を持った魔生物が出現するのは魔生物を指揮するため」という推論をくっつけて、闇の魔物を作り出せば人為的に大発生を引き起こせると踏んだ。
それから、
使用前の魔石なら3日程で魔物が再生産されること、
夏季休暇に奴らとそこへ行くこと、
魔力溜まりの場所…。
それに合わせて計画を立てた。
シャムロック家が経営する鉱山からいくつかの魔石を横流ししてもらい、闇の魔石を用意し、奴らがよく行く「深き森の遺跡」の魔力溜まりに漬ける事にした。
闇の魔石は発見され次第王室の管理下に置かれ、宝物庫の奥へ厳重に保管される。
手を出せば足がつく。
だからカメリア王室に「事情を説明して」譲りうけた。
カメリア由来の魔石なら、あっちに罪を着せる事も出来る…
エルグランは母国を恨んでいる節があるから、騙すのもそれほど苦ではなさそうだと踏んだ。
それだけの準備をして、信頼できる部下を使い、魔力溜まりへと魔石を持って向かわせた。
なのに…
「何で、あの連中が一緒に居たんだ…?」
魔法棟でも有名な「魔法家4侯爵」が、なぜベルガモットの側ではなくあの魔力溜まりに居たのか分からない。
奴らはベルガモットを手に入れる為だけにはっきりと中立であることをこちらに宣言したほどなのに!
「それさえなければ、もう少し時間が稼げた。
あの魔力溜まりに居た連中を全員あの世へ送る事もできたのに…」
こっちが動かせる兵を総動員しても、戦力の差は歴然だ。
炎の魔人や騎士団長はどうにかすれば遠征にやる事も出来る、が…
……。
「僕は、何と戦っているんだろう…」
この国の王家の軟弱な態度が許せなかった、最初はそれだけで。
どんどんと膨らんでいくこの憎悪は、一体何だろう…
王家を倒し、自分たちが実権を握って国を動かす。
今自分の派閥にいるもので、この国を牛耳る…?
冷静に考えれば、それが出来る能力のある人間は、もうこちらの派閥に居ないのだ。
「僕は、王になりたかったのか?」
もはや自分がどうしたらいいのかさえ分からない。
だが、すでに引き返せない所まで、来てしまった。
「何もかも、分からない」
だが、ただ断罪されてたまるものか。
最後まで足掻いて、死んでやる。
誰の為でもなく、自分の為に。
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