上 下
291 / 586
学園5年目

新しい部屋と決定事項

しおりを挟む
シャラパールから帰ってきてみると、俺の時間割はすでに出来上がっていた。

「5時間目と6時間目に補習…」

先生たちが「テストが0点だったので」ってさ…。
あれだけ頑張ったのに何だか納得いかない。

ちなみに1~4時間目までは授業なし。
だったら普通に授業に出ますけど…って言ったら、おじいちゃん先生がおかしな事を言い始めた。

「今年はルースの研究室を作るぞい」
「は?」
「正確には、儂の研究室の分室じゃの。
 呼ばれて行くより、来てもらう方が早かろ?」
「…はあ」

ということで今日は 、俺と殿下と側近ズの5人で現在物置として利用している旧魔法総合研究室を整えることになった。
とはいえジョンさんとカレンデュラ先生の荷物の運び出しと運搬が終わったら、後は掃除して荷物を入れるだけ…なんだけど。

「ルー、掃除終わった?
 これ、第一砦にあったやつだけど~」
「こっちは第二砦にあったやつと~魔法拳研究室にあったやつ~」
「ルースサマぁ、これ、寮の空き部屋に入れてたやつ…と、寮のベッドの下にあったやつ」
「何、まだあったのか?部屋のものは全部持ってきたと思ったのだがな…。
 おいアレク、この箱は俺の物だ、速やかに戻せ」
「はっ!かしこまるっす」
「……」

せっかく一部屋貰えるんなら、って今まで貰ったり書いたり作ったりした諸々を持ってこようと思ったんだけど…自分の部屋に収まりきらなくて色んなところへ置いていたもんだから、集めるのも一苦労。
ついでに分類も整理も一苦労…こんなに量あったっけかね?
誰か水増ししてない?

「…とりあえずこの棚は論文の棚で」
「うっす、かしこまるっす!」
「かしこまりました、だよ、アレク」
「うす、かしこまりましたっす」

壁が全面造り付けの棚になってるから入れる分には余裕がある。
とりあえず何となくで入れとこう…分類は後々。

「誰が来るのか分からないけど、おもてなしはできたほうが良いかな…」
「では魔石オーブンをもう一つ買うか?」
「いや、さすがに場所がないです。
 ポットとカップがあれば十分かと…」
「むう…」

何故か不機嫌になる殿下。
焼きたてが食べたかったのかな?
でももう第1砦にあるからなあ…。

「第1砦はそこだし、お菓子はあっちで焼きましょ?」
「……むう」

何か不機嫌というより不満…なのかな?
殿下のお菓子への情熱はどうしたもんか。
生活習慣病とか大丈夫かなあ…。

「あ、ルースサマ、市場へ行くっすか?」
「そうですね、消耗品と雑貨は買おうかな。
 家具は…それらしいの、学園の倉庫に無いかな」
「事務のほうへ確認しとくっす」
「お願いします」
「では必要なものを書き出して、早速市場へ行くか」

殿下のその言葉で、ウィン兄とディー兄は馬車を用意しに、アレクさんは学園の事務局へ家具の事を聞きに行った。
側近ズがしっかり側近してるな…。
そういえば再来年には俺と殿下は学園を卒業して結婚することになるのか…

順調にいけば。

はー、勝手にあっちの派閥が無くなったりしないもんかね。
しないから大変な目にあってんだけどね。

欲しい物を書き出して、市場に行く準備をする。
しかし手持ちが不安だな…備品代くらい学園から出してもらえるといいんだけど。
あっ、領収書貰うの忘れないようにしないとね。

「さて、行くか」
「えっ、殿下も行くんですか?」
「当然だろう」
「だって、明日から新学期で、明々後日しあさっては入学式でしょ?生徒会は大丈夫なんですか?」
「ああ、入学式は例年通りだからな。俺は祝辞を読むだけだ。それももう考えてある」

そう、卒業式には出られなかったけど、フリージア様とバイオレット様は無事にご卒業あそばされたので、今年から殿下が生徒会長になったのだ。
副会長はコーラス様とプリムラ様の2人体制で、会計はシャムロック様、書記はフィーデ君。
総務に誰を入れるかは、まだ意見がまとまっていないらしい。

「実務的な事で言えばお前だ、と奴らが主張するんだがどう思う」
「うーん…これ以上影さんたちの負担を増やすのもなあ…」

いっそ敵の懐に切り込むってのはアリなんだと思うけど。

「もう少し準備をしてからでもいいですかね?」
「準備?」
「ええ、実家の整理をしようかと」
「…そうか」

常に最悪の事態には備えなきゃならない。
公爵派がしびれを切らして内戦に突入する可能性に、カメリア王国が戦争をしかけてくる可能性に…
それから、どうしても気になるサンドワームの異常増殖。

最後のユーフォルビアになる覚悟で挑もう。
かつて王様に意見した、ご先祖様みたいに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

処理中です...